四章四話イルの変化②
◇◇◇◇◇
一夜明け、
リーンとイルは午前中の爽やかな
日差しの下で、
宿屋裏のベンチに腰掛けていた。
ギルド職員に許可を貰い、
今日は休みを貰った。
ぐっすり寝て、
気持ちが切り替わったリーンは、
改めて隣りに座るイルを見る。
その横顔は、
昨日までの無垢な子犬のような
無邪気さは無く…
どこか遠くを見る目をしていた。
「よく眠れたか?」
「んー、余り眠れませんでしたね
色々、
頭の中で整理しなきゃいけない事が
あり過ぎて」
「そうか…」
イルはそう言って白金の髪を掻き分ける…
昨日までの子犬には無かった仕草だ。
しかし、
それは、リーンには見慣れた、
古の仲間の懐かしい仕草でもあった。
この数ヶ月間で、イルはかなり変わった。
出会った頃は、
太り過ぎて周囲からも笑われていたが、
(加えて女好きだったから、
女性陣から絶大に嫌われていたな)
今では、体も少しは引き締まり筋肉も付いて、
評価もかなり上がっているようだった。
更に…
昨日の一件がきっかけで、
前世の意識がより前へ出るようになり…
大人びた空気感を漂わせるようになったのだ。
あの子犬感はどこへ行ったのやら…
(容姿はまだまだ、ずんぐりしてるがな)
「今回の件も一旦、落ち着いたから、
キサマに改めて
聞いておきたいのだが…」
「はい?」
リーンはイルに向き直り、
眉間に皺を寄せる。
「な、ん、で? 転生したのだ???」
そして、イルの耳を引っ張り上げた。
「うわぁぁ!ご、ごめんなさい!」
「あれ?まだ子犬がいた」
「え?」
「いや、何でもない」
「今さらではあるが、
あのまま…
水晶の中で眠っていたら良かったではないか?
我が安全に封印を解くことができる迄…」
「貴方を1人にさせたくなかったんですよ…」
リーンは黙る。
大凡、そんな単純な動機だと予想はついてた。
イルは、そういう人物だったのだから…
風がリーンの髪を揺らす。
きっと遠巻きに
シルフが様子を伺っているのだろう。
リーンは空を見ながら、
過去に起きた出来事を記憶から引き出す…
記憶は数百年前まで遡る…
◇◇◇◇◇
(イルの変化③へ続く)




