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 モカは自分をエクソシストと名乗ると、すぐに大きな狼にまたがり、デビルの飛んで行った方向へと駆け出した。


 その去っていく背中を見ていると、ミフユが声を掛けてきた。


「どうする? あの子一人じゃ危ないんじゃない?」


 確かにデビルと戦うのに一人では難しいのではないだろうか。

 ハクトとケーゴでもギリギリの戦いをしていたから、あのデビルと同等の力を持っていたとしたら。

 ティアは悩んだ結果、追いかけることを選択した。


「ミフユ。マウントユニット出せる?」


「うん。分かった」


 ミフユは一頭の馬を召喚した。

 馬にまたがったミフユに引っ張られて、ティアも馬に乗った。


「行くよ。落ちないでね」


 馬を疾駆させ、モカの後を追った。

 二人乗りではスピードが出ないのか、モカの背中は遠くなっていくばかりであった。

 焦りを覚えていると、シャウトの通知音が響いた。


 チャット欄を開くと、モカの名前と共にデビルの特徴、出現場所が書かれていた。

 モカはデビルを追いながら、これを書き込んだのか。

 エクソシストというのは嘘ではないようだ。


 チャット欄にデビル討伐に参加する者たちが、様々な書き込みをしていく。

 今から来るにしても、どれくらいかかるのか分からない。

 モカの援護をすぐにできるのは自分たちしかいないだろう。


 逸る気持ちを抑えていると、モカがデビルに追いついたのか、それともデビルがモカの存在に反応したのか分からないが足が止まった。

 今のうちに追いつかなければ。

 ミフユもそれが分かったのか、馬の手綱を振るう手に力が入っていた。


 黒い塊のデビルは、空中を旋回し、モカの出方を伺っているようだ。

 そのモカは指揮棒のようなものを取り出すと、軽やかにそれを振るった。

 すると、地面が盛り上がり、大きな人型を形成していった。


 そのタイミングに合わせるようにデビルが空中から、モカ目掛けて襲い掛かる。

 モカとデビルがぶつかり合うと思われた瞬間、大きな人型の何かが地面を叩きつけた。

 ズシンと音が響くと、地面が爆発したかのように土が噴き出した。


 それによってできたのは土の壁であった。

 土の壁に行く手を阻まれたデビルは、散り散りに分裂した。

 あのデビルは一体ではないということか。


 やっとモカに追いついた。

 先に降りたティアがモカに急いで駆け寄った。


「モカさん、大丈夫!?」


「来ては危ないです。ここは私にお任せてください」


「でも」


 そうこうしていると、デビルが空中でまた一塊になっているのが見えた。

 無数の羽音が響く。近くに来たから分かる。

 あれは虫型のデビルだ。


 モカの呼び出した人型の何かを警戒しているのか、先ほどのように一塊で突撃はしてこなかった。

 二手に分散して、モカの前後から攻めるつもりだ。

 逃げるしかない。そう思ったティアの傍で、モカが大きな声を上げた。


「ゴーレムさん! アースドーム!」


 その声に反応した人型は地面に手を着けた。

 手の触れた個所を中心にして、土が盛り上がり、ティアとモカを守るようにドームが形成された。

 ドームができたと同時にデビルの攻撃の波が押し寄せた。


 ドームの中は暗闇になっており、外から聞こえる羽音とぶつかってつぶれているのか、嫌な音が耳に入った。

 音が静まるとドームはボロボロと崩れ落ちた。

 空を舞う虫型のデビルの大群の数は相変わらずだが、攻撃を仕掛けあぐねいている。


 膠着状態に持ち込めたのか。

 そう思っていると、空を舞う四つの影が目に入った。

 それに気づいたモカが安堵の表情を浮かべた。


「銀の血盟さんがいらっしゃいました。これで大丈夫なはずです」


 銀の血盟。ハクトやケーゴからも聞いたことがある名だ。

 エクソシストのギルドなのだろうか。

 ペガサスに乗った銀の血盟の者たちが、地上に降り立つとモカに声を掛けた。


「よく持ちこたえたな。後は我々に任せておけ」


「はい。お言葉に甘えます」


 モカが言うと、銀の血盟の四人がフォーメーションを組んで戦いに臨んだ。

 その様子を見ていると、空中でデビルの一部が分裂した。


「あっ!」


 モカが声を上げると、また大きな狼を召喚した。


「モカさん、どうしたの?」


「あのデビルが向かった方角は穀倉地帯なんです。そこが狙いだったら、食べ物に被害が出てしまうかもしれません」


「でも、一人じゃ無理だよ」


「銀の血盟さん達は、こっちのお相手で手一杯です。私が行かないと」


「私だけじゃなくて、私達だったら?」


 そういったのはミフユだった。

 モカに加勢をするということだ。

 モカは少し考え込むと、了承したように頷いた。


「ご助力ありがとうございます」


「良いって。私はミフユ、そっちの子はティア。よろしくね」


「ミフユさん、ティアさん、よろしくお願いします」


 三人は互いの顔を見合うと、狼と馬に乗って原野を駆けた。


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