二章・第一話僅かな歩みをかみしめて④【挿絵付き】
◇◇◇◇◇
冒険者らが指を指した方向を見る。
木枯らしによって彷徨う、
木の葉に紛れ…
空を舞う、何かがあった。
蝶と同じ大きさの生物か?
しかし蝶とは全く違う…
目を惹くのは、
鱗粉らしにものが周囲に光り輝き、
だが…羽を付けたその小さな生物は
虫ではない。
幼い、人の子のような姿…だった。
「シルフ…風の精霊だよ!
高等精霊魔術士か
伝説の妖精族でもいない限り、
精霊の姿を具現化するなんて、
できないらしいんだけどな…
物凄く珍しい存在だよ!」
と、ベテラン冒険者は感嘆する。
「へぇ…初めて見た。
てか、精霊って実在するんだ!」
目を輝かせる新人冒険者に、
先輩冒険者はため息。
「当たり前だろ?
魔物もいるんだし、精霊もいる!
…そもそもこの世界には、
かつて、魔王が存在し、
世界中で暴れていたという
伝説も記されてるんだぞ!」
「おお〜!魔王かぁ…
御伽噺が本当だったら…
凄いよなぁ!」
「魔王とか…倒してみたいよなぁ」
「それだったら、俺は伝説の
英雄勇者の一員になりたい!」
ますます目を輝かせる
新人冒険者を見て
周囲に笑い声が上がる。
実際、旅や冒険をせず、
安全な町の中で一生を終える
一般市民が殆どだろう。
旅人や冒険者からの話しや、
学校で習う古代史くらいでしか、
魔物や精霊などの人外の存在を知らない。
ともすれば、お伽噺と思っているだろう。
「…まぁ、御伽噺は御伽噺だけどな…」
そんな冒険者らの話しを、
ぼんやり聞いていたイルは、
遠い目をして、ボソリと呟く。
イルは晴れた青空を見上げ、
遠い前世の記憶を手繰る。
もしも、御伽噺と史実が
違っていたら…
皆はどう思うのだろう?
風のように空へ舞うシルフを目で追いながら
かつての仲間とシルフを重ねる。
…と、ふと。
気ままに舞っていたシルフが
リーンの方へ近寄ってる気がした。
更にリーンも何やら
言葉を交わしているような?
リーンが座っているベンチは、
イルからは遠い、
単なる偶然かもしれないが…
「おい、イル!
稽古の続きやるぞ!」
「あ…はい!」
ぼんやりとしていたイルに、
先輩冒険者から声が掛かる。
イルにとっては、大事な稽古だ。
シルフとリーンの事は
すぐに頭の中から消え去り、
稽古に意識を切り替える。
周囲からも
剣戟が上がり始めた。
イルは練習用の剣を強く握り、
目の前の相手へ集中する。
日々是鍛練なり。
有意義な一日だったと言えるだろう。
◇◇◇◇◇
(第二話へ続く)
リーン:「…ムシャムシャ…」
イル:「あ!またリーン様ったら、こんなの食べて」
リーン:「我はこれが好物でな…キサマも食べるか?」
イル:「猛毒凝血麻痺腹下す茸…なんて絶対食べたく無いですよ!」




