終章⑦
◇◇◇◇◇
アーファの家は町外れにある。
ギルド建物とは、かなり離れた距離にあり
小一時間ほどは歩いたか…
宵の口を迎える頃に
ようやく到着した。
ドアを開けたアーファは
驚きながらも、笑顔で歓迎し
二人を部屋へ招く。
「…なるほど
色々大変だったみたいですねぇ」
アーファから、温かいお茶を出され
のんびり飲みながら、
事の経緯をざっくりと話す。
勿論、二人が古代の勇者だったことや、
ブレイブダンジョンの真相を
詳細に話すつもりはない。
だが、アーファとて
ドワーフ族に代々伝わる話から
二人のことは大体は察知して
いるのだろう。
立ち入った余計な詮索はせず、
大まかな経緯を理解してくれた。
「…それで
お二人はこれから、どうされるの?
半年間も収入がないのは…
深刻ですよねぇ」
なんなら、自分の研究の助手でも
してみるか?
…と、アーファなりの気遣いを
してくれるが…
リーンは、その気遣いに感謝
しつつも、やんわりと辞退する。
「いや…
今回の…ギルドの我々への処置は、
ギルドなりの我々への配慮なのだ」
「え⁈
どういうことです?」
イルはキョトンと首を傾げる。
「ギルドはな、先日の…
ブレイブダンジョン最奥での出来事の…
宮廷魔術士一行、以外の関与者について
…我々が関与した事を
既に突き止めていたのだと思う」
つい、この前…
リーンが懸念していた事である。
宮廷魔術士一行との出来事が
ギルドや、周囲に知れれば…
民衆の混乱を引き起こしてしまう。
それが、どんな大変な事態に
発展してしまうか…
恐らく…
最奥での真実までは、
突き止めて無いにせよ
宮廷魔術士一行の大損害に比べ
リーンとイルが無傷で帰還した事、
リーンの持つ虹色のタグが
特別である事を考慮した上で…
ギルド上層部が判断したのだろう。
町中で噂がでている、
関与者の公表は避け、
ブレイブダンジョンの真相に
触れない事を…
恐らく、ギルド上層部の幾人かは
事の真相にかなり近い
予測を立てた上で…
昨日のイルが破壊した件についても
同様で、
周囲の下手な憶測が飛び交う前に
手を打ちたいのだろう。
早い話が
バレる前に、この町を出ろ…と。
リーンは、これらの憶測を
かいつまんで、イルとアーファに
話し、茶を啜る。
「ええと…
ちょっと複雑だけど…
バレちゃダメだから、去れって感じ?」
「ええ…僕、なんにも悪いことして
ないと思うんだけどなぁ」
アーファの言葉にイルは
困ったように反論するが…
イルの頭に
リーンの杖が勢いよく落ちる。
「何もしてない訳ないだろう!
ダンジョンに穴を開け、山を削って」
そうでなくても…八〇〇年前…
闇堕ちして、錯乱したイルは
この地の魔物の領域を破壊して
回り、あわやというところで
町にまで、行きかけたのだ。
当時の魔物も、人間達とて…
全てを破壊しまくる
この、人影に恐怖し、
魔王の手先だと思っていたのだ。
万一…
イルのそんな過去が明るみにでたら…
「イル、自分の存在に
もう少し自覚を持て!
…もう、ただの田舎から出て来た
駆け出し冒険者…とは、言って
られないのだぞ?」
リーンの言葉にイルは
ハッとする。
アーファから貰ったペンダントで
一瞬だが、チカラを取り戻し…
前世の記憶と今が、ようやく
一つに纏まりかけ、
駆け出し冒険者気分のままで
浮かれ過ぎていたのだ。
自分のチカラ、自分の記憶…
自分の存在には、責任が重くあるのだ。
「ごめんなさい…」
イルがシュンとして、肩を落として
いると、
外から、ドアを叩く音が聞こえてきた。
◇◇◇◇◇
(終章⑧へ続く)




