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ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~  作者: ラサ


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 計画を実行するのに、マナには一つだけ気がかりがあった。

 ドームの見取り図はすでに把握している。問題はどうやって見つからずに管理区域に入り込むかだ。

 だが、それもすぐに解決した。

 天井を見上げて、気づいたのである。

 コンピュータから必要な情報を呼び出し、再度確認する。

 マナが計画を実行に移してから数十分後、フジオミがマナの部屋を訪れた。

「マナ、いるんだろう。入ってもいいかい」

 フジオミは、いくら呼んでも応えないマナに疑問を感じて、ドアを開けた。

「マナ――?」

 部屋に、彼女はいなかった。備え付けのバスルームからシャワーの音がする。

「マナ、話があるんだ。君が出てくるまでここで待っている。いいかい?」

 だが、応えはない。

 しばらく、フジオミは待ったが、一向にマナが出てくる気配はなかった。

「マナ」

 フジオミは、もう一度、声を大きく彼女を呼んだ。だが、今度も答えはない。

「マナ、いるんだろう?」

 ドアを叩くが、反応は返らない。何度ドアを叩いても、マナの声は聞こえない。

「大丈夫なのかマナ。開けるよ」

 ドアを開けたとたん眼前に溢れる白い湯気と熱気。

「マナ、大丈――」

 そこには、マナはおろか、誰の姿も気配もなかった。

 天井を見上げると、湯気の向かう換気用のダクトが開いたままになっている。ここは全ての区域と繋がっている。フジオミにはわかった。マナはここを出ていくつもりなのだ、自力で。

「ユウを待たずに、自分の力で、君はここを出ていくのか…」

 フジオミは不思議な感慨に囚われた。

 自分より一回りも年下のあの少女は、もはや自分達とは違うのだ。自分の目で見、自分の頭で考え、判断し、行動できる。


 なんて、強い。


 マナは自分達とは違う。とても強い。その強さで、きっと彼女は望むものを得られるだろう。

「――」

 フジオミは、急いで部屋を飛び出した。自分も、動きださなくてはならない。

 自分にも、できることがあるのだ。彼女の望みを叶えるために。

 いつになく気分が高揚しているのを、フジオミは嬉しく感じていた。

 自分が何をしたいのか、どうすればいいのかわかることは、とても気分がいい。これでやっと、自分も動きだせるのだ。



「ダクトの中に生体反応がある?」

 シイナはその報告を受けた時、一瞬、ユウが生きていたのかと思った。

「データをよこして」

 すぐにコンピュータでダクトの見取り図が表される。赤い点滅が生体反応だ。ゆっくりではあるが、管理区域を進んでいる。入り込んだ時点で追跡されているのにも気づいていない。警報が鳴らないのは、うまく警報装置がある場所を迂回して進んでいるからだ。

「警報装置のある場所を迂回しているとして、どこに向かっているの?」

「おそらく、1階の倉庫に向かっているのだと思われます」

「倉庫?」

 外からの侵入者でなく、居住区にいるマナを狙っているわけでもない。これでは、中から外に出て行こうとしているようだ。

「まさか、マナ……?」

 その時、彼女等を照らす明かりが消えた。

 続いてけたたましい警報が、鳴った。



 足元をかろうじて照らす水銀灯をたよりに、フジオミは暗闇の中を壁伝いに歩いていた。先程の警報でシイナも居住区にいるはずのマナの安否を確認する。そうすれば、マナがいないことに気づくはずだ。

 確かもう少し行けば、次の角に水銀灯が見えるはずなのだ。そして、その下のボックスには非常事態用の工具がある。ライトもあるはずだ。

 ドームの電気系統の配電盤の、さほど重要でない配線を切ったのはフジオミだった。

 緊急時には非常用の電源は全てドームの機能を維持するために使われる。住居区は特に後回しにされるのだ。シイナが直接居住区に確認にいくはずだ。それで、少しは時間が稼げる。シイナがマナの不在に気づくその前にマナを見つけださなければならない。

 きっと彼女は管理区域の倉庫に向かっているだろう。ここ一週間、車の運転を教わっていると聞いていた。ならば、それで逃げようとするに違いない。

 急いでいたフジオミが、突然動きを止めた。暗闇の中に、人の気配を感じるのだ。

「誰だ――?」

 答える声はない。

「…ユウ、君か?」

 とっさにそう口にしていた。答えはない。ただ動かずにじっと、そこにいる。

 だから、フジオミは確信した。

「マナは部屋にはいない。管理区域に行ったんだ。自分一人でここを出ていこうとして」

 答えがなくても、フジオミは構わず話しかける。

「僕を連れていってくれ。君がマナを愛しているように、僕はシイナを愛している。僕が彼女を止める。だから、彼女を」

 傷つけないでくれ。

 最後まで言う必要はなかった。無言のまま、影が動いた。

 腕に触れる手を感じた時、フジオミは思わず身体を強ばらせた。

「俺がわかるのは研究、居住区域だけだ。この暗闇で、ここが管理区域の何処なのかもわからない。あんたならわかるな」

 低い声がささやくようにもれる。

「ああ。だがその前に質問を。一体君は今まで何処にいたんだ? あの廃墟にはいなかったんだろう。調査させたが、君の死体は愚か、荒れ放題だったと聞いたぞ」

「簡単だ、ここにいたんだ」

「ここに? このドームにか?」

「ああ。居住区域には部屋は有り余ってる。その一つを使ってたんだ。俺はマナほどあの女を甘く見ない。力の使えない俺じゃ見つかったらすぐにやられるのはわかってた」

「傷は、大丈夫なのか」

「ああ。すぐに治した。それからここへ跳んだんだ。力の使い過ぎで疲れてたから、それからずっと眠ってたんだ」

「治癒能力もあるのか。驚いたな」

「それよりも早く、マナのところへ」

「そうだった。君がいるなら簡単だ。シイナを追えばいい。彼女は必ずマナを見つけだす」




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