71
ティアたちはアルディスの屋敷に集まると、先程ハクトと交わした話を全員にした。
腕組みをしたケーゴが最初に口を開いた。
「ええ案ではあると思うんやけど、ちょいと厳しいかもやな」
「え?」
困惑するティアにケーゴが説明する。
「自由都市は冒険者のギルドハウスがあることが最低条件や。そこにNPCが集まってきて、人が産む金を目当てに、また冒険者がギルドハウス建てる。そしたら、またNPCが増えて、てな感じや」
ケーゴの話が理解できたティアは小さく頷いた。
それを見たケーゴは話を続ける。
「ギルドハウスを建てても、金が生まれなければ次の冒険者は来んで。NPCの産む金より冒険者が産む金の方が圧倒的に多いしな。金を産む何かがないとなかなか人集めは上手くいかん」
「そうなんですね……。ギルドハウスを建ててくれる人を募集してみてはどうでしょうか?」
「それも1つの手ではあるんやけどな。立地条件のいい所には、もう自由都市があることが多い」
「うーん……」
唸り声を上げるティアを見て、コテツが膝を叩いた。
「ワシがギルドを作って、ギルドハウスを建てる。それでどうじゃ?」
「コテツさんの案は、まあ悪くないで。ただ、それでも問題はある」
「なんじゃ? 問題とは?」
「ギルド設立には、三名のギルメンが必要なんや。あと、ギルドハウスを建てるには結構な金額が掛かる。そこをクリアができてスタートラインや」
「むう……」
コテツが腕組みをして悩ましい表情になった。
ギルドの設立は三名いないとダメ。それにお金もないとギルドハウスを建てられない。
どうしたら良いものか。悩んでいると、ミフユが手をすっと上げた。
「ギルドの設立なら手伝えるよ。私、フリーだし」
「ほんと? ありがとう、ミフユ。でも、あと1人必要だよね……」
「それなら、そこにいるじゃん」
ミフユの視線の先にはテトラがいた。
「え? もしかして、僕?」
笑みを浮かべたミフユが頷いた。
「テトラくんもフリーでしょ? ちょうどいいじゃん。人助けと思ってさ」
「たしかにフリーだけどさ……」
言い淀んでいるテトラに全員の視線が集まる。
無理強いはダメだと言おうとしたとき、テトラが先に口を開いた。
「ただのメンバーなら……いいよ」
「テトラくん、ありがとう!」
「ただのメンバーだからね?」
「うんうん! それでも、ありがとう!」
テトラの了承でギルドの設立の目処が立った。
あとはギルドハウスを建てるためのお金だ。
「あとはお金ですよね……」
「それならば、私達で用立てることができそうだ」
声を発したのはアルディスであった。
「マハトリク王国の宝物庫などもギガントワームに吸われているはずだ。探せば財宝があるし、売り物になる不思議な道具もあるだろう」
「良いんですか? 皆さんの物なのに」
「我々の為にしていただいているのだ。この程度は力を貸させて欲しい」
「ありがとうございます! ケーゴさん、これで大丈夫ですよね?」
期待の籠った目でケーゴ見るティア。
ケーゴ少し悩んだ顔をし、小さく頷いた。
「あとは場所やな。どこかええ所があればええんやけどな」
「そういう話なら、シゲンさんに聞いてみたらどうだ?」
「ナイスや、ハクト。皆、ちょっと待っててな。事情を話してくるわ」
シゲンはポーターを生業としているギルドに所属している。
色々な所を旅しているから、そういったことに詳しいかもしれない。
通信を始めたケーゴを祈るような気持ちで見つめた。
◇
通信を終えたケーゴは上機嫌であった。
「シゲンさんに心当たりをあたってみるって話や」
「じゃあ、それまではギルドの設立とギルドハウスの建設のための宝探しですね」
「せやな。ギルドハウス建設のための資材運びはシゲンさん達がやってくれるそうやから、先に財宝探しと行こか」
「はい! アルディスさん、どこを探したらいいでしょうか?」
「王国の地図に宝物庫のあった場所が記されている。全員で手分けして探そう」
アルディスはそう言うと、屋敷にいるもの達に指示を始めた。
◇
王国の宝物庫にあたる場所に行くと、建物ごと吸われたのだろうか門が閉まったままであった。
その門を前にしたアルディスは手をかざす。すると、ゴゴゴという音と共に門が開いた。
「王族の血を引くものにしか宝物庫は開けられない作りになっていてな。さぁ、中を確認しよう」
宝物庫の中には、金色に輝く財宝で満たされていた。
歴史的価値のありそうな物も大量にあった。これだけあれば、ギルドハウスの作製だけでなく、皆の家まで建てられそうだ。
アルディスが指示をし、宝物庫から宝が運び出されていく。
金銀財宝は売却する意思があるとのことで、ケーゴ達が商人ギルドに声を掛けることになった。
魔法の効力を持つ道具については、売却はまだしないということだ。
商人ギルドとの商談が上手く行くことを祈り、ティアも財宝の持ち運びを行った。
◇
商人ギルドのギルマスとケーゴが商談を行っていた。
「そんな安い価格じゃあかんわ。もっと勉強が必要なんやないか?」
「ケーゴさん、そう言われましても」
「ここには、歴史的な遺物がぎょうさんあるんや。時間が経てばたつほど、価値が上がっていくで?」
「ぐぬぬ……」
ケーゴは交渉が得意そうだ。こちらはケーゴに任せていいだろう。
シゲンから連絡を受けたハクトは、地図を広げて自由都市を作るに適した場所の話を詰めていた。
そこは深い森と峻厳や山々の合間にある、なだらかな平原であった。
住みやすそう。という印象があるが、何故、ここには自由都市ができていないのか。
少し気になったティアはハクトに問いかけた。
「ハクトさん、ここの近くに自由都市はないんですか?」
「ないようだな。他の街からも離れているからあってもよさそうだが」
「そうですよね。なんでだろう……」
二人して悩んでいると、遠くからティア達に呼びかける声が聞こえた。
声の方向を見ると、シゲンとアパッチが近づいてきていた。
「シゲンさん、アパッチさん」
「よう、ティアちゃん。ハクトも元気そうだな」
「姉さん、お久しぶりです」
シゲンとアパッチの挨拶も早々に、ティアは何故、ここがシゲンのおすすめの場所なのかを聞く。
「シゲンさん、ここが自由都市に向いているって何かあるんですか?」
「ここはな、ドワーフとエルフ、アパッチ達のようなヴェア族が活発に動いている所の近くなんだ」
「え? それって、すごくないですか? 三種族が交わっているなんて」
「ティアちゃん、そこなんだぜ。ヴェア族は良いとして、エルフとドワーフがいがみ合っているため、二つの種族は近づかないんだ」
エルフとドワーフの間で何かあるのだろうか。
三種族が交じり合えばそれだけ人は増えるし、人が増えればギルドハウスを作ってくれるギルドが出てくるかもしれない。
いがみ合っている二種族をなんとかできないものか。
「エルフとドワーフって、なんで仲が悪いんですか?」
「なんでかは俺も分からん。そういう設定と言っちまえばそこまでだがな。そこを解決したら、自由都市としての魅力が出てくるぜ」
「人が増えるからですよね!」
鼻息荒く言ったティアに、シゲンは指を振ってチッチッチと言った。
「ドワーフ族の錬成技術は冒険者よりも高いし、エルフは独自の薬を作れたりするんだよ。それらが集まったら、間違いなく冒険者が集まるぜ」
「ということは、それができなかったら?」
「人は集まらんだろうな」
カッカッカッと笑ったシゲンをティアは湿った視線で見ていた。
確かに、両者を和解させることができれば、見返りは大きい。
「ティア、やってみたらどうだろう」
ハクトが言った。
「これ以上、自由都市に適した土地は少ないだろうし、エルフとドワーフを和解させるのもクエストの一つと考えたら、やりがいもあるんじゃないか?」
確かにハクトの言うことも一理ある。上手く行けば、それだけリターンが大きいのだ。
やってみる価値はあるに違いない。
「やりましょう。ハクトさん、シゲンさん。新しいクエストですね」




