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 選挙でティアが勝利した翌日、早速冒険者連合に参加を表明したギルドのマスター達を集結させた。

 選挙会場でも利用した講堂には人で溢れえっていた。ガヤガヤと騒がしい中、壇上に上がったティアがマイクを手にした。


「今日は集まってくださり、ありがとうございます。改めて自己紹介をします。ティアです。よろしくお願いします」


 深く頭を下げると、拍手が鳴り響いた。


「早速ですが、冒険者連合の共通の目標の認識を合わせたいと思います。敵は悪魔四大貴族の一人、ヘルダインとその部下のデビルです。数は二千はくだらないとのことです。ここからは、私が選出した人事を発表したいと思います」


 皆が気にしていることなのか、ギルドマスター達がざわついている。

 この人事については、スプーキーのギルドマスターのカゲツが決めてくれたので、それを読み上げあることとする。


「まず、軍事を統括する幕僚長はスノーフレークのアンネマリーさん。次にデビル対策の顧問として銀の血盟のソウイチさん。軍事アドバイザーとしてスプーキーのカゲツさん。この三名を中心に冒険者連合の分担を決めたいと思います。グループ分けの詳細は後程、ご連絡しますので、グループ分けが決まりましたら指定したポイントで軍事演習を行ってください」


 ここまでは予定通りだ。三名が壇上に登って、自己紹介をしていく。

 そうしていると、一人から野次のような声が聞こえた。


「スプーキーってのは何者だ? そんな奴にアドバイスを求めて良いのか?」


 その反発は予想していた。

 ここからはカゲツの出番だ。


「やあ、どうもどうも。スプーキーのカゲツです。今回の軍事アドバイザーとして就任したんだけど、色々と気になることはあるだろうね。これについてはギルドというより、僕個人の問題なんだけどね。スノーフレークのサブマスを担当していたことが関係しているんだよ。ね、アンネちゃん?」


 言われたアンネマリーは目を閉じて、軽くため息を吐いた。


「そうだ。こいつはスノーフレークで軍事顧問を担当していた時期がある。作戦の立案などに詳しいのはもちろんのこと、今ではエクソシストを擁するギルドのマスターだ。どちらとも経験のあるこいつがアドバイザーとしては妥当だと思う」


 少し不機嫌そうに言ったアンネマリーがマイクをカゲツに渡した。

 言われたカゲツはいつも通りヘラヘラと笑っている。


「まあ、頼りないって思う人もいるだろうけど、何かがあったら僕のせいにできるからさ。そこは勘弁してほしいなぁ」


 野次を飛ばした者はそれで納得したのか、黙り込んだ。

 誰も責任を負いたくはないのだろう。それ以上は誰も何も言わなかった。

 マイクはティアに渡った。


「私達で各ギルドの編成を考えます。わだかまりや不信感などは、一度置いて皆で協力して戦いましょう。私達の愛するゲームの世界を守るために」


 そういって、冒険者連合の集会を終了させた。



 ティア、アンネマリー、ソウイチ、カゲツの四人はスノーフレークのギルドハウスの一室にいた。

 ここからどうするかの話し合いをするためだ。

 最初に口を開けたのはアンネマリーだった。


「部隊の選定は任せてほしい。有力なギルドには目星がついている」


「アンネちゃんのスノーフレーク傘下のギルドは練度が高いから、そこは一緒にした方が良いかもね」


「言われなくとも、そうする」


 ここの二人の会話はピリピリしているので、聞いていてハラハラする。

 昔、カゲツはスノーフレークでサブマスをしていたと聞いたのは昨日だ。

 色々とギルド運営の方針に差ができてしまい、脱退したと言っていた。今の関係性は良好そうではない。


「対デビルについては、私達のギルドのメンバーをそれぞれの部隊に派遣する形で大丈夫でしょうか?」


 発言したのソウイチであった。

 銀の血盟はデビル討伐を目標に掲げているエクソシスト専門のギルドだ。

 今の発言には、カゲツもアンネマリーも黙って頷いた。


「今回のデビルはヘルダインの部下とはいえ、今までのデビルの常識と離れているところがある。個々の戦いには教えられますが、統率の取れた軍隊を相手にする方法は、私達には教えられません」


「そこを崩すのが僕の役目だよ。デビルの知能がどこまで高いかは、前に戦ったことで大体のことは分かっている。勢いづかせると厄介だけど、切り崩せば後は通常のデビルとの戦いで大丈夫なはずさ」


「そこはカゲツさんにお任せします。ロイヤル・ブラッドもダークハウンドも不参加とは……重要な戦力になったのでしょうが」


「ま、いないものは仕方がないよ。今はいる人たちだけで戦えるようになろう。さ、ティアちゃんからは何かない?」


 急に話を振られたティアは慌てて考える。

 何かって、何がある。盟主になったからには何かしなくちゃ。


「あの、私は何をしたら良いんでしょうか?」


「ティアちゃんは、後ろでドーンと構えておけば良いよ。部隊の指揮は僕らがやるから、士気を高めるスピーチをよろしくね。あと、勝ったとき用のもよろしく」


 カゲツがウィンクした。

 後ろで構えるか。確かに盟主が倒されたら、士気に関わるかもしれない。

 ここは素直に頷こう。


「分かりました。皆を鼓舞したら良いわけですね。声出しは得意なので任せてください」


「では、今から各部隊の編成を決める。何か意見があれば言ってほしい」


 アンネマリーが言うと、大量の紙が持ち込まれた。

 見るとギルドの詳細が記載されている。この資料を読みながら決めるのか。

 長丁場になりそうだ。



 冒険者連合の訓練は現実の世界で一週間続いた。

 あとどれだけの猶予があるのだろうか。

 部隊として形になってきた。あと、もう少ししたら万全な態勢になるのではないか。


 そう思っていた時、デビルの軍団の出現の一報が入った。

 デビルの次の狙いは自由都市ホランドと思われる地点に集結しているという。

 ついにこの時が来てしまった。


 ティア達はテレポートを使い、自由都市ホランドに近い地点へと降り立った。

 次々と集結する冒険者達。決められた部隊に分かれて、集合場所に向かっていく。

 ティア達は自由都市ホランドの中に入り、住民の避難を行った。


 避難を終えたのち、一番大きな建物を利用して作戦本部とした。

 ここからだ。私達は絶対に負けてはならない戦いに挑もうとしている。

 私達のゲームを守るため、戦って勝利するのだ。敵陣より角笛の音が聞こえた。


 戦いの火ぶたが切って落とされた。

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