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 サリィの目からビームでも出ているのではないだろうか。

 と思ってしまうほどの視線を受けたティアは目を背けて冷や汗を流していた。


「ねぇ、ケーゴくん、聞いてる?」


 視線をティアから外さずにサリィが低いトーンで言った。


「あ、ああ、ティアちゃんはな――」


「へぇー、ティアちゃんっていうの。で?」


「で、って……。わいらのフレンドなんやけど」


「どういうフレンドなのかなぁ?」


 怖い。まともに視線を向けることができない。

 横目でハクトを見ると、同じように視線を泳がせていた。


「ねぇ? ケーゴくん。 この子、初心者だよねぇ? そんな子と、どういう関係なのかなぁ?」


「そ、それはやなぁ」


「そ、れ、は?」


「ティ、ティアちゃんはハクトの相方なんや」


 相方。ティアの頭の中に疑問符が浮かんだ。

 相方って、漫才とかで言うやつかな。それって。

 

「……ハクトくん、そうなの?」


 怖い笑顔のまま問いかけられたハクトは、ごくりと唾を飲んだ。

 視線をケーゴに向けると、しっかりと頷いた。二人の中で何かが繋がった瞬間だった。


「あ、ああ、そ、そうなんだ。俺の、まあ、なんだ」


 口ごもるハクトにサリィがツカツカと近づいた。

 ぶたれるのでは。そう思ったとき、サリィが甲高い声を上げた。


「良かった~」


「へ?」


 ティアが呆気に取られていると、にっこりとほほ笑んだサリィが言う。


「ハクトくんの相方さんなら大歓迎。だって、ハクトくん、ずっとケーゴくんと一緒じゃない? 色々心配してたのよね。女っ気がないというか、優しいだけの男だったというか。でも、そんなハクトくんにも春が来たってことね。ということは、私にも……」


 一拍空けると、サリィがキラキラな目をケーゴに向けた。


「ケーゴくん。そろそろ、私と正式にペアにならない? ハクトが一人だと可哀そうだからって、ずっと言ってたじゃない。でも、相方ができたってことは、そういうことよね? これからケーゴくんも気兼ねなく、私と一緒に入れるってことよね?」


「サ、サリィちゃん、その話はここまでにしとこか。まだ、ティアちゃん初心者やし、どうなるか分からんやろ? それをわいは見守りたいんや。だから、その話はまた今度な」


「え~? でも、ケーゴくんの言う通りかも。やめちゃったら終わりだもんね。分かった。私も協力する!」


「ありがとな、サリィちゃん。いやぁ、サリィちゃんは聞き分けのええ子で嬉しいわぁ」


 ティアとハクトを完全に置いてけぼりにしたまま、話が進んでいく。

 展開についていけないティアの頭の中では、ずっと相方の単語が回っていた。

 相方。相方って、つまりは。


「ハ、ハクトさん」


「どうかしたか?」


「相方っていうのは?」


「今は何も言うな。ケーゴに従おう。でなければ、俺達は――」


 ハクトが真に迫る表情を見せた。


「大聖堂送りだ」


 大聖堂ですと。確かにサリィに下手なことを言ったら、ぶたれるだけでは済まない気がする。

 たぶん、おそらく、きっと、私とハクトだけじゃなく、ケーゴも大聖堂に送られることになるだろう。

 そんな事態になってはいけない。気になることは山ほどあるが、今はハクトとケーゴに従おう。


「ケーゴくん、やっぱり優しいよねぇ。そういうところ良いと思うよ」


「ははは、サリィちゃんには負けるで。よし、ピルレの洞窟に行こか~」


 そういうと足早に歩き出したケーゴ。その横にサリィがピタリと付いた。

 その様子を呆けて見ていると、ハクトが肩をポンと叩いた。


「言っては何だけどな。あれでも、軽い方だ」


「軽い方って?」


「ケーゴはな、とにかくモテる。あいつの素行が悪いわけじゃないが、女性が本気で惚れてしまうことが多いんだ」


「じゃあ、サリィさんで軽い方って……」


「もっとヘビーな人達を俺は知っている……」


 地獄を見てきたような面構えのハクトを見て、ティアは心の中の声が口から漏れ出す。


「ケーゴさん、大変そう……」



 森の中を歩いていると、道の先にぽっかりと穴が開いた洞窟が見えてきた。


「着いたで。ここがピルレの洞窟や」


「おおー! 本当に洞窟ですね。早速、入りましょう」


「せやな。ティアちゃん、歩きながらダンジョンの戦闘について教えたるわ」


 洞窟の中に入ると、光を放っている苔が多いお陰で暗いという印象はなかった。


「先頭は基本タンクの役目や。体力も防御力も高めやからな。多少痛い一撃もろても立て直しが容易なんや」


「なるほど。じゃあ、アタッカーはどうしたらいいですか?」


「それはやな」


 ケーゴは言い終わると同時に拳を構えた。


「来るで」


 洞窟の奥から姿を見せたのは、人間の骸骨の形をしたモンスターだった。

 思わず身震いしてしまったティアは一瞬で遅れてしまう。


「ティアちゃん、見といてな。まずは、こうや! タウンティング・ナックル」


 素早いジャブを二発叩き込んだ。

 別の方角からもモンスターが迫ってきていた。


「お前もや! タウンティング・ナックル!」


 重い一撃ではないが、ケーゴの拳をくらったモンスターは、一斉にケーゴに襲い掛かる。


「倒さんように手加減すんのも面倒やな」


 ケーゴは素早い身のこなしでモンスターの攻撃を避けつづける。


「タンクが敵を引き付けたら、アタッカーの出番やで。ハクト!」


 その声に電撃のような速さで反応したハクトは、大型のリボルバー拳銃を抜き放つと同時に引き金を絞った。

 モンスターの頭部を的確に打ち抜く。


「ティア!」


「は、はい! ファントムソード!」


 具現化したファントムソードを一列に並べる。


「シューティングスター!」


 ティアの放った強烈な一撃がモンスターをズタボロに切り裂いた。

 よし、倒した。


「ええで、ティアちゃん。今の感じや。タンクが引き付けて、アタッカーが叩くんや。これがセオリーって思ってええ」


「ありがとうございます」


「よっしゃ、さくっと行くとしようか」


 洞窟の奥へと向かって進んだ。


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