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 路地裏の戦いを終えたティアは、ジョブマスターのロータスと言葉を交わして、その場を後にした。

 そうして歩ていると、ケーゴから連絡が入ってきた。内容はティアがシャウトしたことに関するもので、心配して連絡したとのことだった。

 自分の無事を伝えて、詳しい話は、またあのレストランで。と話を切り上げた。


 ティアがレストランに着いた時には、ハクトとケーゴも帰ってきており、無事デビルを討伐できたそうだ。

 次にティアは自分に起こったできごとを伝えると、二人とも驚き、呆れた表情を見せた。


「なんて無茶なことを。本当に無事でよかった」


「ハクトの言う通りやな。ティアちゃん、ええ子なことは大事やけど、無茶はあかんで」


 二人の言うとおりである。もし、自分が二人の立場なら、そういうだろう。

 返す言葉もないとはこのことだ。


「まあ、終わったことを言っても仕方がない。次からは気を付ければ良い」


「はい。気を付けます。あの、気になることがあるんですけど、いいですか?」


「どうした?」


「強制ログアウトされると、どうなるんですか? 」


 ハクトは腕を組むと思い出すように視線を上に向けた。


「話で聞いただけだが、何もない闇の中をさまよう感じらしい。それも結構な時間な」


「それは怖いですね。悪いことしたら、強制的にログアウトさせられるんですよね?」


「ああ。利用規約に反する行為が見つかればな。その権限を持っているのはジョブマスターなどの一部に限られている」


 ということは、アレルトも持っているということだ。

 あの男はNPCへの暴力的な行為が二回目だったから、容赦のないものだったのかもしれない。


「普通にゲームを楽しんでいる分には、まずされることはないから安心してええで」


「そうなんですね。NPCへ手を出すのはダメってことは分かりましたが、冒険者同士はどうなんですか?」


 気になったのはミフユのことだ。ティアを助けるために、冒険者のあの男を攻撃したのだ。

 罰則があったら申し訳ないことをしてしまったことになる。


「冒険者同士は、そこらへん緩いなぁ。プレイヤー同士を競わせる、っちゅう考えがあるのかもしれへんな」


 ケーゴの話を聞いてティアは胸を撫でおろした。

 とりあえず、ミフユには迷惑をかけずに済んだようだ。


「あ。かといって、誰彼構わず喧嘩を吹っ掛けるのはあかんで? 要注意人物になったら、ギルドとかにも所属できへんことになるかもやしな」


「ギルドって、冒険者ギルドですか?」


「いや、冒険者同士で作るチームもギルドって呼ぶんや」


「じゃあ、ハクトさんとケーゴさんは同じギルドに入ってるんですか?」


 ティアの問いに、ハクトが「ああ」と答えた。


「うちは少数の人員しかいないが、大手のギルドになると最大人員の百人を抱えているところもあるくらいだ。ただ、ティアはまだレベルが低いから解放条件を満たしていない」


「そうですか。まだ、入れないんですね」


「まあ、地道にやっていれば、そのうち入れるようになる」


「分かりました。まずは戦い方を勉強しなくちゃ。じゃないと、リンデンの外にも行けないですからね」


 現在のクエストはジョブを変更して、訓練を受けるというものだ。

 これが終われば、また違うクエストが発生するため、訓練をして戦い方を学ぶ必要があった。


「戦い方と言っても、そこまでの技量は要求されないと思うぞ? まあ、アレルトさんだからなぁ……」


「そうなんですよねぇ。あ、でも、私、ファントムソード出せたんですよ。十本も」


 ハクトとケーゴがコーヒーを飲もうとカップを持ち上げた手を止めた。


「何本やて?」


「え? 十本です」


「そうか……。いやぁ、ティアちゃん、才能あるなぁ。わいらもうかうかしてられんで。なぁ、ハクト」


「あ、ああ。すごい才能だと思う」


 二人ともどこかぎこちない返しであった。反応に困ったのだろうか。


「せや。ティアちゃんの自主練に付きおうたるから、また修練場へ行こか」


「え~。今日はもう――」


「あかん。早めに武器を使えるようになって、外に行こうや。ティアちゃんとは、ダンジョンとかも回りたいしな」


「分かりました。頑張ります」


 渋々了承したティアは、紅茶を飲み干して席を立った。



 自主練を終えたティアがログアウトした後、ハクトとケーゴは自分たちのギルドハウスにいた。


 バーのような趣の部屋で、お酒が壁に所狭しと並べられている。

 カウンター席にハクトとケーゴが並んで座っていた。グラスに酒を注ぎ、チビチビと口に運んでいた。

 二人の間に会話はなく、ただ酒を楽しんでいるように見えるが表情はどちらも暗い。


「七星持ちで、ファントムフェンサー。それに才能まであると来たか。これはなんの巡り合わせやろな……」


「ああ。まったくだな」


 そういうとまた会話が途絶えてしまった。

 ケーゴが席を立つと、ジュークボックスにコインを入れて音楽を流し始めた。

 ハクトは黙って酒をあおり、グラスをカウンターに置いた。


「同じ結果にはしない。絶対にな」


「せやな。ゲームは楽しんでなんぼやからな」


「そうだ。彼女には心から楽しんでほしいと思っている」


「ああ、わいもそう思うで。色々連れまわそうや。わいらも楽しいしな」


「嫌われないように気を付けないとな」


「お前には言われとうないわ」


 二人は見合って笑い声をあげた。


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