表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/52

第13話 練習開始

 朝日を確認して、安堵した楓はいつのまにか、落ちるように眠っていた。

時計を確認すると、午前11時、なんと驚くことに昼前である。


 マネージャーから配布されたスマホをチェックすると、「リビングの資料を確認して、あとは練習でも自由に過ごして」とのことだった。


 慌ててリビングへ行くと、そこには誰もいなかった。楓の分だろうか、資料が1つだけ残されている。

 

 すると物音を聞きつけ、部屋のドアがひとつ開けられた。

蒼汰が今頃起きたの?という呆れた表情をしつつ、楓を見てきた。


「あの、昨日夜遅くまでちょっと色々と……」


弁論しようとしたが、 蒼汰は無言のまま部屋のドアを閉めようとした。

寸前で、楓は滑り込むように蒼汰の部屋のドアに足をかけた。


 「待って!」

 「何」

 「ごめんね、蒼汰。その、頼ってばかりで申し訳ないけど、ひとつだけお願いがあるんだ」


 その言葉を聞いて、蒼汰は面倒そうな表情を浮かべた。

 

 「嫌だ。僕はもう十分すぎるほど君に協力してるでしょ、この足をどけてよ。閉めたいんだけど」

 「本当に、何度もごめん。でもお願い、聞いて」

 蒼汰は、なおも引かない楓に対し、大きくため息をつくと――やがて観念したように扉を開け、腕を組んだ。


 そこでようやく、楓の目が腫れていることに気が付いて、「どうしたの?」と囁くように問いかけられた。楓はその問いには答えたくないとばかりに小さく首を振った。蒼汰は楓の腫れたまぶたを少し撫で、ほんの少しだけ悲しそうな顔を浮かべ口を開いた。


 「……それで何を頼みたいの。要件だけ先にいってくれれば、とりあえず検討する」

 「キーボードかピアノで曲の練習をしたいの、だから、楽譜をもらえないかな……?」

 「それならマネージャーが置いたリビングの資料の中にある。あとは?」

 「CDか曲の音源を聞きたいんだけど」

 「わかった、用意する。他はもうないね?」

 「……うん、用意してくれるの?」

 「そこは別にいいよ。君が練習するにしても、曲を聴かないとイメージわかないよね。だから」

 

 そういうと、蒼汰はいったんドアから離れて一枚のCDを取り出した。


 「これをあげる。あとはもうない? 集中したいから、今のうちに欲しいものがあったら教えて」

 「他は特にないよ。今度なにかで、お礼する……ありがとう」


心から感謝し、ぎこちない笑顔でそういうと、蒼汰はぐっと息を呑み込んだ。

 

 「……別に、いいよ。本当に、気にしないで」

 

楓から視線を外し、静かに扉を閉めた。

 

――ほんのりと顔が赤く色づいていたような。あまりよくみえなかったが、照れているのだろうか。そんなことを考えながら、楓はCDを見て顔がほころぶ。

 

 扉は閉められ、リビングに静寂が戻ってきた。

 楓はピアノがある防音室へと足を運び、覗き見る。

 幸いにも、誰も練習していないようで防音室はもぬけの空だった。

 

 鍵盤に指を置き、気合を入れ、そして息を整える。


(よし、がんばろう!)


 意を決し、音源を聞きながら譜面を読む。

 

 叩く、弾く、奏でる、そして聞く――その日はありがたいことに誰も防音室に来なかった。食を忘れるほどひたすらに集中し、ひたすら練習を開始した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ