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「夫? 旦那さんを探してるんですか?」


 ティアの問いかけに女性はこくりと頷いた。


「夫からいい仕事が見つかったからと聞いて……。でも、仕事に行ってから、もう一か月がたつのですが何の音沙汰もなくて」


 震える声で女性が言う。

 ティアが悩んでいると、中年の男性が女性に問いかけた。


「どういう仕事が見つかったとか聞いてたりは?」


「採掘現場での仕事と言っていました。普段の夫なら手紙の一つも送ってくるとは思うのですが」


「なるほど。それは心配だね」


「お願いします。夫を探してください。冒険者ギルドにクエスト依頼をするお金がなくて……。その……、お願いします」


 女性が必死に頭を下げる。

 気の毒にとしか思えなくなっていた。

 突然パートナーがいなくなったら、誰だって混乱するし、誰かにすがりたくなるだろう。


 冒険者ギルドにクエスト依頼をするためにはアイテムかお金を出さなければならない。

 それに冒険者ギルドの取り分もあるため、依頼するにはそれなりにお金がかかるのだ。

 この女性の身なりから、裕福なイメージは持ちづらい。


 依頼するための資金を持っていないというのは本当のようだ。

 ティアは女性の願いを聞き入れようと口を開いた。


「いいよぉ。その依頼、僕達が受けようじゃないか」


「えっ?」


 男性が軽い口調で受け入れる言葉を発した。

 思わぬことに女性は目を丸くしていた。たぶん、私もそうだ。


「ほ、本当ですか?」


「本当だよ。冗談は言うけど、嘘は吐かないから安心してよ。君も良いよね?」


 男性がティアを見てウィンクした。

 中年男性のウィンクがどうなのかはさて置き、困った人を助けようという心意気を持っている人だということが分かった。

 ティアはしっかりと頷いた。


「はい。旦那さんが見つかるように頑張ります」


「てことで、旦那さん探しは僕らに任せちゃってよ」


 ティア達の言葉を聞いた女性は嬉しさのあまりか嗚咽を漏らした。

 女性を気遣うように男性が優しく言葉をかけていた。



 女性から行方不明になった夫の情報を聞き終えると、女性に家に帰るように伝えた。


 さて、これからどうしたものかと思っていると、男性が笑みを浮かべてこちらを見ていた。


「いやぁ、大変なことになっちゃったねぇ」


「そうですね。あの、何か探す当てとかあるんですか」


「残念ながら。手当たり次第に聞き込みをするしかないだろうね」


「そうなりますよね。二人だと大変ですけど、頑張らないとですね」


「いや、二人じゃないよぉ」


「えっ?」


 ティアが戸惑っていると、「あー!」という声が聞こえた。

 声のした方を見ると、少女と少年の二人組がこちらに向かって歩いて来ていた。

 少女が不満そうな表情を浮かべている。


「ちょっと! どこに行ってたのよ? 探したでしょ?」


 少女は茶色のロングヘア―に勝ち気そうな顔立ちをしていた。

 背中に大きな槍を背負っており、薄い鎧を着ている。


「ごめんごめん。ちょっと人助けをしててね」


「またぁ? ストーリー進めるんじゃなかったの?」


「まあまあ。人助けは回り回って、自分のためになるからさ」


「まったく。で、今度は何を引き受けたの? そっちの人が依頼人?」


 少女はティアを見て言った。


「いえ、私もお願いされた側の立場でして。あ、私、ティアって言います」


「あら。カゲツに巻き込まれた口なのね。私はトーカ。こっちのおじさんがカゲツ。で、後ろにいるのがハルアキよ」


 ハルアキをちらりと見る。こざっぱりとした短髪に、頑丈そうな鎧を着こみ大きな剣を背負っていた。

 トーカが紹介してくれたので、ティアは頭を下げて、もう一度名前を名乗った。


「ティアちゃんかぁ。良い名前だね」


「ちぃす。ハルアキです。トーカ姉ちゃんの弟っす」


 カゲツとハルアキが言うと、トーカが腰に手を当てて言う。


「挨拶は済んだから、さっそく何があったのか話してよ」


 トーカの催促を受けて、カゲツが事の成り行きを伝えた。

 話を終えるとトーカが右手で頭に当ててため息を吐いた。


「当てもないのに、まあ、ほいほい引き受けたものね」


「女性の頼みを断るのは悪い男のすることなんでねぇ。ほら、僕ってジェントルマンだからさ」


「自分で言ったら台無しよ」


 カゲツに向かって、トーカがあれこれと責めているのを聞いていると、ハルアキが声をかけてきた。


「すんません。姉ちゃんがうるさくて」


「あ、大丈夫です。あのハルアキさん?」


「ハルアキでいいっす。姉ちゃんも呼び捨てでいいっすよ」


「ありがとう。二人って、あれが普通なの?」


 カゲツの方が年上のように思えるが。

 ティアの問いかけにハルアキが複雑な表情を浮かべた。


「そっすね。姉ちゃん、物おじしないし、カゲツさんの人が良いからあんな感じっす」


「そうなんだ」


 トーカとカゲツのやり取りをひとしきり見たところで、ティアが「まあまあ」と割って入った。


「これからどうするか考えませんか?」


「それもそうね。引き受けちゃったものは仕方ないし。で、どうすんの?」


 そういったトーカの刺すような視線がカゲツに向いた。

 へらへらとした笑みを浮かべたカゲツが言う。


「そんなの聞き込み以外ないでしょうよ。ささ、トーカちゃんとハルアキくんは、表通りで聞き込みして。僕はティアちゃんと裏の方に行ってくるから」


「仕方ないわねぇ。ハルアキ、行くわよ」


「カゲツさん、ティアさん、行ってきます」


 二人はそのまま通りに戻ると、客の呼び込みをしている商人に聞き込みに行った。


「じゃあ、僕らも行こうか」


 カゲツが言うとティアは頷き、裏路地へと向かった。


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