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首無し騎士のデュラハンは手斧と小さな盾を持った、ネクロマンサーの召喚できるタンクタイプの死霊である。
テトラの影より現れたデュラハンは、ティアを押しのけると忍者風の男の攻撃を盾で弾いた。
忍者風の男が空中で姿勢を整え、地面に着地した。
「ファントムソード」
ティアの周りに出現した十本の剣が一列に並ぶ。
「シューティング・スター!」
忍者風の男は着地したことによって生じた隙をティアに狙われ、ファントムソードに貫かれて消滅した。
◇
時は試合前に遡る。
ティア、ハクト、ケーゴ、テトラの四人のチームで問題があるとすれば、ティアだけが低レベルということである。
ティアを除く三人はレベル70のカンスト勢だ。
その中で一人、レベル27のティアがいると、どうしてもそこが穴になってしまい狙われてしまう。
どのように戦うか思案したところ、前線はケーゴを主軸にして、ハクトが中距離で立ち回り、そのサポートをティアとテトラがするというものだ。
ただ、それでもティアが狙われる可能性がある。それに対応できるのがネクロマンサーのテトラであった。
ネクロマンサーは死霊を呼び出すことができる。
死霊にはタンクタイプのデュラハンと、アタッカータイプのレイスがいるが、今回使用するのはティアを守れるデュラハンだ。
しかし、死霊のデメリットは命令に絶対服従ではないところだ。
敵と味方の区別はできるが、死霊の本能か最初に目についたものを攻撃する特性がある。
そのため、出すタイミングはテトラがティアの傍にいるとき。
それもティアが狙われた瞬間だ。
その瞬間であれば、出現と同時にデュラハンが敵を認識するため、ティアを守る行動を取ってくれる。
理論としては、そうなるが実際はどうなるか。
考えたハクトとケーゴもそこを悩んでいたが、任されるテトラはただ「分かった」の一言だった。
本人が言うなら、それを信じるしかない。
この作戦で行こうと決めた。
◇
忍者風の男が消滅したことで、デュラハンは敵のヒーラーに目をつけた。
猛然と襲い掛かるデュラハンに、ヒーラーも魔法で攻撃を加えるが押しとどめることすらできなかった。
デュラハンの手斧に切りつけられたヒーラーが、この場から逃げようと背中を向けた時、再びティアの声が響いた。
「シューティング・スター」
背中を斬り刻むファントムソードによって、ヒーラーも消滅した。
次はハクトかケーゴのフォローを。
ティアはすぐに周囲の状況を確認したが、それが不要だと分かった。
すでに戦いを終えていたのだ。
ハクトとケーゴがティアとテトラに向けて拍手した。
「二人ともすごいな。タイミングがバッチリだったぞ」
「せやな。テトラくん、やるやないか。これはわいらも頑張らなあかんな」
二人に褒められたティアは笑みを浮かべたが、テトラは特に表情を変えることはなかった。
デュラハンを引っこめると、すぐにこの場を後にした。
戦いの音を聞いていたチームが来るかもしれないからだ。
他のチームが戦っている音がそこかしこから聞こえてくる。
建物の陰に入った四人は一旦、足を止めた。
「さて、こっからどうすっかやな」
「敵チームが消耗するのを待つか、逆に攻めに行くかだな」
「わいはどっちでもええけどな。ティアちゃんとテトラくんはどうや?」
聞かれたティアが考えあぐねていると、テトラが先に答えた。
「楽しくやるのが目的なんでしょ? なら、楽しくしない?」
全員の視線がテトラに集まった。
◇
城内で戦っているチームがいた。
4対4。まだどちらも決め手に欠けている。
その均衡を破ったのは、城の壁をぶち破ったケーゴだ。
「よっしゃ。ここにおったで!」
8人の視線がケーゴに集中する。
ケーゴの後に続いて、ハクトとティア、テトラも中に入ってきた。
まさかの乱入かと思われた。
だが、違った。
ケーゴの開けた穴から次々と別のチームの参加者がなだれ込んできたのだ。
城内の広間に集まったのは、総勢24名。
ケーゴ達が来る前までにいた者たちも、追ってきた者たちもこの状況が飲み込めなかった。
誰もが困惑する状況を作り出したケーゴが声を張り上げた。
「ちまちま戦っても時間がかかって仕方がないわ。全員ぶっつぶす!」
そういうと、ケーゴは手近な相手を掴まえて、ぶん投げる。
ハクトは飛び上がると、拳銃を構えた。
「風弾装填、バレットダンス」
発射された6発の銃弾がぐるぐると円を描きながら、城内を暴れまわった。
続けて、ティアがファントムソードを召喚し、扇状に並べた。
「フェザー・スラッシュ」
放たれたファントムソード。
ハクトの銃弾に併せての攻撃で、他の者達は軽いパニック状態になった。
敵味方が入り乱れての乱戦。
混沌な状況に陥った城内で、ケーゴが暴れまわる。
やられてたまるものかと応戦するものがでてくると、さらに混戦が深まっていく。
誰が敵で、誰が味方だったか分からない状況となった。
そこら中で武器がぶつかり、魔法が放たれ、人の雄たけびと絶叫が響き渡る。
この状況を作ることになった発端者であるテトラがティアに言う。
「どう? 楽しくなってきたでしょ?」
「う、うん。やりすぎなような気がするけど」
「お祭りみたいなもんだし、これくらいしてもね」
ティアは近づくものに片っ端からファントムソードで切り付けていく。
一人の敵がティアのファントムソードを潜り抜けてきた。
ティアに攻撃を加えようとした刹那、テトラがデュラハンを召喚し、それを邪魔した。
「僕ができるのはここまでだよ。頑張ってね、ティア」
「うん! テトラくんもやられないでね」
「あんまり自信ないけどね」
ティアはデュラハンについて駆け出すと、テトラも混乱する戦場に身を投じた。
イベントで初めて起きた大混戦に、観覧席からは歓声が響き渡っていた。




