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変人な美少女ばかり!  作者: 凉菜琉騎
~第一章 美少女との会話は楽しい筈なのになぜか疲れる?~
3/16

 ピピピピ! ピピピピ! ピピピピ!

 目覚まし時計が鳴る音が聞こえた。俺は頭の上あたりを探ると固い物が触れて、スイッチを押すと音が止んだ。

「…………なんか変な夢見たな」

 妙にリアリティのある夢は初めての事だった。

 上体を起こすために右手を置くと……ふにゃっと、弾力のある、マシュマロのような柔らかいものに触れた。

「んっ……はぁっ」

「……」

 横を見るとそこには、花帆が寝ていた。そして一時間前のやり取りが夢じゃないことを思い知らされる。

 それにしても柔らかい……

(いやいやいや、堪能してる場合じゃない!)

 右手で触っているものからゆっくり離して、花帆がまだ寝ていることに安堵する。

「それで終わりですか兄さん?」

「うひゃああ!! 起きてたのかよ!」

「兄さんがどんな反応するか確かめたかったのです」

「そっか……一時間前の花帆か」

 まだ認める気が無かったけど、花帆の言動であの花帆だと分かり落胆。

「このキャラは兄さんのお気に召しなかったですか? 昨日のキャラが良かったですか?」

「どっちもキャラなのね。素の花帆ってのは?」

「素の私ですか……?」

 右手人差し指を顎に当て、何かを考える花帆。そしてさっきまでのジト目からパッチリした目になり、笑みを浮かべる花帆の姿へ。

「おはようございます。 そして、初めましてかな? 賢人さん? 素の私って家族の人以外に見せないんですよ? 賢人さんは特別です♪ えへへ♪ これが素の私です!」

「それが、素の花帆?」

「そうですよ? もしかしてこっちの方がいいですか?」

 あまりの豹変っぷりに驚く。

「……」

「賢人さん? どうしたんですか? あまりの可愛さに身悶えてますか? もう頭の中は花帆でいっぱいですか? そろそろ射しますか?」

「今、不穏な字があったよね!? それより、なんでキャラなんか作るんだ?」

「色んなキャラで演じたいからです」

「それって、演劇部とかの練習なのか?」

「違いますよ。個人的な趣味です♪」

「さいですか」

 昨日のキャラといい、今日のキャラといい、どっちも良かったけど、素の花帆の方が可愛くて、魅力的だと感じた。

「どうですか? 惚れましたか? 今夜は私ですか?」

「下ネタは素でも言うんだね」

「幻滅ですか? 軽蔑ですか? 凌辱ですか?」

「最後のは違うだろ!?」

 素の花帆でも俺は振り回されるのは変わらなかった。

 タッタッタ

 階段を上る足音が聞こえてくると、俺の部屋の前まで来ると……

 トントントン

 と、ノックする音が聞こえてきた。

『賢人さん? 起きてますか?』

 その声は花帆の姉の香梨だ。

「あ――!?」

 声を掛けようとした瞬間、花帆に口を塞がれて、起こしていた上体を再び布団へ倒れこみ、俺の上へ花帆が乗ってくる。

「メインヒロインの登場です。ここは何かイベントを発生する場面ですよ? 妹の私に迫られる兄の賢人さん、そしてそれを目撃する幼馴染のお姉ちゃん。この後に待っているのはバットエンド」

「はっおえんおいいてとおう!?(バッドエンドにしてどうする!?)」

『賢人さん? 寝ているのですか?』

「実はお姉ちゃんも変人ですよ?」

 花帆の言うことが本当か、嘘か、分からないけど、この状況はまずい。女の子の甘い匂いが鼻孔をくすぶり、頭がくらくらする。それに……意外と花帆は胸が大きかった。

「あっ……賢人さんのえっち♪」

「おぉい!?」

 あろうことか、ギンギンの東京タワーが花帆の太ももに当たり、楽しそうな笑みを見せる花帆。

『入りますよ?』

「ふぁっえぇ!?(待って!?)」

 ガチャ

 ドアが開く音がして、香梨の姿が現れる。

「賢人さん?」

 香梨からは、俺と花帆が抱き合っている姿を目にしているに違いない。

 しばらくして硬直状態が続く中、最初に動き始めたのは香梨だった。

「賢人さんは……そんなことする人だったの?」

 俺の口を塞いだ手を離した花帆だが、まだ密着したままだった。

「待ってくれ! これは誤解だ!」

「…………賢人さんは花帆の事が好きなんですか?」

「ちょ!? ちょっと落ち着いてくれ! 花帆とは何もない!」

「まるで妻に浮気がばれた夫の構図ですね。言い訳もそっくりです」

 誰がこの状況を作り出したと思っているんだ?

「おかしいです! 花帆はメインヒロインじゃないですよね! 私が攻略対象でしょ?」

 この姉妹はギャルゲー脳かよ!

「花帆! この状況をどうにかしてくれ!」

「分かりました。お姉ちゃん…………今は私のルートに入ったばかりなの、お姉ちゃんのルートはこのゲームには最初からないんだよ? 私のルート一択なんだよ」

「おまっ! いつ花帆のルートに入ったんだよ!?」

「一時間前に突入したばかりだよ?」

「何時の間に!?」

 あとこれはゲームじゃないと付け加えておく。

「…………調教します」

「……は?」

「賢人さんは私だけを見ないとダメなんです! 最初っから好感度MAXの私だけを見ないとダメなんです! だから賢人さんを調教します!」

「か、香梨さん!?!?」

 俺が思い描いていた香梨像まで粉々に崩れた瞬間だった。


 今年は美少女とお話しできれば良かったと思っていた。

 両親が海外旅行に行き、霞家にお世話になることになり、いきなり美少女姉妹とお話ができるイベントが発生したと……夢がかなったと思っていた。

 大人しくて純情無垢な香梨。人懐っこく可憐な花帆。

 俺が思い描いていた姉妹像が、変人な姉妹へと変わったのだった。


「賢人さん? 勝手に終わらせないでくれますか? まずは爪を全部剥ぎますね?」

「待て待て待て!!! 香梨怖いよ!」

「では頑張って下さい兄さん」

 笑みが消えて、パッチリした目からジト目に、キャラを変えた花帆は俺の部屋を出てく姿があった。

 薄情者と目で訴えるが、ドアが閉まって、香梨と二人となる。

「か、香梨? 話せばわかるでしょ?」

「賢人さんも私の気持ち分かってください!」

「い、いや……いきなりそんなこと言われても……な?」

 香梨が言うことはやっぱり、そう言うことなのだろうか?

「でも……昨日会ったばかりでしょ? 気持ちは嬉しいけど……」

「……? 賢人さんは何を言っているんですか?」

「え? だから、香梨が……俺の事を?」

「爪剥ぎますか?」

 満面な笑みを浮かべて、恐ろしいことを口にする香梨が怖い。

「別に、私は賢人さんの事何とも思ってないです」

「そう……なの?」

 ちょっと残念だと思う俺もいた。

「私が好きなのは花帆ですから。だから、花帆に近づいた賢人さんを調教もとい拷問するんです」

 言い換えた方がもっと酷くなっている。

「好感度MAXでは?」

「賢人さんに対しての好感度はマイナスMAXです」

「マイナス!? メインヒロインだよね!?」

「賢人さんは、ギャルゲー脳ですね」

 香梨には言われたくないことだ。

「取り敢えず、早く起きてください。ごはん冷めますから……それと」

 表情は笑みのまま……

「変態のくせに、変人だって思われたくないです」

 姉妹揃って心を読む能力でもあるのだろうか。

「幼馴染の心を読むのはデフォルトでしょ?」

 姉妹揃って同じセリフを宣うのだった。


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