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 ティアは『スプーキー』のギルドハウスで休息を取っていた。


 つい先ほど、アレルトから『ソニックステップ』を習得した。

 これで更に戦う術を手に入れた。まだまだハクト達にはお世話になるだろうが、少しづつレベルが上がっている。

 早く周りの人達に恩を返せるようになりたい。


 それにはまずストーリーのクリアが先決だろう。

 ヘリオットでのイベントはほとんど終わったので、次の都市に行くことになりそうだ。

 今度はどんな街だろう。思いをはせていると、部屋の奥に繋がるドアが開いた。


 姿を見せたのはカーミラだった。


「カーミラさん、お疲れ様です」


 ティアが挨拶すると、カーミラは眠そうな目を擦りながら応える。


「お疲れ様、ティア。今日はハクト達と一緒じゃないの?」


「ハクトさんとケーゴさんは、今日はインができないそうです。私もさっきまでスキルの習得をしていて、今来たところでした」


「ああ、それは大変だったね。スキルを覚えるのも苦労するものねぇ」


 楽し気な笑みを浮かべたカーミラが言った時、ドアの開く音が聞こえた。

 中に入ってきたのは、革ジャンにジーパンという、いで立ちのワイルドな風貌の男だった。


「よぉ、カーミラ。元気にしてたか?」


 男の呼びかけに、カーミラが渋い顔を見せて返す。


「シゲン。あんた、また来たの? まだ依頼の品はできてないよ」


「何だよ、そろそろかと思って来てみれば。お? 見慣れない顔がいるな」


「例の新人の子よ。挨拶くらいしたら?」


「てことは、ハクト達と一緒に行動しているってのは、お前さんか。俺はシゲンだ。よろしく頼むぜ」


 シゲンが手を上げて軽く挨拶をしたので、ティアは椅子から立ち上がりお辞儀をした。


「ティアです。よろしくお願いします」


「礼儀正しいし、可愛い子じゃねぇか。誰かさんも見習うべきだな」


「皮肉を言いに来たんなら、さっさと帰って」


 冷たい返しをしたカーミラに対し、シゲンは肩をすくめた。


「おー、怖いねぇ。ティアちゃんは、こんな女にならないようにな」


「いちいちうるさい。ほら、用事がないなら帰りなって」


「用事ならあるぜ。ハクトとケーゴに用があったんだが、まだインしてないみたいでな。今日は休みか?」


「みたいよ。残念でした」


 ふふん、とカーミラが笑った。

 シゲンが頭を抱えて唸り声を上げた。


「まいったなぁ。ちょいと今回は厄介な依頼を受けちまったから、手を貸して欲しかったんだがな」


「別日にはできないの?」


「迅速にお届けが、うちのギルドのモットーなのは知ってるだろ? 依頼を受けたからには、遅れるわけにはいかねぇ」


「分かってるけど、ハクトとケーゴに依頼したかったんなら、それなりにヤバい仕事でしょ?」


 腕組みをしたシゲンが返す。


「まあな。シルクスの森を抜けたいんだがな。あいつらに頼めないとなると、せめて高レベルのメンツが3人は必要だな」


「それなら、モカに頼んだら? 今日はインしてるみたいよ」


「それは助かるな。あと2人か。お、ティアちゃん、レベルは?」


 急に話を振られたティアは慌てて答える。


「30です」


「30か。ちょいと厳しいな」


 困り顔を見せたシゲンを見て、ティアは何かできないものかと考え、フレンドリストを表示した。

 見れば、ミフユとテトラがインしていた。

 この二人はレベルカンスト勢だ。お願いしたら来てくれるかもしれない。


「あの、私のフレンドに話をしてみてもいいですか?」


「マジか!? そいつは助かる。カーミラは戦闘嫌いだから来てくれねぇし、フレンドも少ないから役に立たねぇんだよ」


「誰が役に立たないって?」


 カーミラが眉間にしわを寄せていた。

 それを意に介さないように、シゲンは続ける。


「ティアちゃん、早速連絡を頼むぜ」


「はい、分かりました。あの、ちなみに何をしに行くんですか?」


「あ、言ってなかったな。うちはポーターギルドなんだ」


 ティアは分からない言葉に首を傾げた。


「ポーターって、何ですか?」


「荷物を届けるのを主に請け負っているギルドさ。お使いクエストってやったことあるだろ? あれの規模がでかいバージョンだな」


「そうなんですね。荷物を運ぶなら、私もお手伝いできますか?」


「来てくれると助かる。人手は多いに越したことはないからな」


「分かりました。じゃあ、連絡してみますね」


「助かるぜ」


 ティアはフレンドリストからまずはミフユに連絡を入れた。



 『スプーキー』のギルドハウスに集まったのは、ティアとシゲン、ミフユにモカとテトラだ。

 カーミラは仕事があるということで奥に引っ込んでしまった。


「おー。頼もしいメンツじゃねぇか。ティアちゃん、ありがとな」


「いえ、私は声を掛けただけなので。お礼は皆に言ってください」


「おう、そうだな。モカ、ありがとよ。お二人さんもありがとな。急な誘いに乗ってくれてよ」


 シゲンが軽く頭を下げると、それにモカが返す。


「シゲンさん、お久しぶりです。今日はお誘いいただき、ありがとうございます」


「私はミフユ。よく分からないで来たけど、大丈夫だった?」


「右に同じ。ティアの話だと荷物運びがしたいってことらしいけど」


 ミフユとテトラは少し困り顔で言った。

 ティアもシゲンの話をよく分からないまま連絡をしてしまっていた。

 ここで改めて、シゲンに今回の依頼について聞こう。


「あの、シゲンさん、これから私達は何したら良いんでしょうか?」


「ん? ああ、わりぃわりぃ。今回の仕事はリンデンの南方にあるシルクスの森を抜けて、ガルム鉱山に資材や医薬品を届けるんだが――」


「ちょっと良いかな?」


 テトラが小さく手を上げて話を遮った。


「ガルム鉱山って、ちょっと前に落盤事故が起きたって場所の?」


「お、話が早えな。そうだ。大勢の怪我人が出ちまって、医薬品や寝床が不足しているらしい。通常の輸送だと物資が届くまで時間が掛かるだろうからって、俺達に依頼が来たわけだ」


「なるほどね。一刻を争うってことか」


「そういうこった。話してる時間も惜しい。詳しくは道中で話をすっから、さっさと行こうぜ」


 シゲンはそういうと、さっさとドアを開けて外へと出て行った。


「ミフユ、テトラくん、ごめんね」


「大丈夫。人助けだし、初めての機会だから少し楽しみなくらい」


「まあ、今はイベントもないし、たまには良いんじゃないかな」


 笑顔のミフユと、目を逸らしながら言ったテトラを見て、ティアは頭を下げた。


「ありがとう、二人とも。じゃあ、私達も行こうか」


 ティアが言うと、モカとミフユが「おー」と言った。


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