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第一章は新キャラが続々登場します。
後、この回は下ネタ多めです(笑)
新しいクラスとなった教室の中は、新入生の時のような距離感はなく、グループが出来上がっている。その中で俺はどこのグループに属されず、一人席に座って美少女観察をしていた。
どの娘もレベルの高い美少女ばかりで歓喜。
俺はこのクラスの美少女の情報をメモしていると、こんな囁き声が俺の耳に入ってくる。
「おい、あいつがいるぞ?」「変態賢人だな」「あいつとは関わりたくないな」
と、クラスの男子は言い
「うわ~変態と同じクラスよ」「目が合うと妊娠しちゃうわ」「通報した方がいいかな?」
と、クラスの女子が言う。
それぞれ言いたい放題の新クラスメイト達だ。なんか去年より酷くなってないか?
そんなことを思いながら俺は席を立ち、香梨たちの元へ向かう。
「なぁ~香梨」
「……」
「聞いてるか?」
「えっと……話しかけてこないでもらいますか?」
「酷いよ!?」
香梨に他人の振りをされて軽く傷ついた。メインヒロインなのに酷い扱いじゃないか? そもそも俺って主人公だよね?
「何時からあなたが主人公だと錯覚していたの?」
「なん……だと……?」
「東堂賢人……香梨と息の合った会話……くっ! 藁人形が必要ね」
木戸さんが手に俺の名前が書いてある藁人形を持って睨まれる。木戸さん怖いよ……。
「そもそも! なんで変態のあなたが私たちの所に来るのよ!?」
「え? だってよ、知り合いが香梨と木戸さんしかいないからな」
「知り合いになったつもりもないんだけど……」
「まあまあ、そんなこと言うなって! 香梨の友達なら木戸さんとも友達だろ?」
「何言ってるの……? 友達の友達はただの他人だから。それにあなたがいると私たちまで変な噂が立つでしょ?」
冷たい目で言い放つ木戸さん。
ちょうどチャイムが鳴ると、それぞれ席に座って担任が来るのを待った。
2年生に進級して最初のHRは、新しい担任からの連絡事項だけで終わることになった。
終わった後は何をするのかそれぞれの意見があった。
どこに遊びに行くか相談する人。
これから新入生が来るのを楽しみに部活に向かう人。
何も予定が無いからそのまま帰宅する人。
俺もどうするのか相談するべく、香梨たちの元へ向かう……のだがそこには香梨たちの姿がいなかった。近くの大人しそうな美少女に香梨たちがどこに行ったのか聞いて、「か、帰りましたよ……?」といかにも、怯えたように答えた後に「は、話しかけられたよ~どうしよう……今日で終わりなのかな……?」と友達らしき人に話しかける声が聞こえてきて俺は悲しくなった。
さて何をしようかと考えることもなく、俺には予定がある。
それが――新入生たちの美少女探しだ!
一番上の三年生と話す機会もなく、卒業してしまい非常に残念な気持ちではあるけど、二年生に進級した俺には、後輩ができるのだ。ということは、後輩から先輩と慕われるのだ! 先輩……なんていい響きだ。美少女にそんなこと言われたい!
俺は美少女後輩の情報を集めるために教室を出た……。
「あれあれ~そこにいるのは変態賢人ではないか?」
聞き覚えのある声に呼び止められた。
そして、これからの俺の予定が、声をかけられた人物によって潰される。
「おいおい変態賢人~聞こえているか?」
最悪の人物にエンカウントするとは思わなかった……それは、物語の序盤でレベルが1のままラスボスに遭遇するようなもの。
エンカウントしたら最後、逃げることもできない。
俺は仕方なく、その人物に向き合う。
セミロングで片側にリボンで髪をまとめたのが特徴の見た目が美少女の、見た目が美少女の星崎稚子が立っていた。大事な事なので二回言いました。
「全く……人を無視するとは失礼な変態だね! ん? もともと変態だから失礼な奴じゃないか?」
「何の用だ稚子。 俺は忙しいんだ」
「ち○こだと!!! あたしの名前間違えるなよな! ち・こ、だ! これだから変態賢人は、帰ったらどうせあたしをオカズにシッコシッコしてるんだろ? そうか! だからわざとち○こって言ったんだな? あたしに恥ずかしい言葉を言わせて、恥じらうあたしを想像してオカズに……なんて策士なんだ変態賢人!」
「お前どういう耳して、どういう思考回路してるんだ!? それにお前の方がよっぽど変態だ!? あと! 誰がお前をオカズにするか!」
俺もそれなりに有名になっているけど、それと同じように稚子もまた有名である。どっちも悪い意味で。
なんでも下ネタの方に持っていく稚子であり、初対面でも同じテンションで突っ掛ってくる、かなり迷惑な変人と言える。
「本当、失礼だな賢人。あたしのどこが変態って言うんだ?」
「さっき下ネタ言ってたろ」
「え~? あたしぃ~そんな事言ったかなぁ~? あ! ねえねえ、そこのおハゲさん! あたし下品な事言ったかな?」
俺たちの前を通った稚子の犠牲者が、『うわー……こいつに会っちゃった』って顔をして「言ってないと思うよ……?」と言った。ちなみに禿げていません。
「ほら~言ってないってよ? あ、おハゲさんありがとね? 今夜あたしをオカズにしていいからね?」
「じゃあ俺もまたな?」
おハゲさん(?)がそそくさとその場を離れ、俺もそれに習ってその場を離れようとするが……
「ちょっと! ちょっとちょっと! まだ話途中でしょ?」
懐かしいネタで、腕を捕まれた。どうやら逃げるコマンドが無いみたいだ。
「久しぶりに会ったんだから……一発くらいやっても良いでしょ?」
「俺たちそこまでの仲じゃないだろ!?」
「え? 中? 今日って安全日じゃないよ?」
「そっちじゃないよ!? というかここまで俺ってツッコミしかしてなくね?」
「主人公ってツッコムものでしょ?」
「お前また下ネタかよ!」
「え? ボケとツッコミのツッコミでしょ?」
「…………」
解せぬ
「いや~さすが変態検定一級の賢人! あたしはまだまだ3級だけどな」
「そんな検定受けた覚えもないし、お前も一級だろ!」
「そんなに恥ずかしがらずに~お姉さんに任せてね? ほら一発だけで良いからね?」
「お前は下ネタしか言わないのか?」
「同じ仲間だろ? そう邪険にするなって!」
「仲間になった覚えはない!」
朝から精神力がごっそり削られているっていうのに、こいつに関わると体力も一緒に削られて、すべてがどうでもよくなる。
「そろそろ解放させてくれ……俺には予定が……」
「新入生の美少女探しか? あたしっていう彼女がいるのに浮気するき!?」
「いつ彼女になった!」
「でもギャルゲーならあたしは攻略対象でしょ?」
「誰もお前を攻略するかよ! というかお前もギャルゲー脳かよ!? もういいよそれ!?」
ギャルゲーネタとか萎えたよね? 新しいジャンルはないのか?
「チッチッチ! 賢人は分かってない! あたしを攻略するとマックで働いてる女子校生のようになるんだぞ!」
「その娘に謝れ! 俺にも謝れ!」
はたらく女子校生は可愛いよね!
「あたしだって賢人を振り向かせるように必死なんだよ! 下ネタで振り向いてくれる主人公がいたっていいじゃん! あたしの大事な処女、賢人の太いもので奪ってほしいの! だから付き合ってください!」
「そんな雰囲気も何もない告白されたら、さすがに引くよ!?」
「え~いいじゃ~ん、あたしってあの告白する雰囲気が嫌いなんだよ。もっと下ネタを言って告白してもいいじゃん!」
「お前と付き合う男は可哀想だよ……」
喋らなければ美少女なのに、なんでこんな性格になったのだろうね?
時間がどんどん削られてくるから、そろそろ解放してくれないかな?
「うぇっへっへ」
「お前その下品な笑いやめろよ」
「あたしに遭遇したら最後! 夜まで語り明かそうぜ!」
「マジで勘弁してくれ……」
その後、カーカーとカラスが鳴く、空も真っ赤に染まる夕方まで、稚子の下ネタトークに付き合わされたのだった。
その頃にようやく解放されたときには、すでに新入生は帰ってしまって何も情報を得られなかったのだった。