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 勧誘地獄から逃れた翌日、ハクトとケーゴの二人と合流した。


「ティアちゃん、大変なことになっとたんやなぁ」


「そこまで名が知れ渡っていたとはな。声を掛けられる可能性があることを考えておくべきだった」


「でも、ちょっと楽しかったんやないか?」


 ケーゴがニヤニヤした顔で聞いてきた。

 断ることの心苦しさしかなかったので、しっかり否定する。


「ぜんっぜん楽しくないです。本当に大変だったんですからね?」


「すまんすまん。まあ、考えれば勧誘したくなる逸材やもんなぁ。そりゃあ、『スノーフレーク』からも声掛かるのも頷けるわ」


「『スノーフレーク』さんって、すごいギルドなんですか?」


 ティアはきょとんとした。

 どこのギルドがどんな規模なのか聞いたこともなかったからだ。


「『スノーフレーク』は超大手ギルドやで。ただ人数が多いだけやない。メンバーも有能ぞろいや。それに多くのギルドを傘下にしとる」


「そんなところから声を掛けていただいたんですね。恐縮しちゃうなぁ」


「せやな。普通に入ろうとしてもなかなか入れんところやからなぁ。断って良かったん?」


 ケーゴの問いに、ティアは困り顔を見せた。

 ギルドについての知識があまりにも乏しいので、判断ができなかったからだ。

 悩むティアにハクトが助け舟を出す。


「まあ、俺達もギルドについて教えてなかったからな。いきなり決めるのは難しいだろう」


「ギルドって入った方が良いんでしょうか? ミフユはソロプレイヤーで苦労はしてなさそうでしたけど」


「そうだな。普通に遊ぶ分には、必須というわけではないな。ただ、高難易度コンテンツをクリアするのはソロよりギルドに入った方が良い」


「ソロだと難しいんですか?」


 ハクトは頷く。


「ギルドのメンバーと行ければ、事前の準備もできるし、見知った者同士だから連携などがしやすいからな」


「なるほど」


「デメリットと言っていいか分からないが、人間関係が複雑になってしまうな。ギルドメンバーとの交流が必要になるから、それが苦手な人には辛いだろう」


「確かに。大きなギルドだと人間関係で大変な思いをしそうですね」


 もし、ギルドメンバーの定員である100人に到達しているギルドに入ると考えると、人間関係を築くところでつまづいてしまうかもしれない。

 少人数ギルドの方が、そういう面では良いのだろうか。


「少人数ギルドの方がよかったりしますか?」


「一概にそうとは言えないな。人数が少ないと高難易度コンテンツに挑めるか分からないし、人間関係は多いところと比べると密になってしまう」


「うーん……。考えることが多いですね」


「無理に結論を出す必要はないさ」


「はい。そうします」


 ティアはギルドへの加入については保留にすることにした。

 あとは、モンドから聞いた、チーム戦への参加だ。これはできることなら参加したい。


「チーム戦のイベントなんですが、参加しても良いでしょうか?」


「全然ええで。わいらも参加するわ」


「ありがとうございます! ハクトさんも良いですか?」


「ああ。ただ、俺達だと三人しかいない。あと一人必要だな。できればヒーラーだが……」


 ハクトの目がケーゴに向いた。


「あかん。わいに頼るな。逃げ場がなくなりつつあるんや」


「となると、ソロで参加しようとしている人に声を掛けるしかないな」


 ケーゴに以前、ヒーラーを呼んでもらったことがあるが、大変な思いをしたので、また助けを求めるのは酷だろう。

 自分のフレンドリストを見ても、ヒーラーはいない。どうしたものか。


「まあ、考えるのはイベント当日でええやろ。そこまではクエストをクリアして、ストーリーの進行とレベル上げと行こか」


 ケーゴの言う通りだ。まだレベルが25の自分では二人の足手まといにしかならない。

 開催日までに少しでもレベルを上げなければ。


「分かりました。頑張ります」


 ヘリオットで進行中だったクエストを再開した。



 チーム戦のイベント開催日。

 場所はヘリオットから少し離れた場所にある、古城であった。

 観覧席や広場には試合風景が見えるようにモニターが表示されている。


 人でごった返している中、パーティーメンバーを募集している声が、そこかしこから聞こえる。

 ティアとハクト、ケーゴも色々と声を掛けているが、ソロの参加者を見つけることができなかった。

 このままではイベントが始まってしまう。焦っていると、見知った顔を見つけた。


「テトラくん」


 呼ばれたテトラがティアに気付くと、近づいてきた。


「どうしたの、こんなところで?」


「私はチーム戦に出ようと思っているの。テトラくんは?」


「僕はとりあえず見に来た感じだよ。参加しても良いけど、チームを探すのがね」


「そうなの!? テトラくん、ロールは?」


「ヒーラーだけど」


 これは運命だ。ティアの目がギラリと光った。


「テトラくん、一緒に参加しよう!」



 テトラを強引に説得したティアは、ほくほく顔でハクトとケーゴの元へと向かった。


「ハクトさん、ケーゴさん。ヒーラー見つけました」


「おー! ティアちゃん、ナイス勧誘や」


 ティアはテトラを二人の前に押し出した。


「こちら、ヒーラーのテトラくんです」


「よろしく」


 ものすごく手短な挨拶だった。


「タンクのケーゴや。よろしゅうな」


「アタッカーのハクトだ。よろしく」


「知ってるよ」


 テトラの返しにケーゴとハクトが目を丸くした。


「昔の話さ。さあ、行こうか」


 テトラはそういうと、受付へと行った。

 三人もその後について行く。

 チーム戦の幕が上がろうとしていた。


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