プロローグ 俺は神に選ばれた?1
毎日学校に行き、一見社会に出て何の役にも立たなそうな授業を受けて、昼休みにはクラスメイトのくだらない話に付き添い、また午後から眠くなるような授業を受けて、部活に勤しみ、帰宅して明日の用事などをチェックして寝る、そんな毎日の繰り返しを日常というのだろうが、俺は五年前に妹が行方不明になってから、そんな日常が忌々しく感じてしまっていた。
登校途中や授業中など、美少女とキャッキャウフフなハーレムだとか、いきなり謎の力に目覚めて、正義の組織に加わるだとか、そんなことを考えては、現実逃避なんだなということに気づき溜息を漏らす日々。
気が付けば俺はオカルト部の部長で、しかもオタクだと言われるようになってしまった。
だが、それすらも日常の一部なんだ、と
そんな毎日を送っている今日、同じオカルト部員の境原に誘われて俺はインフルエンザで臨時休校になった学校の旧校舎に来ていた。
「ねーねー優希くん、おかしいとは思わない?」
旧校舎に入るなりいきなり変な質問を投げかけてくるなよ
「なにが、別におかしくないだろ、インフルエンザなんて…」
「いやねー、調べてみると、インフルエンザにかかった生徒はみんなこの旧校舎に来ているんだよ!!」
だからって、そんなに鼻息を荒くすることなんだろうか?コイツはいつも病気が流行る度にやれウイルス兵器だの、巨大製薬企業が作った軍隊向け商品の実験だの変なことばかり言っては休んだ生徒を徹底的に調べる癖がある、たまには変な妄想なんか捨てればいいのにとは思うが、まあ、俺も傍から見たらそんな感じだろうから敢えて言わない。
べ、別に論破されるのが嫌なわけじゃないぞ?いや、ほんとに
「ただの偶然だろ?そんなの」
「そんなことないよ!…たぶん」
ほんとにコイツの考えは読めない
「ごめん!家にサーモグラフィックカメラ忘れてきちゃった!!」
サーモグラフィック!?何に使うんだよ!?
「はい?」
「すぐとってくるから!待ってて!」
そう言って足早に去っていく境原、そもそもよくサーモグラフィックカメラなんて持ってんな、あいつ
「さてと、俺は一人探索でもするかな、ん?」
ふと、廊下の突きあたりのドアが気になった、いや、そもそもあそこには本来ならばドアではなく、二階に上がるための階段があったはずだが。
俺は興味本位でそのドアの中に入ってしまった。
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ドアの先には、真っ白な空間が広がっていた、なんというか、昔見た芸能人の作った映画に出てくる部屋のような、ただただ真っ白い空間が広がっていた。
「なんだよ、ここ?」
何もない、というよりかはなんの汚れもない、そんな空間、体育館よりも明らかに広いその部屋に、おかしい、という思いと同時に妙な好奇心を持っている自分がいた。
「そうだ、ドアは…え?」
入ってきたドアは、空間にポツリとあった、だが、どう見ても空間の真ん中にドアがある状態だ、試しに開けてみたが、旧校舎の廊下には続いていなかった。
「旧校舎には帰れないよ?お兄ちゃん」
ふと後ろから声がした。懐かしい、明らかに聞き覚えのある声だった。
知っている、そのはずだ、俺は5年間一度も忘れたことのない存在、俺の日常を、退屈なものに変えてしまった、俺の日常というパズルにとって、大事な一つのピースであった人物。
「紗季?紗季なのか?」
行方不明になったはずの妹が、そこにいた。
「お兄ちゃん、待ってたよずっと」
「待ってたって、おまえなぁ!俺や母さんや父さんがどれだけ心配したと!」
「…ごめんね、でも、こうするしかなかったんだ」
変な空間に、行方不明だった妹、思わず俺は、紗季にきいた。
「一体何がどうなってるんだ?何だここは?帰れないのか?」
「あのね、お兄ちゃん、私たちは実は神様なんだよ?」
意味がわからない、神様ってなんだ?俺は謎の空間にいて、妹も同じ空間にいて、それで俺たちは神様だ?さっぱり理解できない
「理解できないよね?でもね、これは紛れもない現実なんだよ、その証拠にここは異空間だし、お兄ちゃんはここにいて、私もここにいるでしょ?」
紗季がさらに変なことを言ってきた、実はコイツは紗季に扮した誰かで、俺を騙してるんじゃないか?俺の妹は、電波じゃなかった、これは確実だ、だんだんと目の前にいる紗季の存在があやふやになる、それよりも、俺は紗季を何処まで知っていた?一卵性の双子の妹で、あれ?一卵性っておかしくないか?俺は男で、紗季は女で、二卵性だったか?
「一卵性であってるよ、お兄ちゃん、いや、本来はお兄ちゃんはお姉ちゃんなんだけどね?」
紗季は安安と俺の心を読んだ、それはいい、本来なら姉ってなんだ?意味がわからない
「うん、いきなりこんなこと言われても意味がわからないよね、でもね、受け入れるしかないんだよ、お兄ちゃん、もう偽りの日常は終わったの、ううん、本当はもうちょっと先の話なんだけど、でも今のお兄ちゃんはまだ完璧じゃないから、お姉ちゃんとも話ができないし、存在を感じ取ることもできない、でもね、これから踏み込む”日常”を過ごしていればすべてのことに気づけるよ、いや、知っていけるよ、お兄ちゃんの本来の姿、存在に」
「…やめろ」
「何が?何をやめないといけないの?現実を知らせること?それとも偽りの日常を壊すこと?だったら無理だよ、だって、期限はそこまで来てるんだもん、強制的にそうなるようになってるんだよ、だから私は少しでも早く気付けるように報告したの、お兄ちゃんもいきなり女の子に戻るのは嫌でしょ?」
「黙れ偽物!!」
俺は紗季を殴った…つもりだった、だが、実際には拳は紗季の体をすり抜け、虚空をきるだけだった。
こんなのありえない、夢なら覚めてくれ、たのむ、これ以上大事な妹の姿や声で喋らないでくれ
「…わかったよお兄ちゃん、帰してあげる、でもね、これだけは覚えていて、いつか覚悟を決めないと、必ず後で困るのはお兄ちゃんだからね?私は妹として全力でサポートするけど、なんでもできるわけじゃない、あくまで主人公はお兄ちゃんなんだから」
紗季が言うと俺の意識はぷつりと切れた。
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「優希くん!起きて!ほら!」
目を覚ますと、旧校舎の前だった。ブレザーに身を包んだ境原が心配そうに顔をのぞかせている。
「どうしたの?もしかして寝不足だった?」
時間が巻き戻っていた、いや、俺は予知夢か何かでも見てたのか?そう思いながらも二人旧校舎に入る。
「ねーねー優希くん、おかしいとは思わない?」
旧校舎に入るなりいきなり変な質問を投げかけてくる、やっぱり予知夢か?現実?
「なにが、別におかしくないだろ、インフルエンザなんて…」
「いやねー、調べてみると、インフルエンザにかかった生徒はみんなこの旧校舎に来ているんだよ!!」
現実だったのか?あれは…
「ただの偶然だろ?そんなの」
「そんなことないよ!…たぶん」
そろそろ家にサーモグラフィックカメラを忘れたとか、言い出すはずだ・・・
「ごめん!家にサーモグラフィックカメラ忘れてきちゃった!!」
「はい?」
「すぐとってくるから!待ってて!」
境原が旧校舎を出る、俺はそれを確認すると廊下の突きあたりを確認する。
「やっぱり夢か・・・」
廊下の突きあたりには、二階に上るための階段があるだけだった。
予知夢であろうと現実だろうと気味が悪い、境原が帰ってきたら今日は帰ろう。
「ごめん!お待たせ!じゃあ行こうか!」
「すまねぇ、今日はパス、大事な用事思い出したわ」
「えー?しかたないなーうん、わかったよ、じゃあね」
帰り道は特に何もなく、無事家に着く、部屋に入った時、親のでかい声が響いた。
続く
次回予告
親の悲鳴、帰ってきた妹、突然の性転換!?
性転換の代償はチートが使えるようになること、さて、どうするんだ優希!
次回更新は4月4日予定です。