終章⑥
◇◇◇◇◇
弁償しなくてよいと、喜んだのも
束の間、イルは続くギルド職員の
処罰に愕然とする。
「僕ら、半年間は冒険者休業って
ことですか?」
「少なくとも…この町では」
困ったと…
項垂れるイルとは対照的に、
リーンは職員をじっと見つめていた。
「それだけで…いいのか?」
リーンは静かな声で職員らに問う。
職員らも、何かを察したかのように
穏やかな表情で、頷く。
「イル、話しは終わった。行くぞ」
状況を全然、飲み込めない
イルはポカンとしながら
席を立つ。
「ねぇ、リーン様?
どういう事だったんですか?」
どうにも腑に落ちないイルは、
ギルド建物を出て歩きながら
リーンに問う。
「詳しい話は…
そうだな、アーファの家へ
少しお邪魔させて貰ってから
話そう」
そう言いながら、リーンは
スタスタと歩いていく。
リーンを追いかけ
歩きながら、イルは振り返る。
ギルド建物…
リーンとの再会、周囲の嘲笑…
畑仕事や草むしり…屈辱だったけれど、
今なら笑い飛ばせる依頼の数々…
冒険者仲間との交流…
転生して、新たな人生を歩み…
前世の記憶と自意識と、
今世としての感情…
己が何者なのか…
上手くコントロールできなかった日々。
未熟な自分を
リーンと、ギルド職員や冒険者仲間は
支えてくれたのだ。
そんな恩のあるギルドを
去らなければならない…
(まぁ、自業自得なんだけど)
イルはほんの一瞬、立ち止まり
ギルド建物へ向かい、
心の中で深くお辞儀する。
前を歩いていたリーンもまた
立ち止まり、イルを待っていた。
陽が傾き落ちる、夕映えの中で
逆光を浴び、リーンは静かに
微笑んでいるように見えた。
僕の女神様…
「遅いイル!さっさと歩け!」
やっぱり、いつものリーンだった。
「はいはい!今行きます!
…ああ、それにしても
足が短過ぎて、歩き辛いなぁ」
やはり、この身体だけは解せん…
など、文句を口の中でぶつぶつ紡ぐ
イルとリーンは、アーファの家へと
向かうのだった。
◇◇◇◇◇
(終章⑦へ続く)




