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 Bグループの戦いが終わった。


 結局、ティア達は暴れに暴れて、疲れ切ったところを攻められたことで負けとなってしまった。

 出場者の待機場所に戻ってきたティア達は、悔しがりながらも笑顔を見せていた。


「いやぁ~、暴れまわったわぁ。イベントで、こんなふざけたのは初めてや」


「たまにはいいものだな。いい勉強になった」


「もうくたくたですよ。テトラくんは大丈夫?」


「まあ、なんとかね。言い出したのは僕だし、へばってられないよ」


 疲れを癒すティア達は、始まったCグループの戦いを観戦していた。

 荒れに荒れたBグループとは違い、慎重な戦いが続いているのを見ていると、ティアが「あっ」と声を上げた。


「モンドさんが参加してる」


「モンド? ああ、武闘大会で優勝したヤツか。『スノーフレーク』に入っていたんだよな?」


「そうです。出場するって言ってたから、どこかと思っていたんですけど、Cグループだったんですね」


 モンドのチームは相手の挑発に乗らず、堅実な戦いをしているように思える。

 優勢に戦っていた相手でも深追いはしないで、すぐさま戦場を離れていく姿を見ていると、かなりの訓練を積んだことが分かった。

 生き残ることが目的のバトルロイヤルらしい戦い方なのかもしれない。


 自分たちは全く違う戦い方に感心していると、モンドのチームが別のチームとバッタリ鉢合わせした。

 戦いが始まる。そう思っていると、モンド達はすぐに背中を向けて別の方へと駆けて行った。

 別のチームもそれを追うようなことはせず、何事もなかったかのように走り出した。


「あれ? どうして戦わなかったのかな」


「ん? ああ~、たぶんやけど、相手のチームが『スノーフレーク』の傘下ギルドやったんやな」


「傘下ギルド?」


「せや。前にちょっと言ったかもしれんけど、『スノーフレーク』は傘下にいくつもギルドを抱えとるんや。親会社と子会社みたいな関係やな」


 ケーゴの言葉にティアはいまいち理解できない表情を浮かべた。

 それを見たハクトが補足する。


「『スノーフレーク』を頂点にして、その下に多数のギルドがあるんだ。『スノーフレーク』単体では100名程度のギルドだが、傘下ギルドを合わせると、数千名のメンバーを抱える最大手のギルドになるんだ」


「そんなにすごいんですね。でも、それとさっきの戦わなかったのって、何か関係があるんですか?」


「関係があるんだ。上から言われているだろうな。『スノーフレーク』とは戦わないようにと」


「えっ? そんなのありなんですか?」


 驚くティアに、今度はテトラが言う。


「ルールには明記されていないから、ダメじゃないよ。1ギルド、1チームまでの参加だし、相手が強ければ逃げるのもありだしね。そこまでルールで縛れないよ」


「でも、それって楽しいのかな?」


「どうだろうね。『スノーフレーク』の看板を背負っているなら、予選で負けるようなことはできないだろうし。楽しくやれる立場じゃないだろうね」


「そうなんだ……」


 テトラにそう言われてみると、モンドの表情もどこか晴れ晴れしいものではなく、曇っているように見えた。

 その後、Cグループはモンド達と、その傘下と思われるチームの一対一になった。

 最後は傘下と思われるチームのリタイアでCグループの戦いは終わった。



 決勝戦も終わり、優勝チームの表彰式が終わったのを見届けたティアは、惜しくも敗退したモンドの元へと行った。


 決勝戦では、モンドのレベルが低かったため敵から集中的に狙われたことで、タンクのモンドが倒れて敗退してしまった。

 それでもかなりの善戦だったのは間違いない。自分とそんなにレベルが変わらないモンドが、レベルカンスト勢と戦ったのだ。

 それを伝えたい気持ちがあった。


「モンドさん、お疲れ様です。惜しかったですね。すごくいい試合だったと思います」


「ありがとうございます。勝ちを譲ってもらって行った決勝戦が不甲斐ない結果で、悔しい思いしかありませんが、ティアさんにそう言っていただけると救われます」


「いえいえ。私ももっと強くなって、次こそは決勝戦に行けるように頑張ります」


「私も精進します。正直に言って、ティアさん達のチームが羨ましく思いました」


「羨ましい、ですか?」


 ティアが不思議そうな顔で聞いた。

 最大手のギルドに所属して、今回のようなイベントを経験させてもらえるのは、モンドが期待されている証拠だとケーゴから聞いていた。

 そのモンドが自分たちを羨ましいと思うところがあるのだろうか。


 モンドは清々しい表情で言う。


「型にはまらず、全力でイベントを楽しんていたように思います。観客も一番盛り上がったのは、ティアさん達のチームでした」


「あれは無茶苦茶なことしたから、皆が笑っただけでは?」


「いえ、予想もできない展開に私も手に汗を握りました。結果は残念なものでも、このイベントを一番楽しんだのはティアさん達だと思います」


 真っ直ぐな目でモンドは言った。

 それがどこか照れ臭くなり、ティアは照れ笑いを浮かべた。


「次、対戦することがあっても、負けません」


 モンドの言葉をティアは真っ向から受け止める。


「私も次は負けませんから」


 そう言うと、二人して笑った。



 観客と参加者がそれぞれの帰途についた。


 ティアはケーゴの誘いでお疲れ様会に行くことになったが、テトラはここで別れると言った。


「テトラくん、今日は本当にありがとね。また、一緒に遊んでくれる?」


「別に良いよ」


「ありがとう。じゃあ、フレンド登録しようよ」


「分かった」


 テトラとフレンド登録を交わしたティアは、新しい繋がりができたことで満足そうであった。

 そのままテトラに別れを告げ、ティアはハクトとケーゴの所属するギルドのギルドハウスのあるリンデンへと飛んだ。


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