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19 ロザリーの日常9(ロザリーの日常8の直後・試験日の翌日)

すみません。H24/2/27に話の入れ替えをしましたので、二話分、話が前詰めされています。2/26のトリス先生が一人で泣いているシーン以降、読んでない方は申し訳ございませんが、二話前の『17 ロザリーの日常8』に戻っていただきますようお願いいたします。ご迷惑をおかけしまして申し訳ございません。


 今日の授業の予定を決める間も無く、私は彼と一緒に家に帰った。

 先生は一晩泊めたお詫びをしたいのと結婚の許可をもらいたいんだそうで。


 私の父は怖い顔で、先生を睨んでいる。

 私は、はらはらしているのに、先生は超のんきに、

「一応、授業初日なんで、それなりの服に着替えたほうがいいよ」

 なんて言った。


 そうよね。子どもたちには、それなりに威厳のある服装で挑んだほうがいいよね。


 私は気になりつつも自分の部屋に着替えに行った。それが、罠だとも知らずに。


 ☆


「今日から、ここの先生になるロザリー先生です」


「えー、ロザリーが教えるのかよ」

「ロザリー、こんなところで先生やっている場合じゃないだろ。早く彼氏を見つけなくていいのかよ?」


「心配には、及ばないわ!」

 本当に、及ばないのだろうか?

 ちらりとトリス先生を見るとふんわりと笑ってくれた。

 両思いになったんだから、『トリス先生』ではなく、他の呼び方にしたらいいのかもしれないが、なんて呼べばいいんだろう?


「急で悪いが、午後の授業は中止にする予定だ」

「なんで~?」

「ロザリー先生の初めての授業だろ?授業の後、反省会しようかと思っているんだ」

 先生に点数付けられるなんて聞いていない。

「まず、自己紹介から、お願いします。ロザリー先生」

 先生に先生と呼ばれるのはくすぐったい気持ちだった。

 って、そんなこと言っている場合じゃない。いきなり振られても何にも考えていないよ。


 大体、ほとんどの子どもたちとは顔見知りだ。今さら自己紹介って何をしゃべるの?


 しどろもどろの自己紹介と読み聞かせで、なんとか半日の授業を乗り切れた。

 緊張しながら、半日の授業を終えた私は肩の荷がどっと下りたような感覚に襲われた。


 トリス先生は、帰りかけているシャムローに何か話しかけている。

 シャムローというのはハンスさんとアイリスさんの息子だ。


 シャムローは頷くと妹と一緒に帰って行く。それを見送って先生に声をかけた。


「なにか変なところありましたか?」

 まだ子どもの目があるかもしれないし、どういう話し方をすればいいのかわからない。

 緊張のあまり、読み聞かせている最中、何度かつっかえて、子どもたちにからかわれてしまった。


「どこも変なところ無かったよ」

 私が読み聞かせをしている横で他の子たちに算数を教えていた先生はにこやかに答えてくれた。


「じゃあ、午後からどうしましょう」

 半日かけての算数の特別講習か?できれば詰め込み勉強は避けたい。


「おやしろに行こう」


 ☆


 わけのわからないまま、手を引かれお社に連れて行かれる。


「なんで?」


 お社に用事がある時って、新年の祈願や豊作祈願などの願掛けか出産の報告か葬式か・・・結婚式か?


「え?結婚しようって言ったじゃないか。ご両親の許可ももらったし。どこか問題でも?」

 許可って、一発でOKもらったの?


 おもいっきり口を開けて呆然としている私に先生は笑いながら言った。

「噂を利用させてもらった」

 噂って私と先生が恋人同士だとかいう噂?

 でも、昨夜やっと想いを伝え合ったばかりで、恋人らしいことは何一つしていない。


「あの・・・“それなりの服”に着替えさせたのも、今日結婚式を挙げるため?」

 にこやかに頷く先生。は・・・められた。


 ☆


 お社に着くと私の家族とハンスさん一家がお社にいた。


「シャムロック、おめでとう!」


 ハンスさんの奥さん、アイリスさんは先生を視界に捕らえるなり、先生のところに走ってきて、ぎゅっと抱きしめ先生の頬にキスする。


「私だって、キス一回しかしてないのに・・・」

 目撃しているだけでも、向こうのほうが一回多い。

 取り残された私とハンスさんは並んで呆然とするしかない。


「花嫁さんと浮気したらダメよ」

 アイリスさんが先生に抱きついたまま、こちらに振り返って言うとハンスさんが返す。

「その台詞せりふ、俺はお前に言いたい」

 まったく同感だ。


「ア、アイリス・・・。とりあえず離れてくれないか?」


 先生がこちらをちらちら気にしながら、アイリスさんに声をかけるとアイリスさんは先生からぱっと身を離して、私の前に来るといたずらっぽく微笑んだ。


「ごめんね。嬉しくて、つい。でも、唇は残してるから」

 年不相応の可愛らしい笑み。26歳って聞いているから、私よりもむっつも年上のはずだが、私よりも年下で通ってしまいそうだ。


「あの・・・シャムロックって?」


 私がおずおず言うとハンスさんとアイリスさんの目が合い、次いでアイリスさんが責めるようなきつい視線を先生に飛ばす。先生は怯えたように首を縦に振ったり横に振ったり・・・。


 なんだが、私だけ置いていきぼりを食らった感じだ。


 アイリスさんは、なぜだか私の両親のほうに視線を向けると私ににっこり微笑んだ。

「先生のことで疑問があったら後でいくらでも答えてあげるわ。でも、ここじゃあちょっとまずいわね」


 先生のことなんでも知っているんだ・・・。


 もう、先生とアイリスさん本当に仲が良くて、アイリスさんは先生のこと私よりかたくさん知っていて、わざわざ私と結婚しなくてもアイリスさんと結婚すればと思ってしまう。


「先生。せっかく求婚してもらって悪いですけれど、考え直していいですか?」


 その時の先生の慌てた顔はきっと一生、心に残るだろう。

 先生は慌てた口調で誓約の言葉を口にすると、そっと私の両肩に手を置いた。

 

 私は、目を閉じ、先生の口付けを受けた。


 まあ、いろいろあったけれど、私たちは二人で歩む「退屈で穏やかな日々」の最初の一歩を踏み出したのだった。


ロザリーのお話は今回をもちまして完結とさせていただきます。

(トリス先生の話もアイリスとハンスの話も最後の一人の話も残っていますが・・・)

『ロザリーの日常2』のロザリーが先生に告白するたったワンシーンから、ここまで話が長くなるとは思っていませんでした。

話をまとめきれずに『お姫様とスケルトン』『ゾンビとアカツメクサ』を超える長さになったときにはいつ終わるのかとびびりましたが、何とかゴールにたどり着けました。

ロザリーの話を最後まで読んでいただきありがとうございます。

H24/2/27より侍女エリエールを主人公にした『エリエールの回顧録』が『花の指輪』でスタートしました。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

(『お姫様とスケルトン』のお姫様が悪役になっていますが・・・)

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