二章・第二話進めば暗雲②
◇◇◇◇◇
イルの歓喜の奇声が室内に響く。
列に並ぶ冒険者らは一様に、
この、奇妙に存在感のある
駆け出し冒険者に注目する。
「うるさい!」
またギルド職員に睨まれたら
敵わないとばかりに、
すかさずリーンは氷のような鉄槌の言葉と、
物理的杖の打撃を込むが。
「あぅっ、すいません!!
許してください!
で、でも嬉しいのでふよぉ」
涙目で謝罪しながらも、
イルの口元は歪む。
ちっとも反省してる様子はない。
「ついに、僕ら…ダンジョンデビューでふぅ!」
太ってた時の口調が
何故か復活している程に歓喜を表現するイル。
なんなら、その短い手足で
小躍りしている。
やや緊張の面持ちで見守っていた周囲は、
どっとため息を吐く。
『なんだ、そういう事か』
周囲の冒険者らは一斉に
気が抜けたように肩を落とす。
何か深刻な事を職員に通告されたのかと…
皆は心配をしたが…
どうやら杞憂のようだ。
いや、イルにとっては
深刻で、大事な…
一番嬉しい通告なのだろう。
周囲の先輩冒険者らとて、
かつては同じ経験をした。
やたら鈍臭い、何故か放っておけない…
ブサ可愛い後輩同業者の成長を
優しい眼差しで祝う。
「やったな!イル!」
「ここからが勝負だぞ!」
「実戦は簡単じゃない、気を抜かないのよ」
「実戦前にまた剣の稽古してやるか」
周囲の冒険者から
温かい励ましの言葉を貰う。
半年前とは大違いだ。
それは…
イルとリーンが小さな仕事
(冒険者にとっては不本意な)を、
地道にこなし、
信用を得て来た軌跡である。
周囲からの温かな励ましを受け、
再びイルは胸が熱くなり、涙目になる。
袖口で涙を拭うイルを
対面で静かに微笑んでいたギルド職員は
口を開く。
「イルさんの成長が大きいですね。
実戦では、前衛である戦士の実力が
戦闘を左右しますから…
ここ数ヶ月、イルさんは腐りもせず、
地味な依頼をこなし、
剣術の稽古も進んでしていました。
我々職員は、そこを評価し
今回、実戦付きのダンジョン内依頼を提案しました」
顔馴染みのギルド職員は、淡々と…
しかし、
温か味のある眼差しをニ人に向け
言葉を紡ぐ。
「ありがとうございます!!
精一杯頑張ります!」
イルはかつて無い程に背筋を伸ばし、
職員へ90°直角にお辞儀をし…
勢いで額をカウンターにぶつけてしまう
…失態までをセットに、
周囲に笑いをもたらした。
「額、大丈夫?」
「おいおい、鈍臭いのは変わらんな!」
「しっかりしろよ?」
「リーンちゃんを守るんだぞ」
皆の声に後押しされ、
拳を握り締め、気合いを入れるイル。
ぶつけた額の痛みなど吹き飛んでいた。
◇◇◇◇◇
(進めば暗雲③へ続く)
リーン:「なんだと?アーファがドワーフぽくない?
この世界のドワーフは皆あんな容姿だぞ?」
イル:「え?でも、ドワーフって言えば普通…」
リーン:「普通とは何だ?」
イル:「ええと… …あれ?なんだっけ?
…そう言えば、この世界のドワーフって皆あんな姿だった…な」
リーン:(洗脳成功)




