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 首無し騎士のデュラハンは手斧と小さな盾を持った、ネクロマンサーの召喚できるタンクタイプの死霊である。


 テトラの影より現れたデュラハンは、ティアを押しのけると忍者風の男の攻撃を盾で弾いた。

 忍者風の男が空中で姿勢を整え、地面に着地した。


「ファントムソード」

 

 ティアの周りに出現した十本の剣が一列に並ぶ。


「シューティング・スター!」


 忍者風の男は着地したことによって生じた隙をティアに狙われ、ファントムソードに貫かれて消滅した。



 時は試合前に遡る。


 ティア、ハクト、ケーゴ、テトラの四人のチームで問題があるとすれば、ティアだけが低レベルということである。

 ティアを除く三人はレベル70のカンスト勢だ。

 その中で一人、レベル27のティアがいると、どうしてもそこが穴になってしまい狙われてしまう。


 どのように戦うか思案したところ、前線はケーゴを主軸にして、ハクトが中距離で立ち回り、そのサポートをティアとテトラがするというものだ。

 ただ、それでもティアが狙われる可能性がある。それに対応できるのがネクロマンサーのテトラであった。

 ネクロマンサーは死霊を呼び出すことができる。


 死霊にはタンクタイプのデュラハンと、アタッカータイプのレイスがいるが、今回使用するのはティアを守れるデュラハンだ。

 しかし、死霊のデメリットは命令に絶対服従ではないところだ。

 敵と味方の区別はできるが、死霊の本能か最初に目についたものを攻撃する特性がある。


 そのため、出すタイミングはテトラがティアの傍にいるとき。

 それもティアが狙われた瞬間だ。

 その瞬間であれば、出現と同時にデュラハンが敵を認識するため、ティアを守る行動を取ってくれる。


 理論としては、そうなるが実際はどうなるか。

 考えたハクトとケーゴもそこを悩んでいたが、任されるテトラはただ「分かった」の一言だった。

 本人が言うなら、それを信じるしかない。


 この作戦で行こうと決めた。



 忍者風の男が消滅したことで、デュラハンは敵のヒーラーに目をつけた。


 猛然と襲い掛かるデュラハンに、ヒーラーも魔法で攻撃を加えるが押しとどめることすらできなかった。

 デュラハンの手斧に切りつけられたヒーラーが、この場から逃げようと背中を向けた時、再びティアの声が響いた。


「シューティング・スター」


 背中を斬り刻むファントムソードによって、ヒーラーも消滅した。

 次はハクトかケーゴのフォローを。

 ティアはすぐに周囲の状況を確認したが、それが不要だと分かった。


 すでに戦いを終えていたのだ。

 ハクトとケーゴがティアとテトラに向けて拍手した。


「二人ともすごいな。タイミングがバッチリだったぞ」


「せやな。テトラくん、やるやないか。これはわいらも頑張らなあかんな」


 二人に褒められたティアは笑みを浮かべたが、テトラは特に表情を変えることはなかった。

 デュラハンを引っこめると、すぐにこの場を後にした。

 戦いの音を聞いていたチームが来るかもしれないからだ。


 他のチームが戦っている音がそこかしこから聞こえてくる。

 建物の陰に入った四人は一旦、足を止めた。


「さて、こっからどうすっかやな」


「敵チームが消耗するのを待つか、逆に攻めに行くかだな」


「わいはどっちでもええけどな。ティアちゃんとテトラくんはどうや?」


 聞かれたティアが考えあぐねていると、テトラが先に答えた。


「楽しくやるのが目的なんでしょ? なら、楽しくしない?」


 全員の視線がテトラに集まった。



 城内で戦っているチームがいた。

 4対4。まだどちらも決め手に欠けている。

 その均衡を破ったのは、城の壁をぶち破ったケーゴだ。


「よっしゃ。ここにおったで!」


 8人の視線がケーゴに集中する。

 ケーゴの後に続いて、ハクトとティア、テトラも中に入ってきた。

 まさかの乱入かと思われた。


 だが、違った。

 ケーゴの開けた穴から次々と別のチームの参加者がなだれ込んできたのだ。

 城内の広間に集まったのは、総勢24名。


 ケーゴ達が来る前までにいた者たちも、追ってきた者たちもこの状況が飲み込めなかった。

 誰もが困惑する状況を作り出したケーゴが声を張り上げた。


「ちまちま戦っても時間がかかって仕方がないわ。全員ぶっつぶす!」


 そういうと、ケーゴは手近な相手を掴まえて、ぶん投げる。

 ハクトは飛び上がると、拳銃を構えた。


「風弾装填、バレットダンス」


 発射された6発の銃弾がぐるぐると円を描きながら、城内を暴れまわった。

 続けて、ティアがファントムソードを召喚し、扇状に並べた。


「フェザー・スラッシュ」


 放たれたファントムソード。

 ハクトの銃弾に併せての攻撃で、他の者達は軽いパニック状態になった。

 敵味方が入り乱れての乱戦。


 混沌な状況に陥った城内で、ケーゴが暴れまわる。

 やられてたまるものかと応戦するものがでてくると、さらに混戦が深まっていく。

 誰が敵で、誰が味方だったか分からない状況となった。


 そこら中で武器がぶつかり、魔法が放たれ、人の雄たけびと絶叫が響き渡る。

 この状況を作ることになった発端者であるテトラがティアに言う。


「どう? 楽しくなってきたでしょ?」


「う、うん。やりすぎなような気がするけど」


「お祭りみたいなもんだし、これくらいしてもね」


 ティアは近づくものに片っ端からファントムソードで切り付けていく。

 一人の敵がティアのファントムソードを潜り抜けてきた。

 ティアに攻撃を加えようとした刹那、テトラがデュラハンを召喚し、それを邪魔した。


「僕ができるのはここまでだよ。頑張ってね、ティア」


「うん! テトラくんもやられないでね」


「あんまり自信ないけどね」


 ティアはデュラハンについて駆け出すと、テトラも混乱する戦場に身を投じた。

 イベントで初めて起きた大混戦に、観覧席からは歓声が響き渡っていた。


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