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 巨人はその大きな体を動かし、広場の中央まで進むと首を回して周囲の様子を伺うようなことをしている。


 洞穴から出てきたアムール族は巨人を見て、雄叫びを上げていた。


「ありゃ、あれはちょっとまずいかも」


 そういったのはカゲツであった。


「まずい?」


 トーカが問うと、カゲツがあごのひげを触りながら言う。


「あれって、古代文明が作った機械式のゴーレムなんだよね。高難易度のダンジョンででるボスに似ているけど、そいつは結構強かった」


「そんなヤツがなんでこんな所に出てくるのよ?」


「古代文明の遺産は各地にあるからね。メインクエスト進めたら、そのうち話に出てくるから今は割愛しとくけど、アムール族が起動したとなると」


 二人が喋っていると、アムール族の中で煌びやかな装飾品を身に着けた者がゴーレムの前に立った。

 そのアムール族の手には石板が握られており、それを見ながら不思議な言葉を喋っていた。

 すると、ゴーレムの目が何度か赤と緑に点滅し、最後は緑色になるとゴーレムは片膝を地面につけた。


 アムール族が再び大声を上げた。歓喜の声のように聞こえる。

 それを制するように石板を持ったアムール族が片手を上げた。

 また不思議な言葉を放し始めると、ゴーレムが立ち上がって辺りを見回すように視線を動かした。


 そして、その視線が一人のNPCの前で止まった。

 ゴーレムはその巨体をゆっくりと動かして歩き始めると、そのNPCの前で止まった。


「三人とも行くよ!」


 カゲツが岩陰から突然飛び出した。

 それに突き動かされるようにトーカとハルアキが駆けていく。

 慌ててティアも追いかけた。ゴーレムを見ると、その巨大な腕を振り上げていた。


 まさか、あのNPCを。

 ゴーレムが腕を思い切り振り下ろした。

 最悪な瞬間が訪れる。そう思った。


 だが、違った。

 NPCの少し手前で、ゴーレムの鉄拳が止まっていた。

 よく見れば、NPCとゴーレムの間に一枚のお札のようなものがあった。


 あのお札は一体。


「トーカちゃん、あの人を」


「言われなくても」


 トーカが風をまとう。猛スピードで駆けるとNPCの傍へ一瞬で到達した。

 そのままNPCの体に手を回すと、後ろに放り投げた。

 投げられたNPCをハルアキがキャッチする。


「全員、早く逃げてください!」


 ハルアキが声を上げた。

 その声を聞いたNPC達は我先にと広場を後にしていく。

 残ったのはゴーレムと多数のアムール族。


「なんも考えずに飛び出しちゃったけど、どうしようかなぁ」


 のんびりとした口調でいうカゲツの元へトーカが戻ってきた。


「アムール族なら大したことないけど、問題はゴーレムよね」


「だね。まあ、ここまで来たら倒すしかないか」


「そういうの分かりやすくて好き。じゃあ、ゴーレムはしばらく引き付けるから、サポートよろしく」


「了解~。ハルアキくん、ティアちゃんはアムール族の相手をお願いね」


 カゲツに言われたティアは慌てて細剣を抜いて、ファントムソードを召喚した。

 ハルアキは大剣を構えると柄に付いているエンジンの紐を引っ張った。


「ティアさん、できるだけ俺に敵を近づけてください」


「え? でも」


「フィアーナイトの本領を見せてやります」


 ハルアキの横顔をからは焦りや気負いなどは感じない。

 それならば、言う通りにしよう。ティアはファントムソードを操り、中距離から攻撃を開始した。

 アムール族が一斉に襲い掛かってきた。


「ファントムフェザー」


 操作していないファントムソードを一列に並べると、一斉に放った。

 だが、それでもアムール族の勢いは止まらない。

 ファントムソードを戻している暇はなかった。細剣でアムール族を斬り付ける。


 アムール族の猛攻をしのぎながら戦っていると、ティアの背中にハルアキの背中が当たった。

 追い詰められてしまった。じりじりと距離を縮めてくるアムール族を見たハルアキが言う。


「ティアさん、バッチリっす。行きます」


 スゥッとハルアキは息を吸い込んだ。


「スケアリィロアー!」


 ハルアキの大声が広場に広がった。

 あまりの大きさに耳を覆ってしまうほどであった。

 その声を聞いて反応したのは、ティアだけではなかった。


 アムール族が後ずさりを始めたのだ。

 怯えているのか、その瞳が若干震えているのが見えた。


「ティアさん、今です!」


 ハルアキの言葉でハッとしたティアは、ファントムソードを縦一列に並べた。


「シューティングスター」


 十本のファントムソードに刺しぬかれたアムール族。それを見た別の者達は更に後ろへと下がった。

 後方ではハルアキが大剣を振り回してアムール族を圧倒している。

 その様子にアムール族は恐れをなしたのか、背中を見せて走り去っていった。


「ざっとこんなもんです」


 ハルアキが言った。


「敵が逃げたのって、さっきのスキルのせい?」


「はい。恐怖っていうデバフをばら撒くスキルなんです。恐怖がマックスまで溜まると、さっき見たいに逃げて行ったり弱体化します」


「すごい。そんなスキルがあるなんて」


「あざっす。じゃあ、姉ちゃんの助けに回らないと」


 ティアは首を縦に振ると、ゴーレムに視線を向けた。

 ゴーレムと戦っているトーカの姿があった。まだ無事のようだ。

 急いで援護しなければ。


 ティアとハルアキは同時に駆け出した。


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