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第44話 ライバルは婚約者候補


 全員が揃ったリビングで、朝からミーティングが始まった。

 マネージャーだけは不在だが、これだけメンバーがしっかりと揃ったのは随分と久々だろう。


 早速、会議の議題に入ろうとした悠に対し、楓は声を上げた。

 

 「アルハザートって、そんなに人気なんですか? ライバルだとかいってましたけど……?」

 

 「そう、っていってもライバルうんぬんは俺らが勝手にそういってるだけ。実際は比にならないほどの人気があるって感じかな」


 楓の質問に答えたのは悠だ。

 続いて、横にいた蒼汰が話を続ける。


 「設立当時から会社同士の確執があって、万年勝てるユニットが育てられずに苦戦していたらしい。それで、マネージャーがどうにか勝てるように対抗できるキャスト――悠やら淳史やら霧崎さんやらを集めたんだってさ。でも、まだ足りないからと思って今回のホテルでの募集。君の霧崎さんの救出コンサートが感動的だって、SNSで話題になってね……いよいよ勝てるかも、って上層部が色めき出したってことだよ」


 バン、とキーボードを叩き、リビングのプロジェクターに表示されたのは比較表だった。絶大なる人気の証と圧倒的な差がそこに表示され、颯汰は続ける。


「前も伝えたんだけど、会社だけでなく僕自身も彼らに勝たなくちゃいけなくなったんだ。さて、そのためには……」


 「……具体的になにを?」


 楓の視線に気づき、蒼汰はいつも通り指をパチンとはじく。


「第23回 全国総合GIUB決定戦で1位」


「ぎーあいゆーびー……?」

「げいのうじん、アイドル、ユニット、バンド総合決定戦の略。音楽まるっと総合で、優れた活動グループに捧げられる賞みたいなものだね」


「へえ……」


「由良は昨年1位、俺らも2位だけど差は大きく開いてた。あいつ、圧勝だったからさあ……」


 遠い目をして悲しそうに淳史は肩を落とす。

悠は淳史の肩にポン、と手をのせて慰めているようだ。


蒼汰は楓を見て、口を開いた。


「とはいえさ……霧崎さんへのフォローがあって、楓も人気になりつつある。追い風として、SNSで話題にしていけば勝ち目はあるかな。各々の役目を果たしつつ、名曲を出せばさらに効果がアップ」


 そのままコンコンとモニターを叩き、出された詳細のメモを見せた。


 「淳史は踊りや舞台効果を考えて、霧崎さんは名曲作成をメイン、僕は編集で、悠は全体的なフォロー。案は後から出すからいったん、解散でいいよ」


 ミーティングが終わったリビングで、蒼汰と霧崎に引き留められた。

 三人掛けのソファーでその二人に左右に座られては、逃げるに逃げられないという点もあったが。

 

 「……それで、私は?」


 「結論からいうと広報を担当してもらう。SNSでの拡散を一緒にやってもらおうと思ってる。でもその前に、最大の課題をクリアにする必要があってさ」

 

 蒼汰の話に楓はコクンと頷いた。


「大事な問題がな」霧崎も相槌を打つ。

 

 「君の最優先としては、第二候補者の由良の問題だ。まずは”西園寺楓”として由良に会って、婚約解消を打診してきてくれないか? 万が一知らぬところで由良側から動かれて婚約話が進まれると、僕たちが困っちゃうんだよね」


 「……なるほど?」


 「うん……なるほど?と疑問に思うことかな? ちなみに、かえって由良に興味をもたれたら大変だし――あんまり可愛らしい格好でいかないように」


 釘をさされ、楓はさらに「うん?」と小さく声を上げた。

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