三章二話ブレイブダンジョン⑧
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魔物も脅威の筈だったが…
八層の至る所に
魔物の新しい死骸が落ちていて、
宮廷魔術士らが
今さっき迄、戦闘してた事を
感じさせた。
「アイツら、強いんだなぁ!
八層の魔物って、上級魔物ですよね?
集団で行動してるとはいえ、
次々と倒してくなんて!
僕ら何もしないで追いついちゃいそう」
「だが…魔術士と対面するまでは…
我らの存在を、一行に
知られないようにしないとな…
遠方から妨害されたら面倒だ」
魔物の死骸を避け、
毒ガスを避け…
なるべく気配を消しながら進む。
宮廷魔術士一行の足跡を
追ってきたとはいえ、
一切ダンジョンで道に迷うことなく
リーンは進んで来た。
「さすがリーン様…
このダンジョンの構造…
よく知ってるなぁ…」
イルの小さな独り言を
耳にしたリーンは、
苦笑いにも似た、ため息を軽く吐く。
「気に入ったのなら…
ずっと居てもいいのだぞ?」
「うえっ⁈」
リーンの謎を含んだ言葉に、
イルは激しく首を振り拒絶を表す。
今世のイルにとっては、
初めての場所だ。
しかも、名だたるダンジョン…
駆け出し冒険者としては、
憧れの場所であり、
自身が成長する上でも挑戦しなければ
ならない場所…
しかし…
前世の記憶が警鐘を鳴らす。
ここは…来なければならない場所だった。
けれど、来るのが憂鬱な場所だった。
今世と前世…
相反するニつの想いを抱え、
イルは複雑な表情をしながら
前を行くリーンに付き従っていった。
そして、
ついに九層まで来た。
この九層の先…
十層…最奥の間には、
伝説のラスボスが鎮座する広間がある…
と、言われている。
しかし、九層を超えられる冒険者は
ほぼいない…
この町の噂や昔話でも、
そうそう聞く事はない。
最奥の間とは…
伝説として、語られるだけの
情報しかない。
現役の冒険者が到達して、
話しを持ち帰ったという記録は無いのだ。
もしかしたら…
この数百年の間に何組かのパーティは
九層まで到達した者はいるのかもしれない。
…今回の宮廷魔術士一行のように…
しかし…
実録が伝わってないのだ。
それは、即ち…生きて還ってきた者が
いないという事実。
歴代の猛者が挑んでも
敵わない敵…それは…
「九層かぁ…ついに伝説へと足を踏み入れることになったんだね…」
イルは呑気に感動してるが…
「感動してる場合ではないぞ?
九層の扉へ入ったら、
すぐにしゃがむのだぞ!」
リーンの言う事に
忠実なイルは素直に従った。
リーンの合図と同時に地面へ伏すと…
すぐ頭上から何かを噛み合わせるような
轟音が聞こえた。
◇◇◇◇◇
(三話へ続く)




