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第15話 秘密の作戦会議

3日目の朝は晴れ渡る快晴だった。


 楓は睡眠もそこそこにリビングへと向かう。すると居合わせた蒼汰に部屋に呼び出された。


 「さて、それで君が誘拐された件だけど」

 「あ……」


 かなり気になってはいたが、とにかく気にしても、なるようにしかならない、とばかりにテレビはまったく見ていない。


 練習にかられ、そんな時間もなかったが。


 自分はスマホの電源は入れず、ここから一歩から出てない。つまり、居場所はバレにくいだろう。が、恐らく探されているのだろうな、とは思っていた。


「予想通り、恐ろしいくらいに探されてるね? 民間ヘリも、民間警備の動員数もすさまじい」


 「やっぱそうなんだ……」


「最初は身代金目当てか、っていわれてたけど、数日経過してもその連絡がないから……今度は、犯罪に巻き込まれたのか、はたまた君目当てか、って今度はニュースになってる」


 本当はそのどちらでもないのだが、情報が限られる中ではやはりそうなるのだろう。


 「家出の線もあったけど、数日にわたって女の子が一人どうやって隠れられるのか……となると現実的じゃない。そりゃあ通常の逃亡では無理だと思うよね。それに、メインで探してるのは警察ってより、私的な探偵とか警備員だとかそういう人たちがね。もちろん君の家も探してるだろうけど。だけど、テレビでも当日よりかは放送は落ち着いてきてる。――まあ、そこはともかくとして」


 蒼汰はせめてもの温情として、目が飛び出るほどの懸賞金がかかっていることは秘密にした。知らせたことで動揺するだろうし、あまりここで攻め立てたところで、泣かれるだけだ。


「君のお父さんたちを説得する方法だとか、言葉は思い浮かんだ?」 


蒼汰は楓の目の前で人差し指をピン、とひとつ立てた。


「うん、それなんだけどね。これならどうかな、って思いついたんだ。うまくいけば、父のことを説得できるかも」


 そうして楓は、自分なりに考えた説得方法を伝える。

 アイデアに蒼汰は頷き――


 「――まさか、君の口からそんな大胆な交渉が思い浮かぶとはね。でも、いいんじゃない? 面白いし、それでいこう」


 「いけるかな?」

 「正直いって不安はだいぶあるけど、そんときはそん時。というか、ダメだったら帰るんだよね?」

 「……まあ」


 これは蒼汰との最初の約束だ、反故(ほご)はできない。

 帰る、のキーワードに胸がざわつく。


 昨日の音合わせやみんなとのやり取りは、とても楽しかった。

 少し手厳しいけれど、その程度だ。できれば、ここに残りたい気持ちがある。

 戻ればすぐに婚約、いや結婚まで一直線だ。曇る表情に、蒼汰は頭に手を乗せた。

 

 「わかってるよ。まだ、戻りたくないんだよね」

 「……うん」

 

蒼汰の瞳は憂いを帯びている。

いいたいことがあるが、それを伝えられないといった表情だ。


「……僕的には好条件だと思うんだけどね。そんなに婚約が嫌なのかな」

「なにが?」

「なんでも。このまま留まれるように、なるべくうまくいくように――僕の方でも調べてたから」

 「調べてた?」


 「そ、僕なりに西園寺家側に伝手があって、ちょっとね。あとは他も色々と。ほんと、忙しいのに誰のせいでこんなに裏でこんなに働いてやってると思ってるんだよ? ちょっとは僕に感謝しなよ」


 「う、うん……、感謝はしてるよ? ありがとう、……ごめんね、なのかな?」

 「貸しにしとくから、いつか返して」

 「返す、って何で?」

 「あればその時にいうよ」

 

 そういうと、蒼汰は楓の頭をわしゃわしゃと撫でる。

 

 「さて、と。とりあえず、当日までしっかりとピアノも練習して、あと、ちゃんと今後も男の子っぽく演じてくれよ? まだ女の子っぽさが抜けてないし……もう少し短い方がいいのかなあ。でもなあ……」

 

 蒼汰は楓の髪の毛に指を絡める。そこにあまり深い意味はないのかもしれないが、楓は気恥ずかしくなり思わず目を伏せた。


「え、そう……かな!? でもバレてないわけだし……」

「……その甘さが油断を呼ぶんだよ。気を抜かないようにね」

「気を付ける」


 ふ、と唇の端をわずかにあげると、蒼汰は楽しそうに指をパチン、と鳴らした。

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