第48話 発覚
廊下で楓は自分の手のひらをじっと見ていた。
触れられたところがずっと熱い。まだ感触が残っているかのように。
カタリ、と背後から音がして振り向いたら、霧崎がスーツケースを片手に戻ってきたところだった。
「おかえりなさい、霧崎さん」
「ああ……ただいま、どうした? こんな時間にここで。顔が赤いようだが」
「えっ、あ……」
そういわれ、余計に顔が熱くなる感覚に襲われた。
「なにかあったのか?」
「特に、何も……蒼汰と話をしていただけ……です」
「だけ? 本当か?」
「本当です……でも」
廊下で楓は自分の手のひらをじっと見ていた。
触れられたところがずっと熱い。まだ感触が残っているかのように。
らしくないいつもの様子に、手のひらの上で転がし遊ばれた感覚すらある。
「でも? ……とりあえず防音室へ。新作の譜面があるからついでにその話も含めて話をするか」
霧崎は譜面を取り出し、譜面台に並べた。
「それで……どうして、ずっとそんな顔をしてるんだ」
「どんな顔をしているのか……わからないですけれど」
「寝られません……」
「蒼汰が気になる?」
「……」
こくりと小さくうなずいた。
「……わたし、いつも助けられてばかりで。みなさんに」
「助けられているものもいるのでは? 特に俺と雪代がな。あいつはいつも……のらりくらりと逃げていたから、いい機会だと思う」
「由良さんに、勝てるでしょうか」
「さあな。でも、勝たなきゃいけない。では狂気が正気の優しい俺は付き合ってやろう、徹夜でな」
「……霧崎さん」
「なんだ?」
「ありがとうございます」
「ああ、借りを返しただけだ」
そうして、霧崎は楓の肩をポン、と叩いた。




