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 洞窟の内部を進むと次々とモンスターが現れてきた。


 それらに対して、ケーゴが先に仕掛けて、ハクトとティアが仕留めるという流れを取っていた。

 かすり傷程度のダメージしか追わないケーゴだが、しっかりとサリィから回復を受けているので戦線が崩れることはなかった。


 モンスターを倒して、小休止ができそうな場所があったので、一行は休みを取ることにした。


「どうや? ティアちゃん、なんとなく分かって来たか?」


 ケーゴが水を飲みながら聞いてきた。


「はい。ケーゴさんが先に攻撃することで敵視ヘイトを集めて、アタッカーが横から叩く、ですね」


「せや。タンクがヘイトを稼げていないうちは、あまり戦わんほうがええ。ヘイトがバラつくとヒーラーが大変になるからな」


「そういえば、私とハクトさんはほとんどダメージを受けてないですね?」


「それでええんや。アタッカーの攻撃も強いやつはヘイトを稼ぎやすい。でも、タンクがヘイトを稼いでいれば、敵に囲まれることはないで」


 タンクがヘイトを稼いでいない間は大技を使うのは危険ということか。

 ケーゴはタウンティング・ナックルでヘイトをしっかりと稼いでいる。お陰で私達に敵の攻撃が向くことは、ほとんどなかった。


「ティアちゃん、ヒーラーもヘイトを稼ぎがちだから気を付けないとダメよ」


「サリィさんもヘイトが集まるんですか?」


「回復魔法は敵からしたら厄介だから、ヒーラーも狙われやすいの。ヒーラーにヘイトが向かないようにするのもタンクの仕事よ」


「わぁー。タンクってやることがいっぱいですね」


 ティアの素直な感想にケーゴが涙をぬぐうフリをする。


「ティアちゃん、優しいわぁ。せやな。ロール毎に大変さはあるんやけど、タンクは視野を広く持っとらんとあかんな」


「分かりました。勉強になります」


「ダンジョンはまだまだ続くで。後半戦も頑張ろうや」


「はい!」


 休憩を切り上げた一行は、洞窟の最深部へと向かった。



 洞窟の最深部に到達した。

 ティア達の前には、赤い鱗と口から炎をくゆらせている大きなトカゲがいた。


「これがここのボスや。気張っていこか」


「はい!」


 まずはケーゴが仕掛ける。タウンティング・ナックルでヘイトを集中させる。

 トカゲの目がケーゴにくぎ付けになっている。ここがチャンス。


「シューティングスター」


 ファントムソードが一筋の光となって襲い掛かる。

 トカゲにはそれが痛かったのだろう。叫び声を上げたあと、視線をティアに向けた。


「お前の相手はわいやぞ」


 ティアに向きかけたヘイトをケーゴが回収する。

 トカゲの視線がケーゴに戻れば、ティアはすかさず攻撃を加える。

 時折、ヘイト無視の攻撃がティアやハクトを襲うが、サリィがすかさず回復魔法を唱えるため、大事にはいたらない。


 緊張感が続く戦い。ただ、自分の役割をちゃんと全うしたら、皆がカバーしてくれる。

 安心感もある戦いだ。そして、その攻防の果てにトカゲを倒すことができた。

 初めてボスを倒した達成感に浸っていると、トカゲが消えた後に宝箱が出現した。


「ティアちゃん、開けてええで」


 宝箱を開けると、中から様々なアイテムが出てきた。


「ティアちゃん向けの装備もあるようやな。もうちょいレベルが上がったら、装備できるから、それまでは大事に取っとき」


「はい。ありがとうございます」


「さて、ワープを使って入り口に戻ろか」


 洞窟の奥に光の道ができていた。その中にケーゴが入ると、姿を消した。

 これで洞窟の入り口に戻るのだろう。ティアもその後を追って行った。



 リンデンに戻ったティア達は、近場のカフェに入って反省会をしていた。


「今回のダンジョンは一番簡単やから、今日、教えたことを忘れなければ、野良でも楽勝やと思うで」


「そうなんですね。なんかやれる気がしてきました」


「今回は組んだメンバーが上級者ばかりだったが、初心者と組むことになった時が要注意だな」


 ハクトが言うと、ティアは頷いた。


「今日みたいな動きができるか分からない。ってことですね」


「そうだ。初心者は攻撃をスキルを覚えて間もない。理解してなければ、戦線は簡単に崩壊してしまうんだ」


「私も気を付けないとですね」


「ああ。周りをよく見ることだ。できれば、フォローするくらいの気持ちを持てると尚いいがな」


「まあ、硬い話はこれくらいにして、飯食おうや。ここのもなかなかイケるで」


 ケーゴが話を切り上げると、メニュー表を開いて注文を始めた。

 野良パーティーでの戦い。頑張ってクリアしなければ。

 ティア達の一日はこうして終わった。



 春休みでアルバイトもない紗友里は、朝から『ユニティ』にログインをすることにした。


 紗友里はティアとなり、先日、解散したレストラン前に転送された。

 パーティーを募集するには冒険者ギルドに行けばいいとハクトから聞いている。

 道はなんとなく分かるので、注意しながら冒険者ギルドに向かう。


 冒険者ギルドにたどり着くと、早速、受付嬢のセーヌの所へと行った。


「セーヌさん、おはようございます」


「ティアさん、いらっしゃい。今日はどうしたのかしら?」


「ピルレの洞窟の攻略をしたいんですけど、パーティー募集している方いますか?」


「ピルレね。ちょっと待って。うん、パーティー募集を出している人がいるわね。現地で集合みたい。私から連絡を入れておくから、ティアさんはピルレの洞窟に向かってちょうだい」


「分かりました。行ってきます」


 冒険者ギルドを出ると、早速、ピルレの洞窟に向かおうとした。

 そう思った時、ティアは頭を抱えて、地面に崩れ落ちた。


「場所が分からない~」


 ケーゴ達に付いて行ったから、行けたようなものだ。

 マップを表示すれば行けるかもだが、たぶん、まっすぐ行けないと思う。

 どうしよう。人を待たせているのに。


「ん? もしかして、ティアちゃん?」


 声を掛けられたティアは顔を上げると、そこには以前助けてもらったミフユが立っていた。


「どうしてこんなところで、うずくまっているの?」


「ミフユさ~ん。助けてくださ~い」


 恥も外聞もなく、ミフユに助けを求めたティアであった。



 ミフユに連れられて、ティアはピルレの洞窟へと向かっていた。


「本当に助かりました。私、方向音痴で」


 てへへ、と笑ったティアを見て、ミフユも笑った。


「それは大変だったね。あ、ティアちゃん、私には敬語じゃなくて良いよ。名前も呼び捨てがいいな」


「え? そうですか。じゃあ、ミフユって呼ぶね」


「うん。私もティアって呼ばせてもらう。あ、フレンド登録も済ませちゃおう」


 ティアは新たなフレンドができたことを素直に喜んだ。


「これで三人目だぁ。ミフユ、ありがとう」


「こちらこそ。そろそろピルレの洞窟だよ」


 なんとなく見たような気がする洞窟が見えてきた。

 その洞窟の前で、三人の冒険者が立っていた。


「お待たせしました。パーティー申請した、ティアと言います」


 ティアは三人の前に行くと、ペコリとお辞儀をした。

 

「俺はザック。シールドガードだ」


「僕はホルン。ウィザードだよ」


「私はネーナ。プリースト。よろしくね」


 三人はそれぞれ挨拶をした。

 ザックは大小のシールドを持っており、見るからにタンクだ。

 ホルンは魔法を主体に戦う魔法使い。ネーナはヒーラーか。


 そこにティアが入ることで四人パーティーになる。

 このメンバーで攻略するんだ。ティアは意気込んだ。


「皆さん、よろしくお願いします」


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