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 エッグハントのイベント概要はハクトに聞いた通りのものだった。


 フィールドに隠された卵を探して手に入れる。

 その卵の中にあるメダルを集めることで、交換所にてアイテムと交換できるのだ。

 早速、ティアとミフユはフィールドの散策に出かけ、卵を探していた。


「あ! こっちにあるよ」


 ティアが指さしたのは草むらに転がる卵だった。

 卵を手にすると、ボンッと煙を上げてメダルへと変わった。

 メダルは茶色であった。メダルには種類があり、茶色が1ポイント、銀が10ポイント、金が30ポイントとなる。


「ちぇー。1ポイントかぁ」


 ティアが残念そうに言った。


「まだ始まったばかりじゃない。あっちの草むらも怪しそうだよ。行ってみよう」


 フィールドをうろうろしていると、バッタリモンスターと出会うことがあるが、ほとんどミフユが退治してくれた。

 ミフユのレベルは65で、カンストの70までもう少しのレベルであった。

 高レベルプレイヤーのミフユと組んだおかげで、モンスターとの遭遇も怖くない。


 その代わりと言っては何だが、卵探しを必死にやった。


「あ、また金が出たよ」


 手にした金のメダルをミフユに渡した。


「また金が出たんだ。ティアはすごく運が良いね」


「えっ? そうかな。あはは」


 ミフユには七星の加護を得ているとは言っていない。

 話しても大丈夫かと思う反面、ウルブラッドと話してから、余計に七星について話しづらい気もしている。

 ただ運が良いことにしておくのが無難であろう。


 頭を切り替えたティアは卵探しを続行した。



 卵探しに熱中していると、気づけば夕暮れが迫っていた。


 リンデンからだいぶ離れてしまっている。そろそろテレポートで戻るか提案しよう。


「ミフユ、そろそろ夜だからリンデンに戻らない?」


「あ、それならいいところがあるよ」


「え、どこどこ?」


「秘密。ついて来て」


 歩き出したミフユの後をついて行く。

 日が傾き、山並みに太陽が消えようとしていた頃、ティア達の前に大きな石がゴロゴロ転がっている場所があった。

 無造作に置かれているように思えたが、よく見れば円を描いていることが分かった。


「ストーンサークルっていうところが、色々なところにあるんだけどね。そこの近くはモンスターが近寄らないの。だから、旅の途中とかでキャンプするんだ」


「えっ!? キャンプするの! やったー」


 テンションの上がったティアを見て、ミフユが微笑んだ。


「キャンプでテンションあがってくれて嬉しいよ。じゃあ、テントとか用意するから、ティアも手伝って」


「うん! 分かった」


 ミフユがアイテムを次々と取り出して、地面に置ていく。

 ティアはミフユに指示してもらいながらテント設営を行った。

 夜を迎える頃にはテントは完成し、夕飯のために焚火をすることになった。


 キャンプ道具を使って、簡単な料理を食べた。お腹も満たされて、地面に寝転ぶと満点の星空が見えた。


「綺麗だね」


 思わず口から洩れた。ミフユがくすりと笑った。


「だよね。星が降ってきそう」


「ミフユは旅に慣れてる感じだけど、いつもこんな感じなの?」


「そうだね。旅が好きで、このゲームをやっている感じかな」


「そっか。本当に色々な楽しみができるゲームなんだね」


 ティアが寝返りを打つと、ミフユと目が合った。

 優しい表情のミフユが問いかけてきた。


「ティアは、どうして『ユニティ』を始めたの?」


「お兄ちゃんの影響かな。昔からお兄ちゃん子なところがあったから、お兄ちゃんが熱中しているって聞いて興味が湧いたんだぁ」


「へー。どんなお兄さんなの?」


 ティアは兄のことを思い出すと、渋い表情を見せた。


「すっごい意地悪」


「それはティアが可愛いからだよ」


「皆、そう言うけど意地悪される方の身にもなってほしいよ」


 そういうとミフユは声を上げて笑った。

 それがおかしくてティアも笑う。

 兄はこのゲームでどんな楽しみを見出しているのだろうか。


 いつか聞いてみよう。きっと、まだ自分が知らない世界を教えてくれることだろう。

 いや、たぶん教えてくれない気がする。



 エッグハントを初めて二日目の昼。


 卵探しは今日も続いていた。

 モンスターを蹴散らし、卵が隠されていそうな場所を探す。

 一人でやっていたら精神的にしんどかったかもしれないが、ミフユと一緒なので楽しく続けることができていた。


 そろそろ休憩にしようと思っていたところで、遠くに大きな木が生えているのが見えた。

 その周りには昨日見たストーンサークルと同じようなものがあった。

 あそこを今日の拠点にしてもいいかも。ティアはミフユに話を持ち掛けた。


「あそこにストーンサークルがあるから休憩しない」


「いいね。早速、行こうか」


 二人でストーンサークルへと向かう。

 大きな木が立っているお陰で木陰ができていて、過ごしやすそうだ。

 そう思っていると、木の傍に人影が見えた。


 近づくと、可愛らしい恰好をした少女が一人で寝てる姿が見えた。


「あら? 先客がいたみたいだね」


「うん。起こしたら悪いから、少し離れた場所で静かにしておかなきゃね」


「そうだね」


 少女から少し距離を取った場所に座り、昼食を取ることにした。

 パンと乾燥肉を食べていると、少女が目を覚ましたようでむくりと起き上がった。

 あくびをした少女とティアの目が合った。


 緩くパーマのかかったような長い髪にお人形さんみたいなぱっちりした目。

 これはすごい美少女だ。


「ごめんなさい。起こしちゃったかな?」


「いえ、そんなことありません。こちらこそ、気を使わせてしまったみたいで、すみません」


 なんと礼儀が正しい子だろうか。可愛いだけじゃない。


「あなた、お昼はまだなんじゃない? 一緒に食べない?」


 ミフユが少女に言う。

 少女はパッと笑みを咲かせて、大きく頷いた。


「ぜひ、ご一緒させてください。自己紹介がまだでした。私はモカです。よろしくお願いします」


 そういってモカが立ち上がった時、ジジッとノイズのような音が響いた。

 モカは、その音にビクッと反応した。

 すると、またジジジッと音が聞こえた。


 そこでティアは思い出した。これはデビルが出てくる時に聞いた音だということを。

 そして、ノイズ音が大きく鳴り響くと、空にヒビが入るのが見えた。


「ミフユ、デビルが来る!」


 空が割れると、無数の羽音ようなものと共に黒い塊が穴から姿を見せた。

 その黒い塊は南の方へと悠然と飛んでいく。

 自分たちを狙ったものじゃないことに安堵した。


「皆さん、ごめんなさい。私、行かないと」


 モカはそういうと、大きな狼を召喚した。


「え? デビルと戦うつもりなの?」


 ティアの問いかけにモカは首を縦に振った。


「私、エクソシストなんです」


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