四章一話最奥③【挿絵付き】
◇◇◇◇◇
巨大な水晶の柱の中に
人影が…
「あ!…あれは…」
「うむ…
あれこそが…所謂
"ラスボス"だ…」
リーンの表情は更に険しくなる。
水晶石により、その容姿は
ぼやけていて分かりづらいが…
異形の魔物…というより、
"ラスボス"は人の形をしているようだ。
(ラスボス…か。)
イルは息を呑む。
この町に古くから伝わっていた、
伝説の存在…
コイツの…
超高密度に濃縮されたエネルギーの所為で
洞窟内に魔素が充満し、
魔物が大量に集まり…
ダンジョン化したのだ。
リーンはぐっと、その形の良い
唇を引き締め、険しい表情をする。
「愚かな行為だ。
今日まで、封印で守られていたからこそ、
町への被害はでなかったというに…」
「?…"ラスボス"を敢えて封印で守ってた?」
不思議な話しだろう。
脅威の存在なら、
皆で討伐すればいいものを…
普通はそう考えるだろう。
「バカな奴らは、大体、そう考えるな…」
リーンの視線がイルに刺さる。
「…う(見透かされた⁈)」
「そうして行動したその結果は
… …じきに分かるだろう!」
リーンが鋭く視線を向けた先には…
貼り付いた護符が
徐々に水晶にひびを入れていた。
パラリ、パラリ…
水晶の欠片が落ちていく。
「あははは!!
封印が解かれるぞ!やはり!
この解除の護符は本物だったじゃないか!」
宮廷魔術士は
封印解除成功の喜びの中、
自身の過去を振り返る。
長い間、
このダンジョンの研究していた。
それは…先祖が密かに残していた
文献の存在を知った時からだ。
最奥まで奇跡的に到達した
冒険者が命を代償に持ち帰った口伝…
それを密かに書に認めた密書文…
その内容は…
"最奥の魔物は封印で守られている
どんな手段であろうと、
封印を破る事はできなかった…"と。
正式な事実として認められず、
この事は闇へ葬られ…
忘れ去られた口伝となったが…
この口伝を信じ、
封印を破るべく調査や研究を重ねた…
しかし、
どんなに調べても
魔法研究を重ねても
封印を解く為の術式も、
術の正体も分からなかった…
研究を諦めかけた時…
この解除の護符を入手した。
旅の吟遊詩人と名乗る者から
渡された護符…
周囲は偽物だと非難したが…
この不思議な力が込められた護符を
手にした私は直感した。
頓挫しそうになった研究を
成功させる術は、これしか無いと…!
「私は確信した!!
この護符こそが最奥の魔物の
封印を解除できる
唯一の方法なのだと!」
「仮に…
封印が解けたとして
その後どうするのだ?
己れ如きが
あれを倒せるとでも?」
宮廷魔術士の熱弁を
叩き潰すように、
リーンの冷たく、
怒気が混じる声音が響く。
「無論、倒すさ!
そこらの二流冒険者共より、
私は遥かに、魔術熟練度が高いのだ!」
「…倒せるのなら
倒してみればよかろう?」
…と、リーンが再び視線を水晶へやると
水晶に埋まっていた人影に変化があった。
「うおっ⁈
ね、ねぇ?リーン様??
水晶の中がい、い、今…動いたよぉぉ⁈」
イルが腰を抜かさんばかりに、
騒ぎたてる。
パリン、パリン…と、
最奥の間に何かが砕ける音がした。
◇◇◇◇◇
(二話へ続く)




