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第三話冒険者生活⑥



◇◇◇◇◇



「ええ…どこが?」



昨日に続きまたも

汗だく、土塗れで情けなく項垂れるイル。



「危険を伴わず、汗流せるのだし?

体力作りにはなるだろう?」


そう言って同じく土塗れ、

美しい銀の髪に、

刈った雑草を絡ませながら

リーンは不敵にニヤリと笑う。



「っ…」



本来、貴女だって…

地べたを這いずり、

他の冒険者が踏みしめた草を

刈っていく…

こんな事、

本来ならするような

身分ではないのに…

貴女は…


想いをぐっと飲み込み、

イルは拳を握り締める。

拳に力を入れてないと

涙が出そうになるのだ…


情け無くて、惨めで…

何より、リーンにまで

こんな事をさせている

弱い自分が嫌になる。



手足の短い、醜い…己の体躯。

今まで運動もろくにしなかった為、

筋肉も殆ど無く非力。

この体は…

潜在的、運動能力の才も無い…


だが…前世での記憶はあるのだ。

前世での剣技の記憶…だけは…


けれど、記憶だけでは

体が動かない。


それに、なにより…


前世での記憶を

上書きするかのように、

今世の甘やかされ、育ってきた、

未熟な自分が

意識を覆ってくる…


昔の自分を取り戻せない…



イルがほんの少し

弱気になりかけた…そんな時。


「大丈夫だ。

キサマなりに成長している。

今世のキサマとて、

ちゃんと成長している」


と、リーンが不意に声を掛けてきた。 

リーンの声はいつでも静かで、

焦る自分を優しく包み込んでくれる。



「うん…」



俯き、返事をするだけで精一杯だった。



作業の手が…

止まりかけていたが

イルは、再び力強く

草をむしる。


草をむしった土の上に

雫が、静かに落ちる。

それは多分、

イルの流した汗なのだろう…


リーンはもう、

何も言わず作業に没頭する。



イルは心の中で感謝する。

なんだかんだ言いつつも、

リーンは自分に合わせて

依頼に付き合ってくれてる。



今はまだ、冒険と呼べるような依頼を

こなしてる訳ではないが…

きっとニ人なら成り上がっていけるだろう。


楽観的だと自分でも思う。


だが、それでいい。

今は目の前の事をこなしていくまでだ。


「…後少しで草むしり依頼も完了だ!」



明日も依頼を受けよう。

不本意な依頼だとしても。

たくさん実績を積んで、

ギルド職員にも認めて貰おう。

実家にいた頃は、過保護に育てられ

泥塗れ、汗だく…など体験した事もなかった。


実績を積んでいって、

サボっていた

十数年分の意識を

取り戻すんだ。


そして、必ず

ブレイブダンジョン攻略を果たす!




この世界の子供なら必ず

絵本や子守唄で聞かされた、

遙か昔の…

魔王を倒した英雄勇者達の冒険譚…

夢のような、

その話に憧れ、冒険者を目指す者は多いだろう。



まぁ、そこは、自分はちょっと違うが…

いや、でも…気持ちは同じ。

自分も目指すはその一人なのだから。



◇◇◇◇◇




(第四話へ続く)

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