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 最初に必殺技を放ったのは、遠距離攻撃を得意とするジョブからであった。

 天から降り注ぐ隕石や、眩い雷、純白の光線がヘルダインに襲い掛かった。


「次は俺達だ。銀弾装填、シルヴァ・ノヴァ!」


 ハクトの攻撃を皮切りに中距離を主体とするジョブの必殺技が炸裂した。

 先ほどの必殺技の衝撃に負けない力強さの攻撃が繰り広げられる。

 

「締めはわいらやで!」


 最後は近接主体のジョブの一斉攻撃だ。

 強烈な必殺技が連続で繰り出され、その全てをヘルダインは一身に受け続けた。

 五十四名の必殺技を受けたヘルダインは、その巨体の膝をついた。


「今がチャンスです」


 ソウイチの指示が飛んだ。

 必殺技程の火力はないまでも、全員が持ちうる限りのスキルを使った。

 ヘルダインにどれほど効いているのか分からないが、確実にダメージは入っているはずだ。


 打てる限りのスキルを放った者達からデビル用の戦闘態勢へと移行した。

 デビルとの戦いは通常の戦闘と少し違う。

 モンスターの多くはタンクがヘイトを取ることで、攻撃を集中させることができる。


 だが、デビルはヘイトを無視した行動も取る。

 そのため、回復の要であるヒーラーをタンクがかばう様に動き、アタッカーが隙を見て攻撃を加えるのだ。

 デビル用の編成で戦いを始めた、その刹那、ヘルダインが咆哮を上げた。


 それと同時に、天を焼き尽くさんばかりの炎と、その衝撃を伝える熱波が襲い掛かった。

 炎に巻き込まれた者達が一斉に光へと変わり、天へと昇って行った。

 そして、熱波にさらされたティア達は司令部ごと吹き飛ばされる。


 そこら中が焦土と化した。

 炎を避けることができた者達もかなりのダメージを負っているようだ。

 ティアも肌が焦げそうな熱に晒され、ダメージを負ってしまった。


「舐めるなよ、冒険者!」


 ヘルダインが吠えるのに合わせて、あちらこちらで火柱が上がった。

 生き残りはどれだけいるのか。それを確認する間もなく、地面を踏みつけて炎と熱波は放った。

 残った者達は防戦一方になってしまった。


 なんとか立て直しを図ろうとしているが、ヘルダインの容赦のない攻撃が続く。

 崩壊した司令部からカゲツが出てきた。


「これほどとはね。ちょっと、見込みが甘かったかも」


「どうしましょう? 私達も――」


「あそこに僕らが入っても邪魔になるだけさ。彼ら、エクソシストを信じるしかないよ」


 ティアは悔しさで目を逸らしそうになった。

 いや、心で負けてどうする。視線を前に向け、ヘルダインをにらみつけた。



「ハクトぉ~。無事か~?」


 建物に叩きつけられているケーゴが絞り出すように声を出した。

 

「ああ、なんとかな……。余裕はないが」


 ハクトはゆっくりと立ち上がると、味方の状況の把握に努めた。

 ヘルダインの攻撃はまともに食らえば、一撃で神殿送りなことが分かった。

 となると、距離を維持しつつ戦うか。


 戦い方を思案している間にも、天に昇っていく光が出てしまった。

 銀の血盟を中心としたエクソシスト部隊が、こうも簡単に崩されてしまうとは。

 冒険者は死んでも、神殿で復活できるが、ここに辿り着くころには戦いは終わっているだろう。


 なんとか、ここでヘルダインを始末する。

 次の機会は訪れないと考えた方が良い。ならば、自分にできることは。


「ケーゴ、魔眼の出力を上げる」


「そうやな。ほなら、わいもギアを上げなな」


 ハクトは眼鏡を取ると、右目に力を集中させる。

 すると、照準のようになっていた瞳が短針と長針の時計の形に変わった。


「止まれっ!」


 ハクトの目の長針が反時計回りを始めた。

 それと同時にヘルダインに動きがあった。

 大地を踏みしめようと宙に足を上げた体勢で止まったのだ。


「攻撃を続けろ!]


 ハクトが大声で指示を出した。

 今、ヘルダインはハクトの魔眼の力で動きを制限されている。

 デビルの核を見透かすために使っている力とは別の能力だ。


 この力を使うのは久しぶりだ。

 これを使用すると、目が熱を持ち、痛み始める。それも敵が強ければ強いほど、熱と痛みは強まる。

 今も痛みで目を閉じたくなるが、そうしてしまえば動きを止めていられなくなる。


 困惑しているヘルダインに今のうちにダメージを与えなければ。

 まだヘルダインの核は露出していない。腹部に核があるのは分かっているが、そこを貫通するほどの力を持っているものはいないだろう。

 せめて、核を直接叩ける状態にしなければ。


 五秒、十秒、十五秒。

 ハクトが必死に稼げた時間は十五秒だけであった。

 ヘルダインを縛っていた力がなくなったのだ。


「こしゃくな―!」


 再び発せられる炎と熱風の奔流。

 戦いを仕掛けていたものの大半が光へと変わった。

 ハクトもその衝撃で地面を転がった。


 もう満身創痍だ。だが、時間は稼いだぞ。ケーゴ。

 なんとか開くことができた左目がとらえたのは、右腕が地面に着くほど長く、巨木のように太くなったケーゴの姿であった。

 

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