第四話下水道探索⑥
◇◇◇◇◇
「あ、開かない…!」
引いてもみたがびくともしなかった。
「閉じ込められた⁈
お化けの仕業⁈」
イルは涙声になりかけている。
イルを少し押しのけ、
リーンも扉を調べる。
「うむ、
開かないみたいだな…」
リーンが余りにも平然と言うものだから、
イルは軽く苛つく。
「僕達この下水道で
お化けに取り殺されるかもなんだよ⁉︎」
「慌てるほうが危険だろう。
まずは、身の安全だ。
耳を澄ませろ、
もし、魔物の仕業なら、
閉じ込めてから、襲ってくる」
「魔物ならいいけど、
幽霊だったら…⁉︎」
魔物なら大丈夫なのか…と、
呆れるリーン。
「ど、どうする?
扉を叩いて外の人を呼ぶ?」
「…、…」
「ねぇ?…リーン様?」
しかし、リーンの返事は無い。
普段から冷めた目をしていたリーンだが、
その眼光が更に鋭くなっていた。
「しっ!
…何か聞こえる」
それはリーンの口から
一番聞きたくない台詞だった。
ランタンの灯りの先の暗闇…
その深淵の先から聞こえるのは…
「アハ…ハ…」
女の声…のようだった。
まだ声はかなり遠い、先程通ってきた、
網が壊れた狭い下水道付近だろうか?
なぜ、そんな場所から声が?
「行くぞ!
出入り口の扉に細工した奴かもしれないし、
不審者や…魔物なら放っておけぬ」
リーンのそんな言葉を聞いても、
イルはすぐには反応できないでいた。
…何故なら、女の声を聞いた途端、
腰が抜け、あまつさえ…
気が動転して、
下水に転げ落ち半身が汚水に
浸かっていたからだ。
「り、リーンさまぁぁ…」
「まったく…情けないな」
「だ、だって…
お、女の幽霊だよぅ…怖いよぅ」
イルの前世は自信に溢れる
剣士であったはずだが…
そんな矜持はあっさりと
木っ端微塵に砕けていた。
リーンは顔をしかめながらも
イルに手を貸してやり下水から引き上げる。
イルからは腐臭とヘドロの臭いが
立ち込める。
「さっさと歩くぞ」
「ま、待ってよう…歩き…辛くて」
ヘドロ塗れで重くなった
下半身を引きずりながらイルは
ヨタヨタとリーンの後を追う。
そんなやり取りをしてる間に、
女の声らしきものは更に鮮明に
聞きとれるようになった。
「ひぃ…近づいてくる⁈」
ランタンの鈍い光りが
謎の声の主をぼんやりと照らす。
◇◇◇◇◇
(第四話⑦へ続く)




