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 自由都市を成立させるにはギルドハウスがなければ話にならない。

 ギルドハウスを建設するための資材集めをしているシゲンにミフユから色々と注文をしていた。

 その間、ハクトとケーゴ、コテツとテトラ、そしてティアはある森林へと来ていた。


「ティアちゃん、こっちにもあるで」


「ありがとうございます。こっちにもありました」


「探せば見つかるもんなんやな」


 ティアとケーゴが土を掘って、ある植物を優しく手に取った。

 空気を洗浄してくれる草木があることをミフユから聞き、それを探しに来たのだ。


「ティアちゃんも考えたもんやな。匂いがきついなら消せばええなんて、逆転の発想や」


「ありがとうございます。上手く行くといいですね」


「せやな。エルフとドワーフの集う自由都市ができたら、きっと賑わうで」


「そうしたら、マハトリクの人達も仕事ができるってことですもんね! 頑張らなきゃ」


 ティアはフンッと鼻息を鳴らして再び植物探しに奔走した。



 シゲン達が運び込んだ資材を元に木工師達が木を加工し、大工が建物を組み上げていく。

 その様子をティアは見ていると、コテツも様子を見に来たようでティアに並んだ。


「すごいもんじゃな」


「ですね。シゲンさんが急ピッチで進めてくれているようで、マハトリクの人達の家もこの調子なら早くできそうですね」


「ティアよ。本当に感謝しておるぞ。ここまでやってくれるとは思ってもおらんかった」


 ぺこりと頭を下げたコテツを見て、ティアは少し面はゆい気になった。

 成り行きとはいえ、マハトリクの人々と生活した日々は覚えている。

 みんな大変な中、支え合って暮らしていたのだ。その姿を見たからなのか助けたいと思ったのだ。


「そういえばコテツさん達のギルド名って決まったんですか?」


「おお! それに関してはミフユが提案してくれてな。『プラネテス』という名前にしたのじゃよ」


「プラネテス?」


「昔の言葉で惑う人々と言うらしい。バラバラなわしらにはちょうどいいと思ってな」


 そういうとコテツはガハハと笑った。確かにコテツとミフユ、テトラは別々のゲームの楽しみ方をしている。

 それを考えると、いい名前なのかもしれない。


「プラネテス、良いギルドになると良いですね」


「まあ、そこはボチボチやっていくわい。今は自由都市を上手くいかせることじゃな」


「そうですね。きっと上手く行きますよ。皆、頑張ってくれてますし」


 プラネテスのギルドハウスとマハトリクの人々の家ができあがったのは、それからしばらくしてからだった。



 エルフ族とドワーフ族の族長達が会合する日が来た。

 何とか説得をして会談の場を設けることができた。あとはこれが上手くいくことを祈るばかりだ。

 会合場所に先に来たのはエルフの族長であった。それから遅れて、ドワーフの族長が入ってきた。


 どちらも敵意というよりは苦手意識のようなものを持っているように思える。

 二人とも椅子に座って向き合ったとき、エルフの族長がスンスンと鼻を鳴らした。


「臭いがない?」


 続けて、ドワーフの族長も匂いを嗅ぎ始めた。こちらも匂いがないことに気づいたのか、不思議そうな表情を浮かべた。


「これは一体?」


 エルフの族長がティアに質問を投げかけた。


「実はこの家、それと他の家もですけど、建物の建材に使用した材料に消臭効果があるものを使っているんです。あと、そこかしこにある観葉植物も空気の清浄効果を持ってます」


「なるほど。匂いを消したと言うことか」


「そうです。お互い匂いが苦手なら消してしまえって事です」


 ティアはミフユからの提案を思い出した。呼吸する木や植物があるという話を聞いて、建物の材料や観葉植物に使用することを考えたのだ。

 それが上手くいったようで、どちらも匂いを気にしている様子はなかった。


「お互いの匂いがなければ、わだかまりも取れたと思います。確かにお互いの居住地に行くのは難しいと思いますが、ここでだけでも交流の場にしませんか?」


 ティアの問いかけに頷いたのはドワーフの族長であった。


「たしかにのぉ。エルフの匂いは苦手じゃが、それがせんなら話は違うのぉ。わしらは採掘など危険な仕事もしておる。エルフの持つ薬を提供してもらえると助かる」


「それについてはこちらも同じ考えだ。ドワーフの作る刃物などは一般で手に入るものとは比べ物にならない。交流の機会、前向きに検討させていただこう」


 両者の言葉を受けて、ティアは頭をさげて、コテツとハイタッチをした。

 両者にまだ苦手意識があるとは思うが、この場だけでも仲良くなってくれたら嬉しい。

 自由都市の成立の第一歩は上々の滑り出しであった。



 エルフとドワーフの会談が終わり、それぞれの物資の流通が始まった。

 その話を最初に聞きつけたのは、ヴェア族であった。アパッチが同族の商人たちに話をしたのだ。

 なかなか手に入らない物資が市場に流れてきたのだ。今が商機とばかりに人々が集まってきた。


 その流れを聞きつけてか、ギルドハウスを建てるギルドも少しずつ増えてきた。

 マハトリクの人々も商売や宿屋、酒場の経営などを始めて自分達で生活の基盤を築いている。

 ここまで行けば、ここは立派な自由都市になるだろう。一安心していると、ハクトがティアの横に並んだ。


「まさか、ここまでに成長するとはな」


「皆さんのおかげです。こうやって街を築けて本当に良かったです」


「そうだな。少し寄り道になってしまったが、こういう寄り道もいいものだな」


 確かにまだメインストーリーを進めていなかった。これからまたまだやることはあるので、このゲームで飽きる時間は無さそうだ。

 これから起きるであろう楽しい出来事に胸を踊らせ、ティアは満面の笑みで頷いた。

  

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