第49話 戦略
「いまどんな感じ?」
「昨年よりかは悪くない、がまだ勝てるかどうかといえば……」
淳史の声に、悠は首を振った。
SNSでの集計グラフを見つめているところだった。1か月以内に、指定したユニットグループに1人1票のみ投票できる。 毎年、蒼汰たちのユニットは負けており、今年も現状では微妙なところだった。
「ここからどうしていけば……」
「知名度を上げる、ファンを増やす――どちらも似たような意味だと思うけど――あとは」
楓のひとりごとのようなつぶやきに返答した蒼汰は、腕を組んでイスを蹴りぐるぐると2週ほど回った。
「一番手っ取り早いのはアルハザートのファンから票を奪うことかな。あちらが1票減って、こっちに入れば――?」
「2票得する」
「その通り」
楓の返答に蒼汰はいつも通り、ぱちんと指を鳴らした。
「問題はどうするか、だね。物事はそう単純じゃないから」
「投票ってどうやってるの?」
「ユニット総選挙は、SNSでの投票だ。ただし、不正が行われないように原則は1人につき1投票しかできないシステムになっている。メールやアカウントでなく、スマホとカードで認証するからね」
「スマホを複数持っている、なんてことがあるかも」
「いるだろうけど、複数持ちなんてごく少数だよ。そもそもクレカのダブルチェックが入る。違反者はノーカウント。つまりリスクが高すぎて大事な票がマイナスになる。それなら、誰もやらないよ。万が一あったとしても、全体量からみれば大した量じゃない」
「なるほど」
***
それぞれの経過は順調だった。
「投稿しはじめてから、すごく順調に伸びてる。フォロワー数も再生数も」
「ほんと!?」
「追い風はこっちに吹いてる。アルハザートはすでにSNSで認知されているけど、経営陣が管理してた昨年は僕らはあんまりSNSでの投稿をやっていなかったからね。つまり新規ってことは今後の伸びしろがあるということだし」
「いいね」
「ただ、相手のフォロワー数も尋常じゃないから……油断できない」
残り日数が数日となり、画面をのぞく。
先日はどちらも甲乙つけがたいほどの検討だったが――
「楓、マズいことになった」
「どうしたの?」
「危惧したのか、由良が動画を新しくアップしはじめたみたいだ。新曲だとか工法を頑張っている……こちらの急な動きに危惧したんだと思う」
「ど、どうなの? それ」
「ダメかも、僅差で負けそう」
楓は由良の意地悪な表情を思い返す。
スマホの通知が鳴ったので見ると、まさにその由良からだった。
『新婚生活、楽しみにしてるよ、お嬢様』
とそう表示され、楓はその場で悲鳴を上げぬまま固まった。




