終章③
◇◇◇◇◇
二人はブレイブダンジョン入り口に
到着する。
ちょうど昼時だったからか、
普段は冒険者や観光客で賑やかな
入り口だったが、
珍しく人は少なく、閑散としていた。
ほんのつい、先日…
切迫的な状況にあったダンジョンとは
思えないほどに、
平穏な(といっては変だが)ダンジョンだった。
「さて、一匹か二匹ほど捕まえて…
すぐ帰るぞ…
ほれ、向こうに早速いたぞ」
リーンが指差す方に
牙ネズミが出現していた。
それを確認したイルは
嬉々として、駆けていき…
ふと、牙ネズミの前で立ち止まる。
「ねぇ?リーン様?」
少し困ったような声音のイルが
リーンを呼ぶ。
「なんだ?戦うのが急に怖くなったのか?」
リーンがちょっと意地悪っぽく
軽口を吐く。
「そうじゃなくて…
どのくらいの力加減で倒せばいいのかなって」
イルは剣を構えながら、
真面目に考えているようだが…
「馬鹿者、イル…キサマの身体は
まだ今世の肉体だぞ?
力加減もなにも…全力で戦え」
先日の件でイルは、
モヤがかかっていたような
前世の記憶と意識、
そして、それらと肉体とが
やっと繋がったようだ…と話していた。
「そっか…うっかりしてました!
今までは、ずっと自分の体に
違和感があったけど…
最奥でのあの戦闘以降から…
違和感が無くなって、
自分が自分になれたって
感じだったので…」
イルはそう言いながら、
己の手を握り締めた。
「確かに…この筋肉量と腕のリーチでは、
牙ネズミに全力出さないと
致命ダメージを負わせられませんね」
それでは… …
と、イルが剣を振り上げた時…
「あ…」
リーンが声をあげる。
瞬時にイルが周囲を見る。
ブレイブダンジョン一層にしては、
相当稀な状況だ。
イルの周囲に、大コウモリの群れが
出現した。
◇◇◇◇◇
(終章④へ続く)




