二章・第一話僅かな歩みをかみしめて①【挿絵付き】
◇◇◇◇◇
数日後…
下水道のネズミ捕獲器の回収と
最終チェックも終わり、
ようやく、あの悪臭からも解放された。
依頼主の下水道管理者からも感謝され、
ギルドの評価も上々だった。
日々、ほんの僅かだが、
前進してる実感が…
リーンとイルに更なる
やる気を齎している。
さて、本日の新たな仕事を
ギルド窓口まで貰いに行く前に、
腹ごしらえだ!
下水道点検の依頼をしっかり
こなした謝礼として、
依頼主から報酬を少しだけオマケして貰い、
今朝の二人の懐はいつもより温かい。
朝早くから、
ギルド併設の酒場は混み合っていた。
町には他にも飲食店は数多くあるが…
冒険者なら、
格安で宿泊できるギルド直営の
宿屋が酒場の2階にあり、
その利便性からも、冒険者は大抵、
起きてすぐ何かしらか、
空の腹に飲食物を入れに、
寝ぼけ眼を擦りながら
降りてきては、酒場に吸い込まれる
ように席へ向かう。
最短距離かつ、メニューの豊富さ…
値段も安め、とくれば
わざわざ朝から、ギルド外の店へ
出向く理由も少ないだろう。
そんな感じで
酒場は賑わい、混み合ってはいるが
席数もそれなりに用意されていて、
座る場所の確保に苦労する、
という事はまず無く…
リーンとイルも、
広い酒場を見渡し、空いてる席を探し
確保する。
メニューは、壁に掛けられている黒板や
短冊が壁の各所に貼られていた。
何を食べるか…食べたいか…
冒険者は酒場の壁をぐるりと
見渡すものだが…
残念ながら、
リーンとイルには、そんな選択権は
無いに等しい。
酒場で一番安い物…
これがニ人の、この半年間の常だ。
即ち、野菜スープとパン。
…だがしかし、今日は…
「おおお…こ、これは…
め、め、目玉焼き⁈」
イルは眠そうだった顔を一気に
輝かせ、テーブルの上の
料理に注目する。
リーンが注文した皿の中に、
見慣れぬ品が含まれていたのだ。
いつもなら…
野菜の屑スープと
ボソボソのパン一切れしか
注文できなかった食事だったが…
これまで小さな依頼を少しずつこなし、
財布もほんの少しだが、潤ってきた故に…
野菜スープにパン…
そこに今日は追加でベーコン目玉焼きまで
付けられてた。
「少し、財布にも余裕ができてきた
からな、今日は奮発だ!」
「う、うわぁ!
ベーコンも付いてる!!」
フォークとナイフを手に、
ウキウキと頬を緩めるイル。
再会した頃のような、
幼い表情を久々に見て…
リーンもまた、頬を緩めるのだった。
◇◇◇◇◇
(僅かな歩みをかみしめて②へ続く)
いつも本作を読んで下さり、ありがとうございます!
作品ストックの都合上、暫くは一日一回16時台の投稿のみにさせて頂きます。
また明日もぜひ読んで頂ければ嬉しいです!
リーン:「明日も来てくれたなら…イルの秘密を一つ教えて進ぜよう」




