表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/99

99【第一部完】

 真っ暗闇の世界も、誰かと一緒なら怖くはなかった。

 ティアはハクトと初めてデビルと遭遇した時のことや、一緒に冒険した事などを思い出して喋っていた。

 あのときの恐怖と助けられた時の安堵感は忘れられなかった。


 ひと通り昔話を終えたあと、ティアが光に包まれた。

 三十分経過したのかもしれない。


「ハクトさん、お先に帰ることになりそうです」


「そうか。本当にありがとう。色々な話が聞けて嬉しかったよ」


「私こそです。私のことを追いかけて来てもらって、本当に嬉しかったです」


 ティアはそう言い残し、光になって闇の世界から消えた。



 気づくとリンデンの大聖堂の祈りの間にいた。

 そこにはケーゴが待ち構えており、ティアの姿を見て少し涙ぐんだ。


「ティアちゃん、頑張ったなぁ。ティアちゃんのおかげでヘルダインを倒せたんや。ほんまにありがとうな」


「そんなことないですよ。皆さんの頑張りのおかげです。他のエクソシストの方たちは?」


「ホランドへの救援に向かったで。やけど、ついさっきギルマスからシャウトがあってな。デビルの軍団を撃退したらしいんや」


 良かった。冒険者連合でデビルを倒すことができた。これは大きな成果だと思う。

 ただ、自由都市ホランドには大きな被害が出てしまった。

 そこについてはどうなのだろうか。


「ケーゴさん、ホランドは守りきれたのでしょうか?」


「まあ、あっちこっちで火の手が上がってしもたから、あんまり無事とは言えへんな。でも、皆で鎮火活動に当たってるようやし、ポーターギルドも支援の動きを見せとるから、そこは迅速に解決していくと思うで」


「それは良かったです。そういえばさっき、ハクトさんが来てくれたんです。ひとりきりじゃないってことが、本当に嬉しかったです」


 ティアの言葉を受けたケーゴは目を見開くと、次に目を細めた。


「そうかぁ。今度は一緒に行けたんやな……」


 独白するようにケーゴが語ると、光が祈りの間に溢れた。

 そこにはハクトがいた。


「お、これで英雄は揃ったな。ほなら、ホランドに行こか」


「え? でも、戦いは終わったんでしょ?」


「何言うとんねん、ティアちゃん。最後の締めの挨拶をせんとカッコがつかへんやろ?」


 まさか、そんなことまでしなければならないなんて。

 盟主を引き受けた手前、断ることはできずケーゴに連れられてホランドの近くの街にテレポートをした。



 自由都市ホランドに辿り着いたときには、すでに街を燃やしていた火は消えていた。

 それでも大きな被害を受けたことには変わりはない。

 少しだけ悲しい気持ちになっていると、ピロンと着信音がなった。


 見るとケーゴがシャウトで、「英雄の帰還やで」との一文が目に入った。

 思わずケーゴを見たが本人はニヤニヤしているだけで悪びれた様子はなかった。


 そうしていると冒険者連合の人達がわらわらと集まって来た。

 皆、一様にやりきった充足感に満たされた表情をしている。


「ティアちゃん、皆に向けての挨拶や」


 ケーゴがそういうとどこからか拡声器を持ち出していた。

 恥ずかしさを覚えつつ、拡声器を手にする。


「あー、あー、えっと。皆さん、お疲れ様でした」


 次の言葉が出てこない。どうこの思いを伝えたらいいものか。

 言葉を選んでいると、ハクトがティアの肩にポンと手を置いた。


「カッコつけなくていい。今の気持ちを伝えるんだ」


 そう言われて、ティアの中の緊張の糸が緩んだ気がした。

 しっかりと頷いて、声を大にして言う。


「皆さん! ありがとうございました! この勝利は間違いなく、私達のものです。怖かったと思います。逃げ出したい方もいらっしゃったと思います。でも、それでも皆さんは戦ってくれました」


 全員が静かにティアの言葉に耳を傾けていた。


「私は今日、エクソシストとしてこれからもデビルと闘うことを誓いました。皆さんはどうか分かりません。でも、今日だけは皆さんもエクソシストだったんです。この世界のエクソシストの皆さん! 本当にありがとうございました!」


 ティアが頭を下げると、割れんばかりの歓声が響き渡った。

 人々の歓声を聞き、ティアの頬に涙が流れた。

 冒険者達の心を動かし、強大なデビルとの戦いはこれで幕を閉じた。



 一人の少女が大聖堂の女神像の前に立っていた。

 金髪の縦ロールの髪をした少女はくるりと振り返ると小さく微笑んだ。

 そうして、近くにいる冒険者に話しかけた。


「失礼します。あの、加護が七星って言われたのですけど、どんな効果があるのでしょうか?」


 その声を聞いた冒険者たちはこぞって、少女に語りかけた。

 皆から自分と冒険しないかと誘われ困り顔を見せていた少女だが、その笑みには僅かな冷たさがあった。

 それに気づく者はおらず、少女は目を閉じて微かな声で呟いた。

 

「どう遊ぼうかしら……」


 そして、女神のような微笑みを浮かべ、くすりと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ