二章・第二話進めば暗雲⑥【挿絵付き】
◇◇◇◇◇
今…武器店へ入って来た客…
明らかに装備している品々をみても
庶民とは一線を画す…
絹製の上等なローブには
金の艶やかな刺繍が施され、
首元には、上品な宝石付きの
飾りが輝いている。
上背はさほどある訳ではないが、
背筋が伸び、歩き方も優雅な
その中年に差し掛かった年齢だろう、
男は、軽く店内を見渡していた。
イルが不思議そうに
その客を見やった時…
「やはり田舎のこのような武器店では、
ろくな商品が無いな!」
その、上流階級と思しき客は、
入る早々そんな言葉を
吐き捨てた。
なんとも失礼な客である。
店主は元より、イル達でさえ、
新客を訝しむ。
「申し訳ない…
いや、なに分…田舎でして…
武防具は後にして…お食事でもいかがですかな?」
店内に不穏な空気が立ち込める中
しかし、背後から老齢の紳士が
へこへこと愛想笑いで
この豪奢な杖の主を案内し、
さっさと店を出る。
一瞬の出来事だったが…
俄かに騒然となった店内は
再び静寂に戻る。
「なんだったんだ?
あの人達…??」
イルが顔を引き攣らせ不満そうに言葉する。
そこへ、ため息と共に武器屋の店主が、
イルへ応える。
「噂だが、隣国から来たって言う
宮廷魔術士さん御一行だろうな…
あのゴマすってた爺さんは、
この町の町長だし、
まぁ、間違いない」
「はえぇぇ…宮廷魔術士…?
は、初めて見た!
凄い偉い人なんだよね?」
イルはとぼけた口調で
感心した風に頷く。
「そりゃぁなぁ…凄い魔術の使い手だろうし、
なんてったって、"レベル定義無し"
の冒険者プレートをお持ちのお方だよ」
「ほぇ?」
「お前さんらも冒険者だろ?
憧れの存在ってやつじゃあないかい?」
「そうなのか??」
「そういや、噂ではあの宮廷魔術士さん
ここのダンジョン攻略に来なすったそうだよ」
そんな店主からの情報に、
他人事として感心してたイルだったが、
目の色が変わる。
「ダンジョン攻略⁈
あの宮廷魔術士が?なぜ⁈」
「さぁ…?
でも、レベル定義無しのお方だ。
資格はある。
…見たか?
あの誇らし気に首から下げた
虹のダイヤの石が嵌め込まれたプレートを!
まぁ…
ギルドからも、
ダンジョン最奥のラスボス討伐の許可は
降りるだろうなぁ」
元冒険者だった店主は懐かしそうに、
想いに耽る。
ダンジョン最奥…
かつては店主もダンジョン最奥を
夢見た一人だったのだろう。
ブレーブダンジョン攻略には
ギルドが定めたルールがあった。
◇◇◇◇◇
(進めば暗雲⑦へ続く)




