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 メインストーリ―を進めたティアはレベル15となった。


 『ユニティ』ではレベルが15を超えるとマウントユニットへの騎乗が可能となる。

 これから広大な大地を移動するのに、マウントユニットの存在は欠かせないからだ。

 そのため、ティアはハクトとケーゴに連れられて、リンデンのマーケットに来ていた。


 マーケットプレイスに行くと、マウントユニットを取り扱っている店員の元へ行く。


「へい、らっしゃい」


 元気よく挨拶した店員にマウントユニット一覧を見せてもらうよう頼む。

 表示された一覧を眺めると、衣装の時と同じように悩まされた。


「うわ~。こっちも種類が豊富ですね」


「せやろ? 衣装ほど高くはないんやけど、それでもいい値段がするんや。ティアちゃん、気になるやつあるか?」


「そうですね。どれが良いのか分からないから困ってしまいます」


 マウントユニットは基本的な馬だけでも種類が多く、モンスターなども合わせると膨大な種類になる。

 どういう基準で選ぶのが良いか、二人に聞いてみよう。


「ケーゴさんとハクトさんは、何を基準にしてマウントユニットを選んだんですか?」


 ふむ、といった具合にケーゴが腕組みした。


「わいがバイクにしたのはカッコええからやな。スピードもトップクラスやし。まあ、値は張るけどな」


「俺は自分で捕まえた馬だから愛着があってな。早さも十分だったから、最初から使い続けている」


「マウントユニットって、捕まえることもできるんですか?」


 ティアの問いかけに、ハクトは「ああ」と答えた。


「マウントユニットの基本となる馬は、野生の馬を捕らえることで使役できるようになる。モンスターは倒すとまれに、信頼の証、というアイテムをもらうことで使えるようになる」


「捕らえるのって、なんか少し怖いですね」


「それなら、買う方がいいかもな。馬ならお手頃な値段が多い」


「そうですね。どれにするかはもう少し考えてから、買うことにします」


 お手頃価格とはいえ、アバター用の衣装を買って、あまりお金が残っていない。

 しっかり考えて買わなければ、装備の新調もできなくなってしまう。

 一度、持ち帰って検討すべきという答えにした。


 マーケットプレイスを出てからクエストを進めようとしていると、お知らせの通知が届いた。

 開いて見ると、イベントの開催のお知らせであった。


『幻獣との遭遇率アップ』


 見出しにはそう書かれていた。

 ハクトとケーゴも見ているようで、「ほう」という声を上げた。


「幻獣ってなんですか?」


「モンスターとはまた違う存在やな。フェニックスとか聞いたことないか?」


「あります。不死鳥ですよね?」


「せや。そういう珍しい存在と時々フィールドで遭遇するんやけど、それの確率が上がっとるんや」


「レアモンスターって感じですか?」


 ティアの問いかけに、ハクトが首を横に振った。


「いや、レアモンスターよりもレアだ。出会うのは大変だが、倒すことでアイテムを落とすこともある。うまくいけば一発で億万長者になることもできるぞ」


「すごいですね。ハクトさんは会ったことあるんですか?」


「ああ。アイテムドロップしたことはないけどな」


 ハクトでも手に入れたことはないのか。

 そんな存在の出現率がアップしているなら、見てみたい気はする。

 幻獣への期待を膨らませ、メインクエストの進行に戻った。



 レベルが18になったティアは、リンデンでのメインクエストを終えて、次の目的地である森の都ヘリオットへと向かっていた。


 ヘリオットへの旅はリンデンから陸路で3日間かかる。

 街道が整備されており悪路などはないため、2日目までは快適であった。

 しかし、3日目にアクシデントが起きた。


 夜更けからの大雨で河が増水してしまい、向こう岸に渡るための船が出せないというものだった。

 雨が何日続くか分からないため、一旦、ログアウトするという話になった。


「あ、そうや。明日、わいはログインでけへんのやった」


「ああ。俺もだ。ティア、すまないが明日は一人で進めてもらえるか? ヘリオットまでは道も整備されているから、難しくはないと思うが」


 ハクトが不安そうに言った。

 方向音痴のティアのことを心配しているのだ。

 でも、注意していれば、そこまで変な方向に行かない、と思う。


「大丈夫です。安心してください」


「マウントユニットもないから、無理はするなよ」


「はい。分かりました」


 そうして言葉を交わすと、各々ログアウトをした。



 後日、ログインしたティアは河を渡って、ヘリオットへ向かう道を進んでいた。


 ヘリオットに近づくにつれ、木々が増えていき、深い森へと変わっていった。

 森の中にもきちんとした道があるので、これならば迷うことはない。

 意気揚々と旅を続けていると、森の奥から馬のいななきが聞こえた。


 とても澄んだ響きをしている。

 何だろう。見に行ってみようかな。

 ちょっとだけ道を逸れるけど、大丈夫よね。


 ティアは自身に言い聞かせると、森の奥へと進んでいった。

 馬の声が再び聞こえた。向かっている方角は間違っていなさそうだ。

 そうして歩いていると、森の切れ間に入った。


 透き通るような青空が見えた。

 そこから少し進むと、巨大な樹が生えていた。

 その壮大さに心を奪われていると、再び馬の鳴き声が聞こえた。


 樹の後ろ側から聞こえた気がする。

 ティアは小走りで樹の後ろに回った。

 そこには、1頭の白馬が横たわっていた。


 見れば、足から血を流しており、痛々しい傷口がある。

 助けようと近づくと馬が警戒したような鳴き声を上げた。


「あ、ごめんね。大丈夫。安心して。ほら、傷薬持っているから、あなたに使わせて?」


 敵意がないことを伝える。馬がじっとティアの瞳を見つめた。

 その時に気付いた。この馬、額に一本角がある。

 知っている。ユニコーンだ。


 ティアはすぐに我に返ると、また語り掛ける。


「怖いことはしないよ? あなたの怪我を治したいの。良い?」


 ユニコーンは低い声で鳴いた。

 その声が威嚇のものではないと思った。

 ティアは傷薬を手にして、ゆっくりと近づく。


 足の傷口に傷薬をかける。キラキラと光る液体が傷を洗い流していく。

 これで傷は癒えるだろう。あとは傷口にばい菌が入らないように包帯を巻いた。


「はい。おしまい。頑張ったね」


 そういうと、ゆっくりと後ずさった。

 ユニコーンはティアの目をじっと見つめたまま、ゆっくりと立ち上がった。

 傷の痛みを確認するように、足踏みをしている。


 痛みがなくなったのか、ユニコーンはちらりとティアを見ると、森の奥へと駆けていった。

 離れた場所で、またユニコーンが振り返ったので、小さく手を振る。

 森の中へと消えていくユニコーンを見送ったティアは、あっと声を上げた。


「どっちから来たっけ?」


 絶望の足音が聞こえた気がした。


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