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 レベル10までが対象となるランクの武闘大会の日が来た。


 なんとかレベル10まで上げることができたティアは、参加者の列に並んでいた。

 ハクトとケーゴは観覧席に行っており、周りに見知ったプレイヤーはいない。

 これをきっかけに同レベルくらいの人と仲良くなれたら。


 そう思っていたが、誰もが周りを敵とみなしているのか、仲良くなれそうな人は見つからない。

 そうこうしていると、参加者のグループ分けが行われ、ティアはDグループとなった。

 武闘大会は予選を勝ち抜いたものでトーナメントをする形式で、予選はグループ分けされた参加者全員での戦いとなる。


 その戦いで4名まで残ることができればトーナメントの参加者になれるのだ。

 グループは二十名ほどの単位で分けられており、早速Aグループの予選が始まった。

 手に汗握る攻防戦。あの中に自分が入るのかと思うと緊張してきた。



 ついにDグループの予選の番となった。

 緊張の面持ちでリングに上がるティア。歓声を聞くとさらに緊張度が増してきた。

 全員が揃うと、リングの各所に散らばって審判の開始の合図を待つ。


「始めっ!」


 審判の声と共に、全員が臨戦態勢に入った。

 ティアも細剣を抜くとすぐさまファントムソードを顕現させた。

 その瞬間、会場にどよめきが走った。


「おい、あのファントムフェンサー、十本もあるぞ」


「このランクはあの子で決まりかもな」


 会場の注目はティアに向いていた。

 恐縮してしまいそうになるが、今は戦いの真っ最中だ。

 気持ちを切り替えて、迫りくる脅威と戦わなければ。


 ティアが身構えた。

 だが、誰もティアと相対しようとするものはいなかった。

 圧倒的な才能差を感じ取ったのだろう。ティアとやりあうのを悪手と考えたようだ。


「えっ? え~!?」


 困惑するティアを他所に、一人、また一人とダウンしていく。

 気づけば半数を切っており、勝手に戦いはクライマックスを迎えていた。

 そうして、ティアは何もすることなくトーナメント進出を決めた。



「ティアちゃん、トーナメント進出、おめでとう」


「良かったな。体力温存ができた」


 ケーゴとハクトから祝福されたが、ティアは釈然としない様子であった。


「あの~、あれで良かったのでしょうか?」


「実力者を避けるのも戦術の内やで。強いと思われたんやから、胸を張ってええんやで?」


「そう思うことにします。そういえば、トーナメント表って出ましたか?」


「ああ。もう出ているぞ」


 ハクトが言うと、掲示板を指さした。

 十六名の参加者の名前がトーナメント表に記載されていた。

 ティアは第一試合であった。


「ティアちゃん、一発目からやな。気張っていこうや」


「うぅ……。緊張します」


 ティアはガチガチのままリングへと向かった。



 第一試合。ティア対リゲル。

 相手のリゲルのジョブはアサシンだ。

 二人は見合った状態で、それぞれの獲物を抜いた。


「始めっ!」


 審判の声と共に、ファントムソードを呼び出すティア。

 それと同時にリゲルが仕掛けてきた。


「火遁の術」


 リゲルが印を結ぶと、ティアの足元に炎の円が広がる。

 まずい。反応が遅れたティアを火柱が飲み込んだ。

 すぐさま炎の中から飛び出したティアだが、その先にリゲルの次の攻撃が待ち構えていた。


「手裏剣乱舞」


 複数の手裏剣が乱れ飛ぶと、ティアの体を切り裂いた。


「くっ!」


 ダメージを負ったティアは反撃の構えに出た。


「シューティング・スター」


 ファントムソードが一列になって一気に襲い掛かる。

 だが、リゲルはそれをひらりとかわした。

 反応が良い。ティアは渋い表情を浮かべ、再びファントムソードを出現させた。



「あいつ、上手いな」


 ハクトがリゲルの動きを見て、そう評した。

 その言葉にケーゴが顔をしかめた。


「他のジョブの経験者やろな。初心者相手にえげつないわ」


「どうする、ティア……」



 シューティング・スターが避けられたとなると、残る技は一つだ。

 リゲルと距離がある内に、次の攻撃に移った。


「フェザー・スラッシュ」


 扇状に配置されたファントムソードが一斉に放たれた。


「くそっ」


 一本のファントムソードがリゲルを貫いた。

 残りのHPはこれで同程度となった。

 ティアはファントムソードを呼び出さずに、リゲルに接近した。


 細剣で戦いを挑む。ティアの判断は早かった。

 怯んでいたリゲルにティアの斬撃が繰り出される。


「うぐっ!」


 リゲルの腕を斬りつけたティアは細剣を引いて突きを放った。

 それをすんでのところで回避したリゲルは、反撃に転じた。

 両手に持つナイフでティアを何度も斬りつけた。


 距離を取ろうと後ろに飛んだ。その時、リゲルがにやりと笑った。

 ティアはそれが何か悟った。


「火遁の術」


 再びティアを炎が襲う。

 火柱に飲まれたティア。HPはほぼゼロになっていた。



「あかん。ティアちゃん、押されとるやないか」


「戦い方は相手の方が上だからな。ティアのファントムソードは脅威だが、それに反応できるとなると厄介だぞ」


 ケーゴとハクトが祈るような気持ちで見ていると、ティアが再びファントムソードを出現させた。


「ティアちゃん、どうする気や?」



 ティアは追い詰められていた。次、ほんの少しでもダメージを負えば倒れるだろう。

 だからこそ、相手は慎重に攻めてくるはずだ。

 それならば、意表を突く攻撃をするしかない。


 ティアはファントムソードを扇状に並べた。

 リゲルが先ほどくらった技。フェザー・スラッシュの配置だ。

 だが、二度目はないとリゲルも身構える。


 直線状に来ることが分かっているなら、飛んで避ければいいだけだ。


「フェザー・スラッシュ!」


 一斉に放ったファントムソードに反応したリゲルは飛んだ。

 直線に飛ぶと思ったファントムソードが、真っ直ぐではなく、バラバラに飛んだ。

 思わむ攻撃に防御の構えを取ったリゲルが着地した。


 その瞬間を狙っていたティアは、飛ばさず残していた一本のファントムソードの狙いを定めた。


「シューティング・スター」


 着地際の硬直を狙ったティアのファントムソードが、リゲルの胸を貫いた。


「ごはっ!」


 リゲルのHPがゼロになると、その場に倒れた。


「勝者! ティア!」


 会場が沸いた瞬間であった。


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