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「カゲツさん!」


 ティアは思わず声を上げてしまった。

 人探しの際に協力してくれた、カゲツ、トーカ、ハルアキがここにいる。

 それが嬉しく、パッと笑みを浮かべた。


「ティアちゃん、久しぶり。おじさんのこと、覚えてくれていて嬉しいよ」


「ティアじゃない。あなたも、このイベントに参加していたのね」


「ちぃっす。お久しぶりです」


 三人とも覚えていてくれた。あのとき一緒に戦った人たちとまた出会えるなんて。


「三人とも、お久しぶりです。こんなところで出会えるなんて」


「偶然ってすごいよねぇ。次に会ったら運命だね」


「適当なこと言ってんじゃないわよ。ティアは一人で参加していたの」


 カゲツの言葉をバッサリと切ったトーカが聞いてきた。


「ううん、本当は三人で参加していたんだけど、逸れちゃって」


「そういうことなの。なら、私達と組まない? タンクはハルアキだし、ヒーラーならカゲツがいるからね」


 思ってもいないお誘いであった。パーティーのバランスも良い。

 見知った人同士で組めるなら、それが良いに違いない。


「よければ、ぜひ」


「よし。てことで、ハルアキはジャンジャン、ヘイトを取ってきて。私とティアが片っ端から倒していくから」


「えっ? いや、そこまで私強くないし」


「被弾したなら、カゲツが回復するから大丈夫よ」


 随分とこき使われているように思えたカゲツだが、本人は満足そうな表情だったので、これでよいのだろう。


「それなら、大丈夫。頑張る」


 四人でパーティーを組んでモンスターを討伐していく。

 ダンジョンでの戦いとはまた違う戦いに心躍るティアであった。



 夕暮れを迎えたところで、戦闘は散発的になった。モンスターが後退し始めたのだ。

 ティアはカゲツ達と最後まで戦場で戦い抜いたので、もうヘトヘトであった。


「ティアちゃん、お疲れ様。最後まで大変だったね」


 ボトル入りの水を差しだしてくれたのはカゲツであった。

 それを受け取り、一口飲んだティアは笑みを浮かべて返す。

 

「まさか、一日中、戦うことになるとは思いませんでしたよ」


「夢中になると止めどきを見失っちゃうよね。でも、経験値結構稼げたでしょ?」


 あっ、とティアは言うと、ステータスを表示させた。

 そこにはレベルが50とあった。一日頑張って2レベルも上がるのか。

 それにゴールドも増えており、アイテム欄を見ると色々なアイテムが入っていた。


「すごいです。一日でこんなに稼げちゃうなんて」


「開催期間はそんなに長くないから、参加できる日も限られちゃうかもだけど。貰える物も多いから頑張っていて損はないよ」


「本当ですね。カゲツさんは明日も参加するんですか?」


「うん。もうちょっとでトーカちゃんとハルアキくんがレベルカンストするからね。それまで頑張りたいかな」


 カゲツが少し離れた場所で休んでいる二人を見て言った。


「カゲツさん、優しいんですね」


「急に褒められると、おじさんビックリしちゃうよ。二人とも頑張り屋さんだからついつい助けたくなっちゃうよね」


「そうなんですね。なかなかできないことだと思います」


「ありがとう。ティアちゃんも頑張ってるから、色々な人と繋がりできてるんじゃない?」


 そういわれて気づいた。ハクトとケーゴのことを忘れていた。

 終わったら合流する予定にしていたから、集結ポイントに行かなければ。


「カゲツさん、私もう行かないと。今日は本当にありがとうございました。あの、よければフレンド登録してもらえませんか?」


「もちろんさ。あの二人も一緒に登録しよう。おーい、トーカちゃん、ハルアキくん、ちょっと来て―」


 二人に来てもらい、それぞれとフレンド登録を交わした。

 フレンドが増えるたびに、楽しさが増えていくように感じたティアは、名残惜しさを感じながら別れを告げて集結ポイントへと向かった。



 ティアはイライジャの北壁の入り、地図を片手にピン止めされた地点まで彷徨いながら歩いていた。

 こっちの方角であっているはずだが、自信がない。なにせ方向音痴なのだから。

 着実に終結ポイントに近づいていると、そこかしこでキャンプの火が灯されていた。


 幻想的な風景を眺めながらティアは歩いていると、ハクトとケーゴの姿を見つけた。


「ハクトさん、ケーゴさん」


 そういうと、二人はティアに気づいたようで、こちらに駆け寄ってきた。


「ティアちゃん、迷わへんかったか? 方向音痴やったの忘れとったわ」


「まさか一日、戦い続けるとは思ってなかった。疲れただろう。キャンプで休もう」


 ハクトとケーゴに促されて、大きなテントが張られているキャンプ地に到着した。

 そこには、シゲンとアパッチが料理をしている姿があった。


「シゲンさん、アパッチさん。こんばんは」


「おう。邪魔してるぜ」


「姉さん、こんばんわです」


 二人が作っている料理の匂いがとても香ばしく、食欲をそそられるものであった。


「お二人は料理得意なんですね」


「まあな。キャンプでまずい飯食いたくないからな。なぁ、アパッチ?」


「です。せっかくだから姉さんのために、ヴェア族秘伝のスパイスを使いますよ」


 料理の匂いがさらに香しいものへと変わった。正直、お腹が鳴ってしまいそうだった。

 各々が座ると料理が並べられる。いただきます、と言って食事を始めた。

 夜空の下で食べる食事の美味しさに酔いしれ、今日あった出来事を思い出した。


 再び出会えた、カゲツ、トーカ、ハルアキ。普段では体験できない大規模戦闘。

 このゲームで何度心を踊らされたことであろう。

 このような思いがあと何度あるのだろうか。楽しみでならない。


 談笑は夜中まで続いた。

 


 テントで一夜を明かしたティアは起き上がると、ドッと疲れに襲われた。

 昨日、頑張りすぎたせいだろう。一日中、戦っていたらこうもなるのだ。

 テントから外に出ると、ハクトとケーゴが朝食の準備をしていた。


「ハクトさん、ケーゴさん、おはようございます」


「ティアちゃん、おはよう。早速やけど、今日は観戦にせぇへんか? 昨日、一日中戦い続けて疲れたやろ」


「実はちょっと疲れてるので助かります。観戦って何を見るんですか?」


「スノーフレークとその傘下ギルドの戦いや。ワイらが経験した乱戦とはまた違うものが見れるで?」


「そうなんですか? 見てみたいです」


 ティアが賛同すると、ハクトも頷いた。


「滅多に見れるものではないからな。楽しみにしていると良い」


「はい。ありがとうございます」


 アンネマリーが率いるスノーフレーク。傘下のギルドを含めると千名を超える規模と聞いている。

 どのような戦いが見れるのか楽しみであった。

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