終章④
◇◇◇◇◇
確認のために言うが、
ブレイブダンジョン一層では、
基本、魔物は単体で出現するのが
セオリーだ。
群れで出現するのは本当に
稀であるのだが…
「また大コウモリの群か!
今回は数が多いな…」
リーンが加勢しようかと、
イルの方へ進みかけた時…
「リーン様、大丈夫!
あのペンダント使うから!」
イルの嬉々とした声と同時に、
ダンジョン内に目も眩む閃光が
迸る。
イルが言う、あのペンダントとは…
恐らく先日アーファから譲られた
一瞬だけ、魂が保持する記憶の中の、
最強の自分に戻れる…
という不思議レアアイテムの事だろう。
(イルめ…これを使いたかっただけでは
ないのか?)
リーンが胡乱気な目で前方を見つめる。
イルが使ったペンダント…
一日に一回だけ、使用できる
イルにとっては、
前世の身体に一瞬でも戻れる、
大変有り難いアイテムだった。
「この前は…
大コウモリ戦で酷い失態をして
しまったからね…リベンジだー!」
ペンダントを握り、解放の意を念じる。
白金の長い髪が揺れる。
小柄だったイルの身体に変化が起こる。
長身の、彫像のような精緻な顔の青年が
先ほどのイルの代わりに現れる。
「全力の僕の攻撃を受けてみよ!」
「ちょ…!!!」
青年がそう言うや、閃光を伴う
光速の剣圧が放たれた。
「ちょっと、待てーーー!!」
既に手遅れだったが…
リーンは叫ばずにはいられなかった。
誰が、"今の姿"で全力を出せと言った⁈
「あ、、、」
青年はポカンと口を開けた。
次の瞬間には、背はぐんと縮まり、
小柄で小太りなイルが…
口をポカンと開けていた。
イルが見る視線の先には…
ダンジョンの壁を野外まで貫通し、
見事な大穴が開いていた…
あまつさえ、その先の山脈の頂上まで
悉く削ぎ落としていたのだ。
「ごめん、なさい…?
大コウモリは倒したけど…
ちょっと、山も削っちゃった」
ちょっと、ではない。
山脈の頂上が無くなり
山が間抜けな、台形になって
しまったではないか!
リーンは額を抑え、
魂まで溢れそうな勢いの
盛大なため息を吐くことになった。
◇◇◇◇◇
(終章⑤へ続く)




