表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/99

27

 紗友里はコミュニケーションツールを使って美羽と通話をしていた。


「武闘大会、すごく楽しかったよ。二回戦で負けちゃったけど」


「じゃあ、優勝賞品はお預けになったんだねぇ」


「それなんだけどさぁ、ハクトさんから髪留めを貰っちゃたんだよね。お陰で髪型を変えることができたよ」


 紗友里はベッドに寝ころぶ。

 『ユニティ』では髪型は最初にある程度選べるが、髪飾りなどを使うことで現実と同じように髪型を変えることができる。

 自分のセミロングの髪とは違って、ティアはロングヘアなので色々な髪型を楽しめそうだ。


「へぇ~。プレゼント貰ったんだ。やるじゃん、ハクトさん」


「ねぇー。本当に優しい人だよね。頭が上がらないよ」


「世話好きな人に出会えて良かったね」


「お世話になりっぱなしだよ。何かお返ししたいんだけどねぇ」


 はぁ、と小さなため息を吐いた。

 持っているアイテムでお返しになりそうなものはない。

 どうしたものか。


「あんたが強くなることが、お返しになると思うけど?」


 美羽の言う通りかもしれない。皆でゲームを楽しむことが最大のお返しだと思った。


「そう? じゃあ、もっと頑張らないと。やっとメインストーリ―もできそうだしね」


「だねぇ。メインストーリ―が面白いって評判だから、しっかり楽しみなよ」


「うん!」



 ティアはハクトとケーゴに連れられて、リンデンのマーケットに来ていた。


 目的はティアの装備である。レベルが10になったことで、装備できるアイテムが増えたのだ。

 手持ちのゴールドも依頼を相当の件数重ねたので、そこそこ持っている。

 これで買えるもので良いものがあればいいのだが。


 マーケットは活気に満ちており、露店に様々な商品が並べられている。

 向かったのは露店ではなく、マーケットの中心にある建物であった。


「ケーゴさん、ここはなんですか?」


「マーケットプレイスや。冒険者が生産したり、取ってきた物をここで売買できるんや。まあ、手数料が取られるんやけどな」


「そうなんですね。じゃあ、ここで装備を買うんですね」


「せや。ティアちゃんは細剣はボスからゲットしたものがあったから、欲しいのは防具やな」


 そういうとケーゴは建物の中へと入った。

 マーケットプレイスでは、多くの人々が物の売り買いをしていた。

 ケーゴは近くの店員の女性に声を掛ける。


「防具を買いに来たんやけど、今ある分のリストを見せてくれへんか?」


「はい。こちらが現在、取り扱っている商品です」


 空中に表示されたリストを食い入るように見る三人。

 そのリストの検索項目をケーゴがいじる。


「レベル10でファントムフェンサーが装備できるものっと。お、出てきたで」


 表示されたアイテムを拡大したティアがガックリと肩を落とした。


「かわいくない……」


「ああ~、まあ、可愛い装備って少ないわな。かっこいいとかゴツイ装備は多いんやけどな」


「そうなんですか!? サリィさん、すっごく可愛い恰好してたじゃないですか?」


 あのかわいい服を思い出すだけでテンションが上がる。

 自分が似合うかは分からないが、来てみたい衝動はある。

 ケーゴが苦笑した。


「あれはアバター用の衣装やな。装備とは違って見た目が変わるもんなんや」


「そうなんですか?」


「ああ。わいもハクトもアバター用の衣装を着とるで。本当の装備はもっとゴツイもんやし、ステータスで選んどるから統一感もないわ」


「じゃあ、私もアバター用の衣装を買います。どんなのがあるんですか?」


 鼻息を荒くしたティアに押されたケーゴが、検索項目をいじった。

 そうして表示された衣装を見て、ティアの目が輝いた。

 お姫様のようなドレスから、ゴスロリの衣装まで様々なジャンルの物が並んでいたのだ。


「か、かわいいっ! あ~、どれがいいかなぁ」


 うっとりとした目で衣装を眺めるティアの肩をケーゴがチョンチョンと叩いた。


「値段、見てみ?」


「値段?」


 ティアは衣装のデータの下に表示されている価格を見た。


「ごごごご、五十万ゴールド!?」


「これでも良心的な価格やで。高いのは一千万を超えるからな」


「私の手持ちって……。二万ちょっとしかない」


 絶望に打ちひしがれたような表情を浮かべたティアに、ハクトが励ますように言った。


「お金を稼ぐのに最適なイベントが近々開催される。欲しいものを絞って、それに向けてイベントを周回すれば買えると思うぞ」


「そんあイベントがあるんですか!? なんてイベントですか?」


「エッグハントだ」


 聞きなじみのない言葉にティアは首を傾げた。

 その疑問に答えるようにハクトが続ける。


「イベント期間中にフィールドに隠されている卵を探すんだ。それにイベント専用の交換アイテムが入っているんだが、交換アイテムの中にゴールドもあるんだ」


「そうなんですか? どのくらい頑張ればいいんでしょうか?」


「こればかりは運としか言えないな。しっかり周回すれば、かなり稼げるとは聞く」


「じゃあ、それを頑張ったら衣装が買えるってことですね?」


 ティアが言うと、ハクトはこくりと頷いた。

 なんとしても衣装が欲しい。そのためならイベント期間中は、ガッツリ入って稼がなければ。

 ティアの目に熱い炎が宿った。



 エッグハントイベントの開催当日。

 この日を待っていましたとばかりに、メンテナンスが開けた直後にログインした。

 リンデンに降り立ったティアはまずは外に行こうと歩みを進めた。


 その時、頭の中でリーン、リーンと音が鳴った。

 表示されたのはミフユからの通話の通知であった。


「もしもし、ミフユ?」


(うん。私だよ。ティア、今からイベント始めるつもり?)


「するよ。ガッツリ稼いで、衣装買わないとだから」


(あ~、アバター用の衣装って高いもんねぇ。じゃあさ、二人でイベント回らない?」


 これはありがたい申し出だ。

 一人でも黙々とイベントを周回しようと思っていたところであった。


「ありがとう、ミフユ。一緒にしよう」


(分かった。じゃあ、リンデンの東門で集合ね。道、間違えないでね)


「ちゃんと注意して行くから大丈夫だよ。じゃあ、またあとでね」


 通話を切り上げたティアは東門へと歩いていく。

 エッグハントのイベントに合わせて、街中には大小さまざまなウサギのぬいぐるみと卵が置かれていた。

 じっくりと見ていきたいが、ミフユとの集合があるので横目で見るだけにしておく。


 リンデンの東門に近づくと、こちらに向かってくるミフユの姿が見えた。


「ミフユ、お待たせ~」


「ううん、大丈夫。イベント、頑張ろうね」


「うん!」


 二人はフィールドへと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ