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三章二話ブレイブダンジョン①



◇◇◇◇◇



頭上に登っていた筈の月は、

傾き、森へ消えようとしていた。

静寂が支配しているような、

闇の中をリーンとイルは歩いていた。


「ねえ?

リーン様はやっぱり向かうつもり?」


とぼとぼと、リーンの後を

歩いていたイルは…

意を決して前を行く華奢な背中に問う。


恐らくダンジョンへ。


「無論だ。

奴らが…やらかす事で…

大変な事が起きるのを見過ごす

ことはできぬからな」


既に予想はできてる。

リーンは宮廷魔術士の野望を

阻止する意思を強く持っている。


宮廷魔術士…

恐らく、

並の魔術士より遥かに強い存在なのだろう。

しかも何人もの部下も率いていて…

そんな奴らを止める…


普通の冒険者でさえ、難しいだろう。

なのに…

初心者のこの体の…自分に可能なのか?

イルの手先が震える、

膝もカタカタと鳴り崩れ落ちそうだ…

今世の体の…自分が警鐘を鳴らしている。


しかし…


絶対に仲間を見捨てはしない!

足手まとい?

やらなきゃ、そんなの分からない!


体は恐怖で震えるが、

心は闘志に満ちている。


「僕も付いて行く!絶対!

絶対…役に立ってみせるから…」


蒼ざめた顔、

血色の無くなった震える唇から

出る言葉のギャップに…

リーンはいよいよ吹き出してしまう。


「ふふ…体と精神が相反しているぞ?」


「な、なんだよう!僕は本気なんです!」


「ああ、分かってる。

キサマは昔から…そういう奴だ。

仲間を絶対見捨てない。

そもそも、拒絶したとて、

結局付いて来るのだろう?」


「うぐ…」


イルが何か言い返してやろうと

言葉を選んでるうちに、

リーンはさっさと歩き出していた。


「あ、待ってよ!リーン様〜」


中々、前世のようにはいかない

今世の情け無い自分を自覚する

イルだった。



◇◇◇◇◇



(ブレイブダンジョン②へ続く)

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