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 ティアが『スプーキー』のギルドメンバーになって一週間がたった。


 ヘリオットでのメインストーリ―もひと段落終え、レベルが30になったこともあり、リンデンのジョブ会館へと来ていた。

 アレルトの部屋に来るのも久しぶりだ。いつも通りマナーに注意しつつ部屋の中に入り、ソファに座る。

 事務仕事を終えたアレルトがティアの向かい側に座った。


「もう、レベル30ですか。早いものですね。どうですか? ファントムソードは扱えるようになってきましたか?」


「はい。3本までは操れるようになりました。4本目で苦戦しています」


 ティアは召喚できるファントムソードの10本のうち、3本は思うように動かせていた。

 ファントムフェンサーの本領はファントムソードを操っての攻撃である。

 シューティング・スターやフェザー・スラッシュのような扱いやすい形でのスキル攻撃だけではない。


 通常の攻撃に合わせて、ファントムソードを操作することで、アタッカーとしての火力を更に出すことができる。

 テクニックが必要なジョブではあるが、使いこなせればかなりのダメージが期待できるのだ。


「4本目からは難易度が一段と上がります。ですが、鍛錬を怠らなければ道は開けるでしょう」


「ありがとうございます。あの、レベル30になったら次のスキルを教えていただけると聞いたのですが?」


「ええ。次は今までのようなファントムソードを扱ってのスキルではありません。まあ、見てもらう方が早いでしょう。早速、修練場へ向かいましょう」


 アレルトに従って、一緒に修練場へと向かう。

 修練場では多くの冒険者が修行に勤しんでいた。

 その中で空いているスペースに行く。


 いつも通りであれば、藁人形に対して攻撃を繰り出していた。

 しかし、今日は違うのかアレルトは藁人形から距離を置いたところに立った。


「ティアさん、今からお見せするのはファントムフェンサーの歩行術である、『ソニックステップ』です」


 アレルトがそういうと、細剣を鞘から抜いて構えを取った。

 歩行術とはなんだろう。期待を抱いて見ていると、アレルトがわずかに動いた。

 その瞬間、藁人形の首筋にアレルトが細剣の切っ先をピタリと当てていた。


「えっ?」


 呆気に取られたティアの元へ、アレルトが細剣を鞘に納めながら歩いてきた。


「今のが『ソニックステップ』です。この歩行術を使えば、ある程度の距離を一気に縮めて攻撃を繰り出せます」


「すごいです! どうやったらできるようになるのでしょうか?」


「しっかり教えるので、安心してください。では、まずは足の運び方から教えしょう」


 アレルトの猛レッスンの始まりであった。



 お昼を迎え、修行もひと段落をついたため休憩となった。


 ティアはミフユに連絡を入れて、リンデンの中央公園で待ち合わせをしていた。

 昼時ということで、多くの人々が公園でくつろいでいる。

 薄くかかった霧の向こうからミフユが姿を見せた。


「お待たせ」


 ミフユは言うと、ティアの座るベンチの隣に座った。


「ううん。急に呼んでごめんね。サンドイッチ買っておいたから、一緒に食べよ」


「ありがとう。いただきます」


 ティアの買ってきたサンドイッチを二人で食べる。

 食事を楽しんでいると、ミフユが話しかけてきた。


「そういえば、ハクトさん達のギルドに入ったんだってね。良かったね」


「うん。モカちゃんもいるし、サブマスのカーミラさんも優しい人で良いところだよ」


 モカのことを、ちゃんづけして呼ぶようになったのは、モカからの要望であった。

 こっそり年齢を聞いたのだが、ティアの一歳下ということが分かったからだ。


「モカちゃんがいたのはビックリだよね。ハクトさん達、強いのに少人数ギルドにいたのにも驚いたけど」


 ミフユが言った。


「そうだね。なにか理由があるのかもだけど、聞くことじゃないかと思ってるんだよね。居心地とかもあるし」


「それはあるかもね。私も昔はギルドに入ってたけど、人間関係が煩わしくなったからフリーになったし」


「人数が多いと大変そうだよね。前に誘われた『スノーフレーク』ってすごく大きなギルドだったらしいから、入ってたら苦労したかもなぁ」


 二人で食事を進めながら会話を交わす。

 水を一口飲んだミフユが言う。


「『スノーフレーク』は超大手だからね。私でも知っているからよっぽどだよ」


「ミフユは、他にどんなギルドを聞いたことがあるの?」


 ティアの問いかけに、ミフユが少し考え込んだ。


「一番先に思いついたのは、最強が集まっているって言われる『ロイヤル・ブラッド』ね。規模は『スノーフレーク』と比べて小さいけど、戦力では拮抗していると聞くよ」


「最強が集まるって、すごいかっこいいね」


「次は、『銀の血盟』かな。ここはデビル専門に戦っているエクソシストの集まりだね。デビルを倒すことでしか手に入らないアイテムを持っているから、戦力もかなりのものって聞くよ」


「『銀の血盟』は知ってる。前に助けにきてくれたもんね」


「うん。デビルで何かがあれば、真っ先に動くのが『銀の血盟』かな」


 エクソシストの集まるギルドにハクト達が所属していないのが、少し気になったがそれについては話すことではないだろう。

 ミフユは会話を続ける。


「あと、ギルドの所属人数は少ないけど、名前をよく聞くのが『ダークハウンド』ね」


「『ダークハウンド』?」


「うん。ちょっと縛りがあるギルドでね。加護が漆黒の人しか入れないの。もちろん、他にも加入するには条件があるけど、加護の時点で弾かれるの」


「え? なんで漆黒じゃないとダメなの?」


「『ダークハウンド』は幻獣狩りを主に行っているギルドなんだけど、漆黒は幻獣に対して強い加護だからって聞いている」


 幻獣といえば、自分に信頼の証をくれたユニコーンを思い出した。

 その幻獣を積極的に狩っているのか。

 確か、幻獣は倒すとレアアイテムを落とすことがあると聞いている。そのレアアイテムが狙いなのだろう。


 しかし、漆黒が幻獣に強いとは。ハクトのデビルに対して強い白銀とはまた違った加護だ。


「今、言った四つ以外でもちらほら聞くことはあるけど、だいたい有名どころはそんなところだと思う」


「ありがとう、ミフユ。あ、そろそろ、修練場に戻らないと。アレルトさんに怒られちゃう」


 そういって、ティアは残りのサンドイッチを口に頬張った。


「じゃあ、またね」


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