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 テトラの口から出た『ダークハウンド』という言葉にティアは覚えがあった。

 前にミフユに教えてもらった、有名なギルドの一つだ。

 幻獣狩りをメインとしているギルドと聞いている。


 テトラが言わんとしていることが分かったティアは表情を明るくした。


「そっか! 『ダークハウンド』の人に頼めば、倒してくれるってことだね?」


 確信したように言ったティアにテトラは首を縦に振った。


「可能性がある、てだけだよ。まずコンタクトを取らないと話にならない」


「テトラくんのフレンドにはいないの?」


「いないよ。結構、秘密主義なところがあるみたいだから、ギルド名を非表示にしている人もいるみたいだし」


「そんなぁ……」


 ティアはガックリと肩を落とした。


「僕たちの中には『ダークハウンド』の知り合いはいない。けど、もしかしたら」


「もしかしたら?」


「ティアには強いフレンドがいるでしょ?」



「ティアちゃん、状況は飲み込めたんやけどな……」


 ケーゴはティアの置かれた状況を説明されて困惑気味に返した。


(『ダークハウンド』の知り合いはいないでしょうか?)


「すまん。わいのフレンドにはおらんのや。多分、ハクトも同じやと思う」


(そうですか……。なんとかコンタクトを取る方法はないでしょうか?)


 声から分かる困り具合にケーゴは唸り声を上げた。

 『ダークハウンド』はここ二、三年で有名になったギルドだが、加入条件が加護が漆黒というハードルの高さから人数は多くない。

 そのメンバーと接触するのは難しいだろう。


 いや、方法があるではないか。ケーゴは二っと口角を上げた。


「ティアちゃん、あったで方法が」


「えっ! 本当ですか?」


「ま、あまり褒められたやり方やあらへんけどな」



 スプーキーのギルドハウスに集まったのは、ハクトとケーゴ、モカ、カーミラの四人だ。

 ティアから受けた話とケーゴからの提案を聞いたハクトは考え込んだ。

 『ダークハウンド』から接触があるかもしれないが、空振りに終わる可能性も高いからだ。


 しかし、ほかに方法が見つからないのも事実だ。


「ケーゴ、やるしかなさそうだ」


 考えがまとまったハクトが言った。

 ケーゴはその意思を確認できたことで、スタータス画面を表示させた。

 メッセージの対象を『シャウト』に設定した。


『ギガントワーム討伐メンバー募集中。詳細はDMで』


 メッセージを打ち込み、送信した。

 シャウトであればプレイヤー全体に通知することができる。

 今回のようなパーティーメンバー募集の際にも使われるが、ケーゴ達はこの全体に通知するを利用することにしたのだ。


 ギガントワームについて知っている者は少ないだろう。

 接触してくる人間は自ずと限られる。そう、ダークハウンドのような幻獣について知識があるものだ。


 ゴクリと唾を飲みこんだ四人。

 時が歩みを遅くしたのではないかと思われるくらいに、長い沈黙が訪れた。


 それは一分、二分と過ぎていく。

 ケーゴにメッセージが届かないかを祈るが無常にも時間だけが過ぎていく。


「あかんかったか……」


 諦めかけた、その時。

 ピロンとメッセージ着信の音が鳴った。

 送信者の名前は『アドネ』となっている。

 心当たりのない名前だ。ケーゴは逸る気持ちを抑えながら、メッセージを開いた。


『リンデン。X:15.6。Y:11.3』


 これは座標か。

 ケーゴがマップを開き、メッセージに書かれている座標を調べた。


「ケーゴ、なんて書いてあったんだ?」


「ハクト、モカちゃん、行くで」


「ということは?」


「ああ。お会いしてくれるようやで」



 指定された座標はリンデンの代名詞であれ大時計台だ。

 霧の中でも存在感を放つ大時計台の前にハクト達は到着した。

 周囲の様子を伺うが、人影はまばらで近づいてくる者はいなかった。


 ケーゴはステータス画面を表示して、メッセージが来ていないか確認をしている。


「DMを送ってくださった方は『ダークハウンド』の方なのでしょうか?」


 不安げにモカが言った。

 確かにいたずらの可能性もある。座標に来たハクト達を見て笑っている者がいるかもしれない。


「二人とも、次のメッセージが来たで」


「なんて書いてある?」


「時計台の中で待ってくれているらしいで」


「よし行こう」


 ケーゴとモカが頷いたのを見て、ハクトを先頭に時計台の中に入った。

 時計台の中では時計を動かすための機械音が鳴り響く。

 ハクトは付近に人影がないかを探ると、上の階に上るための階段に誰かが座っているのが見えた。


 全身が黒づくめで、顔にマスクつけている。

 表情は伺い知れないが、こちらを値踏みしているような視線を感じた。


「ほう」


 男の声だ。黒づくめの者は男のようだ。

 その声に自然と身構えてしまった。男から感じる。只者ではない気配を。


「金狼に銀狼。なるほどな。与太話を聞かずに済みそうだ」


「わいらのことを知っとるような口ぶりやな?」


 ケーゴも少し警戒しているのか、やや語気が強かった。


「昔の話だ。お前達も、その名を捨てて久しいだろう?」


「捨てた気はあらへんで。試してみるか?」


「おい、ケーゴ」


 たまらずハクトは二人の間に入った。

 ケーゴは顔をしかめ、黒づくめの男はふんっと鼻で笑った。


「すまない。ここには喧嘩をしに来た訳ではない。ギガントワームの討伐に興味があるんだよな?」


「ああ。ギガントワームのことを知っているようだが、どこで知った?」


「その前に確認させてくれ。お前は何者だ?」


 ハクトの問いかけに男が僅かに間を開け、口を開く。


「『ダークハウンド』のマスター。クロウだ」


 釣り上げた獲物はハクト達の予想よりも大きかった。

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