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 ミルディン陥落の報告を受け、様々なギルドの支援が始まって二日が経った。

 ギルドハウスを失った冒険者と住む場所のなくなったNPCは誰もが途方に暮れている。

 ティアとミュウは避難民の手当や炊き出しの手伝いをしていた。


 カゲツ達は避難民への支援を募るため様々なギルドに声を掛けてくるということで、避難所から離れてしまった。

 自由都市はゲームで拠点となるような場所とは違い、魔法障壁がないためモンスターに襲われる危険はあった。

 都市を守るための自警団も存在はしていたが、今回の件で、その程度では防ぎきれないことが分かった。


 他の自由都市に住む人々はどう思っているのだろうか。

 またあのデビルの大軍が迫ってきたら、今回のようになってしまうのではないだろうか。

 誰もがうつむいている中、少しでも励ましになればと声を掛けて回っているとハクトとケーゴの姿を見つけた。


「ハクトさん、ケーゴさん」


 ティアに声を掛けられた二人は物資の入ったリュックを地面におろした。


「ティアちゃん、大変やったみたいやな。皆、感謝しとったで」


「応援に駆け付けられなくてすまなかった。少しでも支援になればと思って、ここに来たんだが」


 ハクトは辺りを見回して、口を歪ませた。


「思った以上のことがあったんだな」


「はい……。でも、皆、逃げることができて本当に良かったです」


「そうだな。生きてさえいれば、まだなんとかなる。支援の輪も広がりつつあるようだ。問題はデビルの大軍の動向だな」


 それが一番の懸念事項だ。

 自由都市に火を放ち、暴虐の限りを尽くしたデビルの大軍はいつのまにか消えてしまった。

 突然現れて、どこかに去ってしまう。悪夢のような災害だ。


 ハクトが空を見上げたので、ティアも空を見上げる。

 そこにはペガサスに乗った人達が飛んでいく姿があった。


「デビル関係ということで銀の血盟も動いてくれているが、デビルの出現が知れてもどう戦えばいいのか疑問だな」


「冒険者全員で立ち向かうことはできないでしょうか?」


「それができればベストだろう。今、有志でギルドのマスターたちが集まって会談をしているらしい。それ次第だな」


「それを待つしかないんですね」


 歯がゆい思いを胸に、会談の行く末を案じた。



 ギルドマスターの会談の結果、いったん、話をギルドに持ち帰ることが決まったとの報告がシャウトで通知された。

 避難民への支援がひと段落着いたティア達も、ギルドハウスに戻って会議をすることにした。

 ギルドハウスにはカーミラが一人残っていた。


 そこにティアとハクト、ケーゴ、ミュウ、モカが揃った。

 ここに揃ったメンバーで今後のことを決めないといけない。

 口火を切ったのはカーミラであった。


「ギルマスからスプーキーはデビルの大軍との戦いに参加する意思を表明して良いって言われているわ。あなたたちはどう思う?」


 カーミラの視線が全員の意思を確認するために向いた。

 ギルドメンバー全員、その視線に対して頷いた。全員で戦う意思が決まった。


「皆の意思は分かった。おおむね、どこのギルドも参戦する意思はあるみたい。でも、大きな問題があるの」


「問題ですか?」


「そう。大規模なギルド連合が設立されれば、誰かがそれをまとめる必要があるわ。問題は誰が、盟主となるかよ」


「ん~、盟主ですか。大きなギルドっていうとスノーフレークだと思うので、アンネマリーさんが良いのでは?」


 ティアは思いついた人物の名を上げたが、カーミラは残念そうに首を横に振った。


「スノーフレークは傘下のギルドを含めれば多くの冒険者が集まるわ。でも、それをよく思っていないギルドも多いの」


「何か悪いことがあるんですか?」


「以前、ティアちゃんが参加したパーティーでの対抗試合があったでしょ。あのとき、スノーフレークは傘下のギルドから勝ちを譲ったりしていたわよね?」


 確かに、スノーフレークが予選で戦った相手に勝ちを譲られたことはあった。


「スノーフレークは身内で固めて、大会などで優勝したりすることが多くあるの。そういうのには根深い不信感を持つ人がいるのよ」


「確かに、あまり良いことではないと思いますが……。でも、今は皆の危機じゃないですか?」


「誰もがティアちゃんみたいに純粋じゃないわ。妬みが邪魔をすることは往々にしてあるものよ」


「じゃあ、他のギルドマスターなら? ロイヤル・ブラッドのヨハンさんとか?」


 最強の集まるギルドのマスターならば、多くの人たちが賛同するのではないだろうか。

 だが、これにもカーミラは首を振った。


「ロイヤル・ブラッドは不参加を真っ先に表明したわ」


「そんな……」


「だから、まとめあげる人が欠けている状態なの。誰もが認める相手って、そうはいないでしょうね」


 カーミラの言う通りだ。誰もが認めるような人など存在するのだろうか。

 有力なギルドのマスターでも、そうそうそんな人はいないだろう。

 戦える人が集まっても、それだけであの軍勢に勝てるかどうか。


 そのとき、ピロンと音がなった。

 ステータス画面のチャット欄を見ると、デビルの軍団を発見した報告があった。


「全員、行けるか?」


 ギルドメンバーが全員頷くと、カーミラを残してギルドハウスを後にした。

 デビルの軍団の出現場所に近い街へテレポートすると、大勢の冒険者でごった返していた。

 発見ポイントまでそれぞれがマウントユニットに乗って駆け出した。


 これだけの数がいれば。そう思わせるほどの冒険者の数であった。

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