第四話下水道探索⑩
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研究室から階段を上がると、
アーファの自宅だったらしく、
天井は低いものの、
ドワーフ製の精巧な作りの家具や
調度品が目を引いた。
「ち、地上だ…や、やっと出れた〜」
玄関ドアを開けたイルは大きく深呼吸をし、
地上の空気を存分に吸い込んだ。
ずっと地下にいたからか、
時間感覚が鈍っていたが…
陽はだいぶ沈みかけた時刻になっていた。
「アーファ、ありがとう!
助かったよ!」
イルはアーファに丁寧に礼を言う。
改めて礼をしたいと言ってきたリーンに、
アーファは笑顔で辞退する。
「いいんですよ〜!
道案内しただけなんだし、
気にしないでください!
こっちだって貴重なキノコに
巡り会わせて貰ったのだし♪」
と、…だが少し考えてアーファは
付け足した。
「…ああ、強いて言うなら、
金網壊してる事は管理人に
黙っててくれると嬉しいなぁと…」
下水道の金網が壊れてたのは、
やはりアーファの仕業だったらしい。
下水道には色々なキノコ菌があり、
たまに探索してるのだと言う。
金網はまたアーファが責任をもって
補修しておくと約束したので…
ギルドへの報告はしない事にした。
リーンとイルを見送るアーファは、
言い忘れたと、ニ人の背へ言葉を投げる。
「下水道入り口の扉だけど、
今度来る時は、
聖水を掛けていたほうがいいよ〜!
ゴーストのイタズラはそれで防げるから!」
アーファのそんな言葉に、
イルは今日の午前中に起きた
恐怖を思い出し…
更に後日、ネズミ捕獲器を回収しに
再びここへ、
戻らなければならない事も思い出す。
「あぁぁ…ま、また下水道…
来なきゃいけないんだぁぁ」
「今度は上手くやり過ごせばいいのだ」
前回の草刈りの時のような、
体力面の疲労とは違い、
今回の下水道依頼は
精神面に大きな疲労をもたらす仕事だったと
イルはため息を吐く。
とは言え、アーファのお陰で汚れた体を洗い、
リフレッシュもできた。
それに、
冷静なリーンにはいつも助けられている。
ニ人の手助けに感謝しつつ…
だが、またも今回とて、
己の未熟さと無力さを思い知った。
「もっと、しっかりしなきゃな…」
ボソリと呟いたイルの
少し丸まった背中を
リーンは力任せにバンバンと叩いた。
「一歩ずつ実力を付けていけばいい」
その通りだ。
明日も頑張って、依頼を達成しよう。
ああ…でも、その前に
宿屋でぐっすり寝たい…
町外れのアーファの自宅と、
町の中心にある冒険者用宿屋の距離は
そこそこあった。
後日…捕獲器の中に
ネズミがうじゃうじゃいたら、
どうしよう…などと、
眠い頭に浮かびながら
帰路へ向かうニ人だった。
◇◇◇◇◇
(二章へ続く)




