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 チーム戦への申し込みを済ませたティア達は、グループ分けが始まるのを待っていた。


「そうだ。テトラくんのジョブってなんなの?」


「ネクロマンサーだよ」


「ネクロマンサー?」


 ジョブに関しての知識が疎いティアに、テトラがため息を吐いた。


「ヒーラーだから回復魔法も使えるし、死霊を召喚することで攻撃もできるんだ。ちょっと癖が強いからプレイヤーは少な目かな」


「そうなんだ。期待してるね」


「そんな期待されても困るよ」


 テトラと会話をしていると、グループ分けが始まった。

 次々に表示されていくチーム名。その中の一つに目が止まった。


『ティアと愉快な仲間たち』


 その名前にギョッとしたティアは、受付で申し込みをしたケーゴに目を向けた。

 ケーゴは素知らぬ顔をしており、隣のハクトが冷たい目でその横顔を見ていた。


「ケーゴさん! やめてくださいよ! 人の名前を前面に出さないでください」


「いやぁ、急にチーム名って言われても分からんかったからなぁ。仕方なしや」


「仕方なくないですよ~。最近名前が知れ渡っているのに」


「まあまあ。お、わいらはBグループみたいやな」


 ティアの訴えもどこ吹く風のケーゴが掲示板を指さした。

 他のチーム名はまともなところが多いのに。

 周りからクスクスと笑われながら、出場者の待機場所へと向かった。



 チーム戦は4人1チームで、1グループ16チームの計8グループで同時に戦うバトルロイヤルだ。


 今回は古城を舞台に、各地にチームを配置して戦うことになる。

 16ものチームが入り乱れて戦うのを初めて見るティアは興奮していた。

 鮮やかな連携を決めるものや、卓越した個人技を見せるプレイヤーなど、見ていてどれも驚きがあった。


 戦いが進んでいるのを見ていると、違和感をティアは覚えた。

 一つのチームを二つのチームが囲んでいる。これは一体。


「ケーゴさん、あのチームって」


「ああ。あれも戦術のうちやな。有力なチームとガチンコで戦うよりは、複数のチームと手ぇ組んで戦うっちゅうやり方や」


「それって、卑怯じゃないんですか?」


「んなことあらへんよ。なんでもありなバトルロイヤルやからな。強い相手を複数で囲むなんてざらや」


「う~ん、そういうものなんでしょうか」


 いまいち釈然としないティアだが、ケーゴの言いたいことも分かる。

 強い相手と真っ向からぶつかっても負ける。それならば、他のチームと一斉に叩く方が勝ち残りやすい。

 正々堂々ではない。ただ、そうしないと強いところに勝つのは難しくなってしまう。


 考えても答えがでない。

 そうこうしていると、囲まれたチームが囲んだチームを撃破した。


「すごい! 倍の数を倒した」


「いや。まだ分からんで」


 勝ったチームが一息ついたのが見えた。

 その時だ。彼らに魔法や弓が襲い掛かった。


「ほらな。気を抜くとこうなるんや。派手に戦うと、ああやって離れた位置から奇襲も受けるんや」


「これも戦術なんですよね?」


「せやなぁ。格下が格上に勝つには必要なことやな」


「そうなんですね」


 バトルロイヤルとは奥が深い。

 戦いは進み、奇襲を受けたチームは敗北してしまった。

 だが、Aグループの勝者はその奇襲したチームでもなかった。


 あまり表に出てこなかったチームが勝ったのだ。

 これにもティアは戸惑いを覚えた。


「あのチームって、あんまり戦いに出てこなかったような」


 ティアが言うと、ハクトが「ああ」と言った。


「うまく戦闘を避けていた様子だったな。接触を最低限にして、戦い疲れたチームを狙ったんだろう。あれも上手い戦法だ」


「色々と戦い方があるんですね。先に見れて良かったです」


「まあ、勝ち残るよりも楽しむことができれば、それでいいさ」


「そうですね! 頑張りましょう」


 Bグループ入場の声が聞こえたので、参加者の列に並んだ。

 みんなの足手まといにならないように頑張らなければ。

 ティアは気合を入れた。



 古城の各所にチームが散らばると、あとは開始の合図を待つだけとなった。


 武闘大会の時とはまた違った緊張感がある。

 ドキドキしていると、開始を告げる花火が上がった。


「よっしゃ行くで!」


 拳にカイザーナックルをはめたケーゴと拳銃を抜いたハクトが先行する。

 敵がどこに潜んでいるか分からない。ティアはまだレベル28だ。前線で戦えば倒される可能性が高い。

 ここはケーゴとハクトを中心に戦う戦術を取ることにした。


 ケーゴが建物の陰から周囲の様子を伺っている。

 後ろに向かって親指を立てて見せたので、ケーゴの後についた。

 遠くから爆音が響いた。もう戦いが始まっている。


 爆音のした方を避けるように動いたケーゴ。

 その時、ケーゴの傍の空間が歪んで見えた。

 声を上げようとした。その声をハクトの銃声が遮るように鳴った。


「うぐぁっ!」


 ケーゴの傍に突如、姿を現したのは、忍者風の恰好をした男であった。


「ナイス、ハクト」


 銃弾を受けた忍者風の男を、ケーゴの拳が襲う。

 全力の一撃をくらった忍者風の男は、吹っ飛んで壁にめり込んだ。

 これで一人倒した。そう安心したのも束の間だった。


 ケーゴの前に戦士風の男が立ちはだかった。


「こいつは任せとけ。ハクトは周囲を警戒や」


「ああ」


 ケーゴと戦士風の男が戦い始めた。

 ハクトはすぐに周りに目を向ける。

 ティアも慌てて、周囲に目を配った。


 視界の中で動いたものが見えた。

 城壁の上に何かがいる。


「あそこです」


 ティアが指さすと、ハクトが拳銃を向けた。


「炎弾装填、バニシング・レッド」


 銃弾がティアの指した先に飛ぶ。

 壁を貫くと炎が巻き起こった。


「ああぁぁ!」


 炎に焼かれる人の声が聞こえた。

 燃え盛る炎から飛び出したのは、弓を構えた女性だった。

 女性は城壁の上を走りながら、ハクトに向け矢を放つ。


 その矢を避けつつ、ハクトは拳銃から銃弾を発射した。

 中距離同士の戦いが始まる。

 ケーゴとハクトが戦っている。どちらかに加勢しなければ。


 そう思った矢先、壁に叩きつけられていた忍者風の男がいなくなっていることに気づいた。

 代わりにそこにはローブを着た女性が立っていた。

 まさかヒーラー。では、あの忍者は。


 ティアが気づいたときには遅かった。

 忍者はすでにティアの直上におり、あとは降下してナイフを振るうだけだった。

 光る刃。間に合わなくても良い。ファントムソードを。


「デュラハン」


 ティアよりも先に言葉を発したのはテトラだった。

 その言葉に応じて、テトラの影からぬっと姿を見せたのは、首のない騎士だった。


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