終章-第一部完-
◇◇◇◇◇
夜闇の空に薄っすらと
東の地平線から色が付いていく…
青からやがて…白光へ…
時刻は日の出間近の早朝である。
「こんな早くに出るの?」
秋も深まってきた早朝だ。
寒さに、羽織っていた上着を
両手で引き寄せながら、
アーファは心配そうに二人へ
尋ねる。
「うむ、急ぐ必要があるのだ。
しかし、隣国まで馬車が
出ていないからな…
幸い、そう遠い道のりではないから
今から歩けば、
夜半には到着できそうだ」
リーンはそう言いながら、
旅の手荷物を担ぎ上げる。
昨日、
宮廷魔術士の元部下だった
青年レグンスを送り出した後、
リーン達は少しだけ、アーファの
家で仮眠を取らせて貰った。
「ふあぁぁ…
まだ寝足りないなぁ」
あくびをしながら、目を擦り
睡魔と戦うイルを外へ連れ出す。
「ほれ、シャキッとしろ!
これから暫くは歩くのだぞ」
前世の人格の方が
最近は強くなっている筈だが、
まだ僅かに幼さが残る
イルに喝を入れる。
家の前で二人を見送るアーファは、
寂しそうに二人に声をかける。
「気をつけてね…
この先は魔物はいないって、
言われてるけど、薄暗い
森林地帯だから…」
「うむ、アーファも達者でな!」
「アーファに手紙を書くよ!」
リーンとイル、二人はそう言いながら
歩いて行く。
「また…この町へ来たら、
遊びに来てね!絶対だよー!」
いつまでも二人を見送っていたかった
アーファだったが…
やがて朝日が地平から顔を出し、
遠く離れていく二人を
眩しい光が
覆ってしまうのだった。
さて、
二人は町の出口門へ差し掛かった。
いよいよ町を出て、
隣国フィアロの国境へと向かうのだ。
と…、
町の出口門から少し離れた場所に
誰かが立っているのが見えた。
目を凝らして見れば、
ギルド職員…
しかも、その上司と思われる人物だった。
そのギルド職員は、
二人を視認すると
何も声も掛けず、ただ深く
お辞儀をしていた。
リーンとイルは、
軽く会釈をし、門をくぐり抜けていく。
目指すは隣国フィアロ!
「はぁ…フィアロ…
フィアロって言えば…アイツだよなぁ」
イルがため息混じりに言葉を漏らす。
「そうだな。奴だな…」
リーンもまた、苦虫を噛み潰したような
表情で奴を思い出していた。
古代の勇者パーティの一人。
我らが仲間…
今はリーンの施した封印の中で
停止した悠久の時を漂っているだろう。
いつか、奴とも再会できるだろうか?
二人は大切な仲間を思い出しながら
旅を続けるのだった。
◇◇◇◇◇
(第一部、完)




